その意味を知っている「我愛你」
「知ってる」
「香主は彼奴に甘すぎます」
「は?」
「虎仁幇の次期当主をしてあんなことを言わせておいて『知ってる』で済ませるなど……本来なら相応の答えを返すべきでしょう」
「……聞いていたのか」
「聞こえてきたのです。香主、あんな不誠実な男のどこが良いのですか? ただでさえ面倒を持ってきて迷惑を被っているのに、これ以上許容してはいつか本当に取り返しのつかないことになるかもしれません。将来虎仁幇を背負う者として、相応の相手を見つけなければ、いつか痛い目を見ますよ」
「…………」
「どうしても同性が良いというのであれば…例えば、浩然はどうでしょう? "表"の仕事の人間ではありますが、度胸もあるし腕もある。本人も"こちら側"の仕事を希望しています。『夜』のことも心得があるし、何より香主に心酔している。うってつけでしょう?」
「…別に我は同性にこだわっているわけじゃないし、それは浩然に対して不誠実だ。あと、アイツの答えを額面通り受け取るな」
「どう言う意味です?」
「確かに答え方は巫山戯ているがな……『知ってる』と言うことは『自分が誰に愛されているかを理解している』ということだ。それがどれだけの意味を持つと思う?」
「…! ………彼奴がそこまで考えているとは思えません」
「まぁ無意識かもしれんが。だが、それなら尚のこと良いと思わないか?」
「…………………」
「お前も、いつか分かる」
「……一回り歳下の貴方に諭されるとは、私もヤキが回りましたかね」
「忠告は有難いと思っている。諫言は組織にとって何よりの宝だ。…アイツを手放したくないと思うのは我の我儘だ。冷静な視点を忘れないためにも、お前にはこれからも側に居てほしい」
「その諫言を今し方突っぱねられたところですがね。まぁ良いでしょう。彼奴が我々を裏切るような素振りを見せたら、容赦はしません。私は貴方や阿近と違い、個人的な情けなど持ち合わせておりませんので」
「あぁ…頼む」
「さてさて……これでは面倒なヤツを相手にしているのは一体どちらなのか、分からなくなりましたね。くれぐれも逃げられないよう頑張ってください」
「分かっている」
「いや、それにしたって香主は甘すぎると思いますがね。もっとガツンと、同じ熱量の言葉を求めても良いのでは? 甘いと言うよりヘタレですか」
「それは諫言と言うより悪口だな!?」
***
劉仁と霊霊の関係に頭を悩ませている吽凱と、それをなんとなく感じていながらも負ける気はない劉仁
そして吽凱のことも劉仁のことも気付いていながらのらくらしている霊霊
みんなめんどくせぇ!!!!
2023.10.16