花もて渡れ「──よし、これでいいかな」
ルイージが一つ息を吐くと、それは寒さに白く染まった。
念入りに掃除をしたリビングに、落とされた照明。しんと静まり返った部屋。机の上には白い便箋が一つ。
もう他にやれることもない。数日前から食材の整理はしていたし、窓も戸締りも問題ない。ゴミや腐敗の可能性があるものは片付けもしてある。勿論荷造りは完璧で、あとは出発するだけ。
「……ごめんね、マリオ」
ここにいない兄に一人謝って、ルイージは眉を下げた。
長期間の無人状態に備えた家。きっとこれでマリオが冒険から帰ってきたって、差し当たっては困らないはずだ。だがそれでも閑散とした家は冷たくて、帰り着いた時に疲労感を拭い去ってはくれないだろう。
6379