菫青石は砕けない4 限界は、思っていたよりも早く訪れた。
自分が思っている以上に追い詰められていたのだと、アガレスは気づいていなかったのだ。隠すのは得意で、気づかせないのも得意だったから、大丈夫だと思いこんでいただけだった。
アガレスが巧妙に距離を取ろうとしても、ガープは目敏く気づいて駆け寄ってきた。それまで繋がっていた手をアガレスがするりと外したとして、離れきる前に当たり前みたいな顔で掴んでくるのだ。しかも当人に自覚がない。
そんなことが、幾度も、幾度も繰り返された。少しずつ距離を取ろうと考えていたアガレスは、相棒の思わぬ察しの良さに妨害され続けている。その上、ガープは無邪気に笑いながらアガレスの心臓を射抜き続けているのだ。何も考えていないくせに。
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