注意
・未完です
・マリが生存しています
・全てが偽造です
・マリは生存してるけどヘドスペはあるというご都合です
・オモリとサニーが普通に会話します
・そのくせに未完なのでオモリくんのところまでたどり着きません。
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突拍子もない約束を取り付けて、彼は走っていく。
〜〜
ハルバル町の緑豊かで鮮やかな公園の隅の隅、そのまた奥の空間の隅の湖、彼はそこで佇んでいた。
彼は、というのは間違いか。正確には、彼とその隣の彼、ケルとサニーである。
サニーはただただ、ちょっとした買い物ついでにぐうぜん通りかかった公園で、熱心にボールを飛ばして遊んでいたケルをぐうぜん目にしていた。
そこで、こちらの熱い?視線に気づいたケルが、太陽も顔負けの明るい笑顔を向けて走ってきたので、断れるはずもなく…ということだ。
じゃり、という細かい粒子の踏みしめられた音が静寂に響く。
「…で、なんでここに来たんだっけか??」
別にあのまま公園に居ても良かったのに、わざわざこんな人目のない場所まで僕を連れてきたのはなにか理由があったからなのかと身構えていたが、
…どうやら忘れてしまったようで拍子抜けした。
「…あ、そうそう!サニー、頼み事があるんだけど…」
が、予想に反して思い出してしまった様子のケル。
頼み事なら仕方ない、と思ったけれど、ここで話すということはケルにとって相当重要なことなのだろうか。
目の前の彼がバツが悪そうに、指先を腰の高さのあたりでいじりはじめている。
「あのさ…今度の学校のイベント、あるじゃん…?」
「…うん。」
そういえば、そうか。
確かにそうだった。確か、来週にイベントが控えていた。学校のイベントとなるとケルは喜んではしゃいで、張り切りまくって騒がしくしていたはずだ。
それが今週あたりで突然に鳴りを潜めたのはなにか理由があってからのことなのか。
学校のイベントというものは、高校とかで言うと文化祭のようなもので、休日一日まるまる使ったぜいたくな発表会だ。
そんな楽しそうなイベントでケルがこんなふうに表情を沈ませるわけがなかった。
「今週ね、そのイベントに出る演劇部の子がわりとおも〜く怪我しちゃって…」
…待った、まさかその役を僕にやらせるというわけではなかろうか。流石にそれはないだろうが。
「…その役、サニーにぴったりだと思ったんだけど…お願いだ!友よ!もし良かったらそいつのかわりに出てくれないか?!」
「…」
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断れるはずもなく、ということで少し重い足取りで家へと帰る夕暮れ時。
「…ただいま」
「おかえり!サニー!
…っと、それは何?」
明るい声で、マリが出迎えてくれる。
母は今は留守なのだろうか。いつもの家の雰囲気より、少し寂しい。
僕の手には一枚の色とりどりのチラシがあった。
「えぇっ!?サニーが王子様役!?!?」
「…」
ほんの小さく首を縦に動かすと、マリは元々大きく開いている目をさらに大きくして驚いたあと、少し考え込む。
何を悩んでいるのだろうか、やはり僕には務まらないとか、そういうことだろうか。
もし言うならはっきりと言って欲しい。そうしたらしっかり断れるだろうから…
「サニーが王子様!!私、見てみたいなぁ!頑張れ!サニー!」
「…!?」
予想に反して肯定的な意見に、少し肩がびくつく。
…王子様というものはそんなに僕に合っているのか?
いや、合っていないだろう。合っていない。
「いや、でも、」
「それに私、サニーを王子様みたいにかっこよくしてみたい!」
一軒の大きい家に張り切った声がこだました。
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______『オレが悪役の方のキャラをやることになって、怪我をしちゃった子が主人公になってたんだよな…』
『悪役は素早くて強くて賢い狼人間、主人公はそれをぶっ倒す王子なんだけど…』
『演劇の担当にはなぜか女子が多くて、一応その子達にも、男子にも聞いたんだけど、王子役をやりたいって人がなかなか見つからなくて…』
ケルの言葉をいちいち思い出しながら歩く僕の足は未だに重い。
ローファーの底を石の床にずって歩く音がやかましい。
本番までまだかなり時間があるとは言えないが、日があるというのにこの気分の下がり方だ。僕にはどうすれば良いか、もうわからない。
「〜♪」
前を歩くマリの後ろ姿と楽しい声が救いだ。
あれがなければとっくに道の隅で野垂れ死んでいたであろう。
「サニーはさ、どんな服が着たいとかあるの?
私に任せっきりだと私の好みで全部決まっちゃうかも!」
そう言うマリの目はいつもに増してキラッキラしていて、本当に張り切っているのがわかる。
「…」
いっそのこと、かの宇宙海賊の船長の格好にでも…
それとも、ワニのエージェントの服なんかも…
空想の広がり。変な方向に向かって掘り進められるアイデアに、マリの声が終止符を打った。
「あ!サニー!あんなのはどうかな!?」
そこはショーケースの端。
すこし地味でありつつワンポイントの装飾が光る、鮮やかな、ゆったりしたタキシード。
「あ…」
一瞬だけ、目を奪われた。
「あ、あれは高すぎたね…ごめんごめん…」
僕の頭の中の王子様のイメージには、鮮明さが顕れていた。
(未完)