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    Runa_enigma

    @Runa_enigma

    春海です!名前違くてごめんね!!
    多分もう文字書かないだろうからって色々掘り起こして設定やら書き途中の作品やらを供養する事にしました!つまり墓場?ゴミ溜め?
    ここにある物も支部やツイッター(X)に投稿した物も煮るなり焼くなりにのみやかずなりしてくださって構いません。むしろ嬉しい。
    ほぼほぼ太中かドス太。
    地雷とか配慮してないしバリバリ腐ってるからね。
    自己責任で頼んます!

    文ストの筆は置きました。

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    Runa_enigma

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    太が五衰だったらif
    でもこれ五衰全員が出る前のものなので色々破綻してるので別世界だと思ってください。
    続きはご自由に。

    The Worst Word その日はとても晴れていた。
     どこまでも青空が広がっていて、とても暖かくて、鳥が心地良く囀っていて、そして──、


    最悪な日になった。


    ──────────

     ぼーっと、窓から空を眺める。大した理由もなく、仕事机に体を預けて何も考えず空を見つめた。

    「敦、サボるな!お前もあの唐変木に似てきたなぁ!?」

     分厚い資料で背中を思いっきり叩かれた。痛い。
     驚いて振り返ると、眉間に深い皺を作った国木田さんが呆れていた。

    「す、すいません!天気が良いものでつい……」
    「お前は猫か」
    「虎です!けどぉ……こんなに晴れたのなんて久しぶりじゃないですか。気持ちよくて〜」

     最近のヨコハマは曇りや雨が続いていて気持ちもどんよりと沈んでいたが、やっと訪れた綺麗な快晴に気分は再浮上し、眩しい太陽の下で走り廻る犬になった様な、縁側で寝転ぶ猫になった様な気分だった。

    「矢張り猫だな」
    「虎です!!」

     僕を虎だと言って聞かない国木田さんに不満を覚えるも、仕事を放って日向ぼっこしていた自分が悪いのでそれ以降は何も言えなかった。

    「太宰は二人も要らないからな」
    「はーい」

     僕も太宰さんみたいにはなりたくない……かな。
     頭脳や手腕こそ尊敬するけど、普段の姿を見ていると如何しても「太宰さんみたいになりたいです!」とは言えなかった。(尊敬はしていますよ!)

    「それじゃあ、この事件をお前に任せる。鏡花と共に現場へ行ってくれ」

     さっき僕の背中を叩いた資料を渡され、近くにいた鏡花ちゃんと一緒に資料を見る。
     その仕事は、海外の異能犯罪組織がヨコハマでテロを企てていると云う物だった。中々大きな事件だけど、過去に一度軍警に捕まった仲間を救出する事が目的らしく、強力な異能力者も数名しか居ない小さな組織だったから僕と鏡花ちゃんに任せてくれたのだろう。頑張ろう。
     僕と鏡花ちゃんが仕事に向かう準備をしていると、ふと太宰さんがまだ出社していないことに気がついた。

    「国木田さん。太宰さんは……?」
    「さあな。また川にでも流されているんじゃないか?」
    「そうですか……」

     僕は何とも云えない不信感を抱き、大きな不安の波に襲われた。

    「どうしたんだ、敦」
    「い、いえ……。只、ここ数日太宰さんを見ていないなと思って」

     その事に国木田さんも合点がいったのか、「確かに」と云って思い出す様に首を曲げた。
     僕も同じ様に此処数日の太宰さんを思い出してみるが、記憶に靄が掛かった様に不審な点は思い付かなかった。

    「多分、僕の杞憂です!現場に行きながら探してみますね」
    「嗚呼、頼む」

     国木田さんとて暇ではない。始業時間から退勤時間までキッチリミッチリそれはもう太宰さんが呆れ返るくらい仕事をしている御仁だ。その不敬にも呆れ返る太宰さんを探す時間も意欲も雀の涙程も無いだろう。ちょっと酷いかもだけど太宰さんには同情しかねます。

    「では、行ってきます」
    「気をつけてね〜」

     社長の椅子に座ってお菓子を食べていた乱歩さんに見送られ、僕は鏡花ちゃんと一緒に探偵社の扉を開けた。


    *****


     こんな天気の良い日に外での仕事は例え仕事であっても嬉しく感じられる。心做しか隣を歩く鏡花ちゃんの表情も明るい。無表情だけど。
     国木田さんに言ったように、太宰さんを探しながら街を行く。しかし、探偵社を離れても太宰さんが居る様子はなく気が付けば今回の仕事現場に着いてしまった。

