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    菫城 珪

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    菫城 珪

    ☆Тайно следовать

    役者もののやつ。気まぐれ連載

    黒に溶け、青に堕ちる<1> 若者の間で流行っている歴史物のファンタジー小説。
     文庫本サイズのそれは黒川千隼の手の中にすっぽりと収まる。
     煌びやかなイラストが描かれた表紙には若い男性キャラクターが二人並んでいた。一人は狩衣姿で表情の少ない美丈夫。もう一人は額に一対の黒い角を生やした中性的な顔立ちで冷艶な笑みを浮かべる青年。
    『時は平安。
     魑魅魍魎が跋扈する混沌とした都では一匹の鬼が世間を騒がせていた。
     その鬼は有力貴族の一族を襲い、無惨にも次々に喰い殺したのだ。
     事態を重く見た帝からの勅を受けた陰陽寮はその鬼を調伏せんと若き陰陽師、津守尹明を鬼が寝ぐらにしている廃屋敷に遣わした。
     辿り着いた先、尹明が目にしたのは焼け落ち朽ちた屋敷に一人ぽつりと座る青年鬼の姿だった…。』
     ひっくり返した本の裏表紙にあるあらすじを読みながら千隼は再び小さく溜め息を零す。
     相手はいわゆるライトノベルというものなのだろうか。巻数が多いが文体は読み易いとマネージャーは話していたが…。
     テーブルに積まれた文庫本はゆうに十冊を越えている。一冊の厚さは大したことはないとはいえ、この冊数だ。読むのにそれなりの時間が掛かりそうだ。
     今日一日の休みで足りるだろうか。
     そう思いながら間接照明の柔らかな光を浴びる手の中の本を弄ぶ。そうしているうちにこちらに視線を投げる二人のキャラクターと目が合って、千隼はもう一度小さく溜め息を零した。

     黒川千隼は俳優を生業としている。
     幼い頃から物語を好み、映画や舞台、小説など凡ゆるものを貪る様にして生きて来た千隼にとって役者という生き方は自分に合っていると自認している。
    「誰か」を演じる事はその人の人生を深掘りし、理解する事だ。そうして、「誰か」の生きた道のりをなぞるのが千隼にとって息をするのと同じくらい自然な事だった。
     その人生を思い、偲び、演じる事が生き甲斐であり、千隼の生きる意味。
     どんな端役でもそこに至る人生を思い、そのワンシーンを描く。個々の人々の人生を撚り合わせて織り上げられるのが物語であり、作品だ。
     世界にはまだ出逢っていない物語が無数にある。その一つ一つを紐解くに人の一生では到底足りない。だから、自分は物語を喰らい続ける。喰らって喰らってそうして独り生きて征く。そう思って生きて来た。
     そんな千隼にとって今回の仕事は初めてのジャンルだ。昨今では映像作品でもさまざまな垣根を越えた作品も目立つ様になり、俗に言う「BL」と呼ばれる男性同士の恋愛模様を描いたドラマや映画が増えてきた。今回のオファーはまさにそのBLの要素がある作品なのだ。
     これまでにも男女間の恋愛であれば数多演じてきたが、相手が男性というのは初めての事だ。
     千隼自身は自分の恋愛に対する興味がない。人間が抱えるものとして愛だの恋だのといった恋愛感情に興味関心はあるものの、それの対象が自分の事となると途端に興醒めしてしまう。
     誰かを好きになった事はあるが、それが恋愛感情なのかと言われれば疑問がある様な淡さであり、物語に語られるような激しいものではなかった。
     そんな有様だから男同士の恋愛感情なんて更に理解が及ばない。
     世間で言われる様な同性同士の恋愛に対する嫌悪感とはまた違う、未知のものゆえに千隼には理解が出来ない。
     同性のカップルなんて日本では江戸時代までは当たり前だった。戦国武将が自身が可愛がっていた小姓に送った手紙だって現存している。そういったことを知識として知っていても、身近に存在しない事で実感がないから理解が及ばないのだろうか。
     男同士の絆も物語の題材として良く描かれるものであり、千隼も度々感じる事はある。友情と愛とは何が違うのだろうか。そう疑問に思いながら本を開く。
     視線でなぞる文体は確かに読み易い。するすると物語の海へと思考を漕ぎ出し、その世界に耽る。
     雅やかな世界の裏側には常にドロドロとしたモノで満ちていた。それは人が抱える愛憎であり、妖が齎す災禍であり、宮廷という場所が抱える歪みだ。
     主人公二人はそれぞれにドロドロした世界との繋がりがあり、時にはその縁がトラブルを引き寄せる。そんなトラブルを解決する日々を過ごしながらお互いが相手に抱える感情に戸惑い、時には嫌悪しながらやがて想い合うようになる…。

