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    oriron_kon

    主に妄想の呟きを文章化。リンバスは5×7と2×7が気になる。

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    oriron_kon

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    ラビッツ人格の影響を受けてるムルがヒスに構うだけの話。
    6章の内容に軽く触れてるので一応、注意。

    #ムルヒス

    ムルヒス『名残り』「なぁ、ムルソー」
     業務時間中は必ず座って待機するよう指定されて以降、完全に自分用となった席で新聞を読みふけるムルソーの後ろからヒースクリフが身を乗り出してきた。

     次の目的までの道のりをヴェルギリウスとファウストが確認している間だけはバス内を自由に出歩いていいとの指示を受けており、二人も最初は大人しく席に着いていた。
     再出発の声が掛かるにはかなりの時間を要するだろうと察したムルソーが今朝に読んだ新聞を部屋から持ってきては読み直していると、今度こそ暇を持て余したヒースクリフから声がかかって今に至る。
     そのまま左肩に顎を乗せてきそうなぐらい近い距離で前のめりになる彼の横顔をムルソーは目だけで捉えると、ガントレットを外した手で頭を撫で始めた。
     第三者の目線だと、ムルソーの左側に顔を出してきたヒースクリフを右手で撫でてるといった不思議な光景になっているが、当の本人はまるで何回かやったことがありげにスムーズに動いている。
     新聞を読むために外しておいた大きな手が癖のある茶髪に絡みついては、するりと解ける。
     その間もムルソーは、何か聞きたいことでもあるのかと読み取れそうな目でチラ見しては新聞へ向き直す。
    「や、あの……」
     まさか撫でられるとは思わなかったヒースクリフは面食らった表情で固まる。
     新聞に書かれている内容を代わりに読み上げてもらおうと声をかけただけなのに、そのような対応を取られるとは思わなかったからだ。
     そして、撫でてくる手つきに強い既視感を覚えたのがますます驚きの感情を強めた。
     この撫で方を俺は知っている。
     T巣を出て行く直前まで身を置かせてもらっていた組織…デッドラビッツをまとめていたボスが返事の代わりに撫でてくる時とそっくりだ。手のひらを額に置きながら左右に揺するような雑っぽい撫で方。
     ヒースクリフがそう感じるのも無理もない。
     実は、拠り所を失った彼を引き取ったボスがムルソーだった鏡世界が存在している。
     それを鏡技術を用いて”人格”に抽出したのを戦闘の度に管理人が被らせていたため、あっちでの性格や癖を引きずっているのだろう。
     ここまで来る途中、物陰に潜んでいたチンピラたちからの襲撃を何度か受けてきたのも理由の一つだ。
     ヒースクリフにとって尊敬する兄貴分があの人だとしても、ムルソーにとってヒースクリフは可愛がりがいのある子供に違いはない。
     再び手を組む時が来るとは思わなかったと今でも感心するぐらい、ボスとしてのムルソーは可愛がってたらしい。
     だから横顔が見えたとからふと手が伸びた以外に理由はなかった。
     
     せっかく整えていた前髪が崩れそうなぐらい雑に撫で続けつつ、新聞から目を離さないムルソーにヒースクリフは突っぱねることも忘れて呆然とする。
    「聞きたいことがあるから私を呼んだのだろう」
    「あ、あーー…そうだ、兄貴…じゃねぇ、ムルソー…いや!いつまで撫でてんだっ!」
     あまりにも撫で方がそっくりなせいで、心から兄貴だと認めかけたのを振り払うように叫ぶと、大きく見開かれた深緑色の瞳がこちらを見つめてきた。
    「撫で…今、撫でていたのか」
    「そうだよ、ここをな、ぐしゃぐしゃにな」
     乱れた前髪を指差し、ヒースクリフはため息を吐く。
     無意識だったとはいえ、自分の手が相手の顔近くにある時点で本当に撫でていたのは揺るぎない事実なのにムルソーは驚いたように数回、瞬きをする。
     何故かは分からないが、見慣れた顔がこちらへ近づいてきたら撫でるのがお約束だと自然と頭に浮かんだのでそれに従っただけで、特に疑問はなかったはずだ。
     改めて考えると不思議な行動をとったもんだと驚きの同時に、意外にしっくりと来ていることにも驚いている。
    「…気を悪くさせたのなら謝る」
    「それは大丈夫だけどぉ…」
     実際、気分を損ねてないどころが逆に懐かしさを覚えるレベルに嬉しかったのを認めたくなくて口を尖らせる。もしも尻尾が生えていたらブンブン振っていたのだろうか。
     二人の間に気まずい空気が流れる。
     ムルソーが真っ直ぐと見つめてきているのに対し、ヒースクリフは目をそらすように斜め下を向いている。
    「ところで、改めて聞いてもいいか。私に用があったから声をかけたのだろう」
    「えっ!あ、あぁー…用ねぇ…」
    「……何て聞こうか、忘れちまった」
     突然撫でられたことの衝撃があまりにも大きすぎたせいで、何の用で名前を呼んだかさえ思い出せない。
     恥ずかしそうに首をすぼめる彼にムルソーはため息を吐くことなく、このやりとりも日常の一部であるかのように相手の頭に手を置いた。
    「そうか、思い出したらまた呼べ」
     手のひらを額に置いては弾むようにポンポンと撫でてから新聞を読み直す姿に何も言えなくなったヒースクリフは、「…うん」と素直に返事することしか出来なかった。

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