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    mitotte_kazu

    @mitotte_kazu

    自機ルガオスとエタバン相手のヴィエラとかよそよその話とかNPCよその話とか置いとく場所。
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    mitotte_kazu

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    ヒラは自身のエーテル使ってるから戦闘後満身創痍なのでは?的なツイートを見かけた結果荒ぶった🐇さんに応えたお話

    ##ディンエラ

    不足 怒涛の敵からの攻撃と周囲に倒れている仲間達の亡骸に、ルガディンは自嘲に近い笑みを浮かべた。攻撃範囲を避けながら詠唱時間を省略し、味方の白魔道士に蘇生を投げる。それだけで体内の魔力もエーテルも枯渇してしまった。それまでのダメージを緩和するためのバリアで魔力を費やしてしまった結果ではあるが、自身の不甲斐なさに奥歯を噛み締めた。愚痴も泣き言も漏らすつもりはないが何はともあれ立て直していく必要がある。敵の攻撃が緩んだ瞬間を見計らい白魔道士が起き上がるのを視界の端で確認しながら、敵からエーテルを少量拝借する。すかさず拝借したエーテルを体内で変換し、白魔道士へと受け渡す。慌てたように詠唱していた白魔道士が少し落ち着き、他者の蘇生へと行動を移した。
     様子を見ながら他の召喚士や赤魔道士を2人がかりで蘇生し、なんとか持ち直し強大な敵を討つことはできた。最後の方に蘇生された事に対しては特に不満のない様子のヴィエラが彼の隣へ歩み寄って来る。泥だらけの顔で下唇を噛み締めた彼の名を呼んでみた。我に帰ったように彼女の方を向いた彼が、口元を隠すように手で顔を覆う。落ち込まなくてもいいじゃん、と丸められた彼の広い背中を撫でると微かに背けられていた顔をこちらに向けてきた。逆光で反射的に目を顰めながら彼の顔を見つめると、大きな掌が伸びてくる。頭を撫でるように置かれた彼の左手が左右に軽く動き、離れた時にはまた彼には背を向けられていた。髪型が乱れるからと滅多にしてこない仕草に微かに首を傾げ、乱雑に口元を拭っていた彼に歩み寄った。
    「この後どっか行く?」
     レポリット行くけどついてくる?とヴィエラが尋ねてみると、一瞬考え込んだルガディンが首を振る。微かに顔を顰め、もう済ませた、と残念そうに簡潔に答えられ、そっかと彼女は納得した。じゃあね、とテレポを詠唱しながら手を振る彼女に彼も手を振り、あと数秒で詠唱が終わる瞬間だった。彼が盛大に咳き込む。口元を押さえる指先に赤いものが見えて、彼女は反射的に駆け出す。彼の手首を掴むと指先のみならず口元まで吐血で赤く染まっていた。
    「これっ……!?」
     彼女の視線から逃れるように目を泳がせた彼に彼女は歯を食い縛る。いつから?どこからの出血?と疑問と行き場のない怒りが渦巻いている彼女に彼が一度溜息を吐いた。
    「ちょっと、無茶しただけだ」
     普段より小さく掠れた声で言った彼にちょっと!?と彼女が声を荒げる。宥めるように空いた左掌を彼女にかざしながら、途切れ途切れに彼は弁明を始める。曰く、体内のエーテルを使いすぎた結果で、少し休めば回復すると。
    「結構経っててこれじゃん!!」
     彼の鞄に突っ込んだ手で勢い良く取り出したエーテルの瓶を、彼女は彼の口元に押し付けてくる。ぐいぐい、とそれでも中身を零さないよう気を付けてくる優しさに苦笑しながら左手で受け取ろうとすると、ダメ、と彼女の左手に振り払われた。
    「またこんな無茶しないように、私が飲ませたげる」
     鼻を啜りながら唇を尖らせた彼女がじとりと睨み付けてくる。予想していたが相当なお怒りだと赤子のように介助されながら、自己の行いを省みるように目を閉じた。