     一日かけて一通り読み終えた千隼は本を閉じて吐息を零した。
     長い物語の中、二人が抱える心情の変化が丁寧に描かれた作品だった。男同士、陰陽師と鬼、主人と従僕。彼等が抱える関係は複雑だ。だが、その複雑な関係の中で彼等は確かに互いを信頼し、何よりもかけがいのないものとして相手を愛しんでいた。その形は決して美しいだけではないが、時には倒錯的なそれすら彼等の間では絆となる。
     これまであまり触れてこなかった世界観に、千隼は僅かな高揚を覚えた。この世界の事を知れたらまた自分は一つ成長する。そんな手応えを覚えていた。
     懸念があるとすれば、それは共演者だ。
     千隼が割り当てられた役は陰陽師でありいわゆる「攻め」と呼ばれる役柄の津守尹明。必然的に「受け」役がいる訳なのだが、その相手が問題だった。
     テーブルの上に放置していたスマートフォンを手に取り、起動させる。検索画面を開いて打ち込むのは共演者の名前だ。
    「ふゆべあお、か」
     検索結果に表示されるのは様々なキャラクターに扮した一人の青年。宣材写真と思しき一枚をタップすれば、細身の青年の画像が表示された。
     眩しい笑顔を浮かべるその青年は持つ雰囲気はどちらかといえば可愛らしいものだ。そのまま彼のプロフィールの欄までスワイプして目を通していく。
     普段から千隼は共演者について調べる様にしている。
     演じる役柄とその相手との関係が深い程、丁寧に執拗に。いっそ偏執的とも言えるような千隼のその癖は悪癖とも捉えられるが、それでも彼には止められなかった。
     相手を知る程、演技に入る熱量は変わる。どんな人で、どんな事を考えているのか。それを推測する事でどう立ち回るかを決める。
     そして、演技力は人によって差がある。もとより役者を生業にしている者ならまだしも、相手が素人の場合が多々見受けられるのが芸能界というものだ。
     同じ芸能界に所属していても畑が違えば求められるものや必要な技能が違ってくる。話題性や視聴率の為に演技の世界では素人のアイドルやタレントを使う事は良くある事だ。
     セリフの棒読みなんて当たり前。演技だってわざとらしい。そんな相手に自分だけ本気の演技をしては画面内でのバランスが悪くなるばかり。だから、適度に手を抜くのだ。千隼が評価されているのはそういった塩梅が上手い部分もある。
     誰が相手であろうと丁度いい演技をする。だからこそ、千隼は餓えていた。
     同じ熱量で、本気で演技に打ち込める相手がいない事に。
     千隼が選ばれるのは話題性の高いドラマが多く、必然的に若者向けにキャストが組まれる。そうなると若者の注目を集める為にその時人気のある者が選ばれ易い。同年代やそれ以下の年齢の者に千隼のような者は少ない。あるいはそもそも役者ですらない者が選ばれるのが現実だった。
     もっと本気で打ち込みたい。そのキャラクターの人生を追体験するような強烈な演技をしたい。
     そう思い続けているのに、そんな相手に出逢えずにいるのだ。
     今回の相手はその点で言えば少々異色の相手だった。
     冬部青の名前で検索して出てくるのは「2.5次元俳優」やアニメやゲームのタイトルといったようなカラフルでポップな見出しのものが多い。しかし、それに迫る数で彼の演技を評価する記事が多いのだ。老舗の演劇誌ですら彼を好意的に評価している記事を見て千隼の心は弾んだ。
     役者や製作陣の顔合わせはまだ先。しかし、その時を楽しみに思いながら千隼は己の寝床に寝転がった。
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