花筺「巫山戯ンなよ……!」
シンクに広がる、血に塗れた花を睨みつけ中也は零した。
突然だった。
帰宅すれば込み上げる吐き気にシンクに突っ伏すようにして嘔吐くと口から花が吐き出された。
その際、喉か口内を傷付けたのか、吐いた花は血に塗れていた。
ようやく吐き気が収まり、中也はその場に崩れるようにへたり込んだ。
花を吐くなんて聞いた事がない。
食中りをしたのなら吐き出すものは胃の内容物だ。
だが、どれだけ吐いても出てくるのは花ばかりだった。
自身の体に何が起きているのかわからず、中也は得体の知れない恐怖に僅かに体を震わせる。
もし、未知の病気に罹っているとしたらこの先どうなるのか。
壁に掛けてある時計を見ると、時刻は深夜だった。
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