    「太宰さん、何処に行っちゃったんだろう」
    「大丈夫。あの人なら心配要らない」

     心強い仲間が出来たな。なんて感慨深く思っていると、建物の中から大きな銃声が聞こえた。それを狼煙に、一斉に銃声が増え出し銃撃戦が始まっているのだと理解した。

    「急ごう!」
    「うん」

     今回の依頼は異能犯罪組織を取り仕切る悪玉の逮捕。其奴が殺されてしまえば依頼は失敗になり、仕事を任せてくれた探偵社の皆に申し訳が立たない。
     僕達は急いで建物内に入り、長い階段を上って銃撃戦が繰り広げられているであろう階層へ到達した。
     壁の影から様子を伺って見ると、中には複数の武装者と無数の死体が転がっていた。その死体の中に僕達が捕まえる筈の悪玉は居ないが、今まさに殺されようとしていた。

    「待て!!」

     どんな悪人でも真に殺す必要は無いのだと、我ながら甘い考えを心中にずっと持っていた。それが今も僕の体を突き動かす。
     足を虎化させて血を蹴れば瞬きする間に悪玉と殺戮者の間に入れた。

     そして、その見知った顔があった。

    「太宰さん!?」
    「敦くん…!?」

     此処数日音信不通だった太宰さんが今、犯罪者ではあるものの人間一人をその手にかけようとしていた。
     元マフィアの太宰さんはその真っ黒な経歴は洗い、人を殺す事を辞めた筈だった。

     なのに、僕が今見ているモノは何だ?

     何故太宰さんが人殺しを?

     否、屹度太宰さんには考えがあってこの行動を起こしているに違いない。
     まだ殺してはいないし、脅しているだけだったかもしれない。
     あの殺気は相手を怯ませる為の……

    「済まないが敦くん。私は君が思っているほど尋常な人間ではないのだよ」
    「太宰さん……?」

     太宰さんは僕を突き飛ばして異能を解除すると、構えていた拳銃で異能犯罪組織の悪玉を射殺した。そして何度もその死体に銃弾を込めた。
     その瞳は見た事の無い程冷え切っていて、僕は足が竦んで動けなくなった。

    「こんな所で君に見せる予定じゃなかったんだけど……」

     大きく吐き出された溜息が刺さる様な感覚まで覚え、“恐怖”の文字が僕の体を縛り付けて心を支配していた。
     太宰さんは声を落として「乱歩さんがこの場所を導き出したのかな……あの御仁ならやりかねないねぇ」と思考を巡らせていたが、直ぐ様「まあいいか!」と言ってニコニコと優しい笑顔を作った。今ではその笑顔が怖い。
     本能が警鐘を鳴らしている。心臓が動けと叫んでいる。脳が逃げろと指示を出している。だのに、一歩も動けない。

    「だがまぁ、今は良いさ」

     太宰さんの声にハッとして我に返るも、頭はこの状況に追いついていない。
     海外の異能犯罪組織全員の死体と、返り血を一切浴びていない冷酷な太宰さん。
     可笑しい。

    「だ、太宰さん。貴方が全員殺したんですか?」
    「さてね」

     太宰さんは恍ける積もりだ。あの太宰さんが会話で情報を漏らす筈がないし、僕には太宰さんの様な頭脳も手腕も無いのだから駆け引きや騙し合いではかないっこない。

    「ねぇ、敦くん。君は正義と悪の線引きをしているかい?」

     突然の質問に戸惑ったけど、僕の口は以外にもするりと言葉を紡いだ。

    「はい。あまり具体的には考えていないけど──」
    「そう……」

     太宰さんはそれっきり何も言わないで死体を見つめ、またふと口を開いた。

    「私にはね、正義と悪との間に大差など無いのだよ。何方も同じ。この酸化する世界に於いて、何方も何の意味も成さないちっぽけな物」

     何も言えなかった。
     その類稀なる頭脳を持ってしまい、その類稀なる容姿を持ってしまい、その類稀なる異能力を持ってしまった太宰さんを理解し、支える事なんて僕には出来ないから。
     だから「そんな事ないですよ」なんて軽い気持ちで言える筈が無かった。

    「唯一の友人が死んだ後も、私はこの酸化する世界に縛られている。もう疲れてしまったんだよ、敦くん」
    「太宰さん……?」
    「だからね……」

     次の瞬間、太宰さんが持つ拳銃が目の前に広がった。その黒い体は命を刈り取る死神色で、真ん丸な銃口は底なしの深淵だった。
     ふっと脳裡に短い一つの言葉が、ただ一言だけが浮かんだ。


