別の宇宙の自分に嫉妬する沙明その話を聞いたとき、これまでに感じたことのない何かを腹の中に感じた。カッと燃え上がるように熱く、鋭い鋭い刃のような冷たさを持つそれを世間一般では嫉妬と呼ぶのだと思う。
自分がそんな感情を持つことがあるとは。
昔は嫉妬をするような状況ではなかった。この世の不条理さに対する怒り、哀しみ、その他諸々。改めて言葉にするとチープすぎて笑えるが、その単語だけでは感情の熱量は測れない。
物質としては存在しないはずなのに、自分の中から湧き立つ感覚はあの時感じたものに似ている。
あいつが好きになったのはこの宇宙の俺じゃない。
だけど俺という存在は同じで、二度とその宇宙に行けないあいつは同じ存在の俺が好きで。
俺が知らないあいつも、俺が知らない俺も、別の宇宙の俺が知っている。閉じられた宇宙の、二度とあいつが会うことのない俺が知っている。
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