迷い子が辿り着く場所 目を開けて、最初に見えたのは死体だった。
それが誰かは、少年にはわからなかった。
少年には、転がる死体どころか自分が誰かすらわからなかった。
不鮮明な意識の中、少年は酷い目眩を堪えながら周囲を見渡す。
そこで、死体が握っていた物に気付いた。
吸い寄せられるように、少年は死体が握っている物を取り上げる。
それは、知らぬ誰かを記した物だった。
16歳くらいの、睨むように此方を見ている少年。
その写真の隣の欄に、名前があった。
少年は、その名前を呼んだ。
「……“ナカハラ、チュウヤ”」
* * *
瓦礫の中から中也を引っ張り出し、太宰は溜息を吐いた。
いくらなんでもやり過ぎだ、この莫迦。
腹いせに頭を殴る。
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