     相方の占星術師はエーテルが乱れ体力も落ちている状態で、それでもタンクが耐えられるようにと回復魔法を詠唱していた。まずいなと思いながら、まずはタンクと占星術師にバリアを貼り回復魔法を唱えた。枯渇しかけているエーテルを残しておいたフローで賄い、また敵からエーテルを奪う。元々エーテルの扱いは得意な方でも豊かな方でもない一般人だ。奪った側から使い果たす勢いで味方の回復魔法へと変換していった。勝敗や生死を別つ重要な場面で、緊張感や焦燥感で焼け付くような喉で無理矢理唾液を飲み込む。鈍い痛みが胸を襲い、微かに鉄の味がした。諦めを湛えた自嘲気味な笑みが浮かびそうになり、反射的に奥歯を噛んだ。視界の端で倒れているヴィエラに心の中で謝罪しながら、詠唱を省略した蘇生魔法で召喚士を起こす。なんとか持ち直し、無事討伐を終え解散していく一同に挨拶をし、最後まで残り隣に立って手を振っていた彼女に向き直った。
    「悪かった」
     彼の謝罪に苦笑しながらしゃーないよ、と彼女は答える。
    「初見だったんでしょ」
     頑張ったよ、と微笑みかけてくれる彼女に深く息を吐いた。そのまま上半身を前に倒し、鼻腔や口から溢れてくる血液を彼の巨大な手が制する。それでも止まらない血がぽたりと床に垂れ、目敏く気付いた彼女に肩を掴まれた。
    「ぁあもうっ!!」
     謝罪を繰り返す彼に喋らなくていいから、と鞄の中から回復薬を探す彼女に彼が首を振る。
    「単なるエーテル不足だ」
     簡潔に伝えてきた彼に、顔を顰め睨み付けて彼女が持ってる?と尋ねてきた。頷いて答えた彼の鞄に手を突っ込んでエーテルを取り出し、苛立たしげに瓶の蓋を開けて彼の口元へと近付けてくる。ぐいぐいと押し付けられる瓶に手を伸ばし、その掌が血に染まっているのに気付いた彼は大人しく口を開いた。零さないように注意して彼にエーテルを与えた彼女が鼻を啜る。
    「もうしばらくすれば、多分治まる」
     ず、と鼻血を啜った彼に彼女が無言で布を差し出してきた。一瞬迷った彼の隙を彼女は見逃さず、血に染まる鼻梁を布越しに乱暴に押さえ付ける。じわりと微かに血が滲むが、その範囲が広がる様子はなかった。
    「……鼻や気管支辺りの、粘膜の保護や治癒に回すエーテルが不足してたんじゃないかと」
    「喋らない!!」
     布越しの籠った声で彼が呟くと、彼女が一層強く鼻を押さえる。微かに呻き声を上げた彼が小さく何かを呟いた。思わず手を止め、彼の口元へと兎のような耳を近付けた。
    「喋ってる方が、気が紛れる」
     痛みとか、と途切れ途切れに話す彼から布を剥がし、少し乱暴に口付ける。彼にしては珍しく見開かれた瞳と視線がかち合ったのを確認し、唇を離した。
    「分けてあげたから、早く元気になれ」
     自身の唇を軽く舐めた彼女に鋭く睨み付けられ、彼は目を瞬かせながら大人しく数回頷いた。
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    mitotte_kazu

    PASTバレンタインなのでチョコ渡す🐇さんとチョコ食べる🦍の短い話
    片割 この海の街にもイベントの余波が来ているようで、浮ついた雰囲気が漂っていた。幸せそうな人を見るのは嫌いではないが、この空気の中独り歩くルガディンはどこか居た堪れなさを感じていた。
    それでもイベントのおかげで普段ならあまり手を出さないようなチョコレートが並んでいる店頭を眺めるのは楽しいものだった。買ったところで勿体なくて食べられないのは目に見えているし、貧相な自身の舌はどれを食べても美味しく感じるのだろう。折角だからと思いつつ平凡な板チョコレートを手に取る。と、掌からチョコレートが消えた。目線を掌から上げるとルガディンから取り上げたチョコレートを興味深そうに眺めるヴィエラがいた。

    「買うの?」
     握ったチョコレートをひらひら翳しながらヴィエラが首を傾げた。まぁ、とルガディンが頷くとふぅんと数回頷いた彼女がそれを棚に戻す。買うと言ってるのに、と棚のチョコレートに伸ばされた彼の手をヴィエラの手が掴んだ。ルガディンが何なんだと困惑している間に人気の少ない通りまで引っ張り出される。されるがままだったルガディンの離された掌にちょこんと小箱が載せられた。どこか見覚えのあるデザインの小箱をしばらく眺めてから、目の前のヴィエラに視線を向ける。にんまりと意味深に笑った彼女が覚えてる?と首を傾げた。ルガディンが数回頷いて開けても良いか了承を得ると、勿論、と微笑まれた。
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    mitotte_kazu

    PAST🐈🐇🐑🦍が美味しいものを食べるだけの話
    会食 立て続けの依頼を終え、ようやく一息つけるとヴィエラは適当に目についた店に入った。食事時から外れた時間帯もあって、まばらに空いた座席に腰を下ろす。そのまま倒れ込みそうなのを堪えてメニューを開いた。季節限定などのメニューも魅力的だったが定番で当たり外れのない、無難なものを選んで注文する。こんな疲れた時に、そういうメニューでハズレを引きたくないという打算だったが、他のテーブルに目を向けてみるとそうでもない気がしてきた。それでも穏やかな店員の対応に少し癒され、メニューを眺めながら頼んだ品が来るのを待つ。少しの時間を置いて、飲み物と共に運ばれてきたパンを齧る。さっくり焼き上げられた表面ともちもちした食感が楽しく、口の中に小麦の甘さとバターの風味が広がった。好きなやつ、と思いながらパンを頬張る。サラダとかスープも頼めばよかったかな、と思いつつ空腹も少し落ち着き、店内を見渡した。インテリアなどにも拘られており、居心地は良い。テーブルや椅子の高さも種族ごとの配慮もされていた。もしや割と良い出会いなのでは、と皿に載っているもう一つのパンを齧りつつ、頬を緩めた。
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