生誕祭 依頼を終え帰宅した自分を待っていたのは豪勢な食卓だった。早かったなと鉄板に乗った塊肉のローストを手に呟いた彼に何事かと尋ねてしまう。新しく聞いたレシピを試したかっただけだと後頭部を掻いた彼がまたキッチンへと消えていく。温かな湯気が立ち昇る食卓へと視線を落としていると、座って待ってろ、とキッチンから鋭い声がした。言われた通り腰を下ろしていると、中央に開けられていたスペースにそっとケーキが載せられる。
「これは、」
思わず顔を上げると照れたように口角を下げた彼が何も言うなと言わんばかりの表情で蝋燭に火を灯し出した。ここでようやく今日が何の日か思い出して彼を見ると、気まずそうに目を逸らされる。おめでとう、と素っ気なく言われるが、彼なりの照れ隠しなのはよく分かる。対面に座った彼が火の灯された蝋燭か刺さったケーキを差し出してきた。ありがとうと返し、一息で吹き消す。
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