     死んだ。


     無慈悲な銃声が響き、軈て床に落ちた薬莢が甲高い悲鳴を上げる。


     僕は生きていた。


     僕の頭に銃弾が届く瞬間、僕の視界は一転し、その頭上を弾が穿った。僕は鏡花ちゃんの異能『夜叉白雪』に服を引かれて思いっきり尻をついて命が助かった。そしてすぐ様飛び出た鏡花ちゃんによって太宰さんの首には短刀が宛てがわれた。

    「おや、君もいたの」
    「貴方なら気づいていたでしょう……」

     太宰さんは諦めた様に銃を投げ棄て、両手を上げて「降参こうさ〜ん」と腑抜けた声を上げた。それでも鏡花ちゃんは油断することなく、その鋭い双眸は太宰さんを射殺さんとしている。

    「殺されるのも、捕まるのも今は嫌だよ、私。助けてー」

     太宰さんが助けを呼ぶ声を放つと同時に、僕の背中に穴が空いた。

    「え?」

     力が抜けて前へ倒れると、ポッカリと空いた穴から大量の血が流れ出た。幸い、穴も小さく撃たれたのが心臓では無かった為致命傷にはならなかったけど、爆発的な痛みと出血は立つ事を許してはくれなかった。
     一瞬の事で何が起こったのか分からなかったが、僕を撃った犯人は直ぐ様姿を現した。

    「ハァーイ!呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!」

     いきなり現れたのは、長い銀色の三つ編みを後ろで揺らすピエロの様な長身の男だった。
     姿を現すまで足音も匂いも無かった。そして男が右手に持つ拳銃を見て、僕は空中に現れた此奴の銃によって撃たれたのだと気づく。
     しかし、気づいたから何だと云うのか。己の体や物を離れた位置から取り出し使う事の出来る異能力なら、手負の僕も太宰さんを牽制している鏡花ちゃんもこめかみに一発くらえば即死だ。強すぎる。
     男の異能力を見て、此処に来た時太宰さんが返り血一つ付けていなかった事を思い出した。この男が殺したのだ。太宰さんが一人で全員を殺した訳ではなく、この男も人殺しをしていたのだ。遺体の何れもが頭か心臓に空洞がある。此奴の異能力で死神の様に命を奪ったのだろう。

     怖い。

     今の僕では此奴に勝てないのだと、僕は死ぬのだと神に告げられた気分だ。
     しかし、そんな僕とは裏腹に太宰さんの神様の様に優しい笑顔が向けられた。

    「二人は殺さないでね、ゴーゴリくん。敦くんと鏡花ちゃんには伝言人になって貰おう」
    「っ!?」

     神に告げられた余命宣告を、神によって撤廃された。
     僕は酷く混乱し、”伝言人“と云う言葉に引っかかった。それは鏡花ちゃんも同じだった様で、不審な顔をしていた。
    「りょうかーい!」
    「伝言人……?」

     鏡花ちゃんは自身の背中に立つゴーゴリと云う男に向けて夜叉白雪を放った。ゴーゴリは態とらしく驚くと、夜叉に銃弾を打ち込む。しかし夜叉はその悉くを切り捨てると、ゴーゴリ目掛けて刀を上げた。

    「キャー!太宰くん助けてー!!」
    「君は私を助けに来たのに何故私に助けを乞うんだい……」

     そう呆れながらも太宰さんは鏡花ちゃんが刀を持つ手に触れて夜叉を消し、流れる様な手つきで鏡花ちゃんを投げ飛ばした。

    「あまり女性を傷つけたくないのだがねぇ……」

     鏡花ちゃんは僕の所へ駆け付けると、歩けない僕を背負って近くの窓から飛び降りた。

    「うん、賢明な判断だ」

     飛び降りる瞬間、太宰さんが微笑んで僕らを見ていた。その笑顔は探偵社でよく見ていたもので、我慢していた涙腺が緩み始める。でも、泣いて良い様な状況では無いのだと自分に鞭を打ち、鏡花ちゃんに支えられながらその建物を後にした。

    *****

     何時まで経っても銃創が塞がらず、流れ出る血が止まらなかった。貧血でフラフラとした足取りを鏡花ちゃんに支えて貰いながらどうにかして探偵社まで辿り着く。
     僕達は急いで階段を駆け上がり、探偵社の扉を勢いよく開けた。

    「国木田さん、皆さん、大変です!太宰さんが……」

     そう言いかけて、僕の体は支えてくれた鏡花ちゃんを巻き込んで前へ倒れた。体に力が入らなくて、起き上がろうと踏ん張っても動けない。

    「敦!大丈夫か!?」

     異変に気づいた国木田が駆け寄って来て、動かけない僕の体を抱えてくれた。

    「何があった?」

     朦朧とする意識の中、僕はただ一言だけ告げる。

    「太宰さんが敵かもしれない」

     僕はそれだけ言うと、プツンと意識を手放した。

    *****
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