KKのことをどう思っていたかと言われると、あっちが事あるごとに言っていたけど『相棒』が一番しっくりくると思う。
倍近く年上で、生まれた場所も育った環境も現在や以前の職業も噛みあうことがない、こんなことがなければ出会わなかった僕らが二心同体、お互いの命と世界の命運を賭けて二人っきりで戦っていたあの夜は僕たちは確かに年齢職業も性格も関係ない『相棒』だった。
今は僕には妹がいて大学が始まって教授やゼミの仲間やバイトの同僚がいて、KKは奥さんと子どもは結局別々の道を進むことに決めてしまったけれども凛子さんたちと和解して本格的な祓い屋を始めた。
アジトに行けばKKは僕を『相棒』として扱ってくれるけど、KKのいない僕のエーテル能力は麻里にも絵梨佳ちゃんにも劣るし、就職活動と卒業論文で週に一度行ければいい方で、しかもその時にKKがいるかはわからない。
僕はあの夜が過ぎれば僕にはKKの『相棒』としての価値はないことに気づいてしまった。
でもそういうことってよくあることだと思う。通学路が同じ同級生、体育祭実行委員として集まったメンバー、部活で組んだペア、同じゼミを志望した学生。ちょっとした偶然で出会って、共同で作業をしたり意見を交わしたり、嬉しいことや辛いことを共有したり、期間はまちまちだけど一生忘れられないような思い出を作って、でもその時が終われば別々の道に進み、多分もう会うことはない。会ったとしても「久しぶり」ってちょっと話をして終わり。きっとKKと奥さんみたいに。
それはすごく嫌だった。
あの夜が恋しいとは思わないし、KKはよくないところもたくさんあるけど、でも僕は彼の『相棒』でいたかった。『特別』になりたかった。
東京タワーで僕を前に進ませてくれたのは他の誰でもない、KKだったから。偶然だったとしても、それはもう起こった事実だから。
僕がKKの『特別』になるためにはどうしたらいいか。まずエーテル能力の強化。素質としては女子二人には劣るけれど戦闘経験は豊富なので技術を磨く。それからKKの周囲の人がしないこと、家事だ。アジトの掃除、主にKKの服の洗濯、食事の用意。元々節約のために自炊していたし、料理は化学なので嫌いではない。KKの好きな食べ物や好みの味付けを聞けば会話が増えるし、健康のための食事改善もできる。
KKに無理するなって心配されたり、凛子さんに本当にいいのかと何かを確認されたり、麻里に頑張れと応援されたりしたけど、僕の生活は充実していた。
その内にKKの部屋にも行くようになって季節外れの大掃除をする羽目になったけれど作り置きができるようになったし外飲みだけじゃなくて宅飲みもするようになって、合鍵も貸してくれた。
「いいの?」
「ああ、オマエのしかないから失くすなよ」
KKのマスターキーからいくらでも作れるだろうけど僕はとても嬉しかった。僕はKKの『特別』になれたんだと。
その『特別』がKKにとってどういう意味か気づいたのは回数の減った煙草の煙を吐きかけられてむせているのを捕まえられてキスされた時だった。