なみだのあと あらかじめ連絡を受けて待機していたところで、運良くコンビニの前を通り過ぎる目当ての人物を見つけたところだった。
「いた。全く、手間のかかる…」
濡れ鼠ならぬ濡れ隼、と言ったところか。
仕方ないと降りしきる雨の中、手持ちの傘を勢いよく開いて私は彼の元へと駆け出していた。
「坊ちゃん! そんなびしょ濡れで風邪ひきますよ!」
「……なんだ、お前か」
「なんだ、じゃないですよ。この雨の中傘も差さずにふらふらしてる大男なんて嫌でも目に入りますって」
差し出した傘はよくある規格のせいで、大男2人が雨を避けるにはその幅は十分とは言えず、自分も彼も半分ほど傘からはみ出してしまう。だが、びしょ濡れの男をそれ以上濡らしておくわけにもいかず、自分の傘を無理やり坊ちゃんの手に握らせた。
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