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    omoti_321

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    omoti_321

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    司えむ小説オンリーアンソロジー【夢見る君と綴る詩】収録の没ネタのひとつです

    途中まで書いたけどもっと明るいほわんってしたお話にしたいと思い、没にしました。なので収録内容と似ている箇所もあります。ポイピクに投稿するにあたって後半部分を加筆しました。

    【夢見る君と綴る詩】没ネタ①「そうだ。えむちゃん、知ってる?お昼でも空にはお星さまがあるんだよ」
    「ほえ?そうなの?」

    2時間目と3時間目の間の休み時間。お腹がきゅるるって鳴るにはまだちょっと早い時間。教室で穂波ちゃんと昨日の夜は空にたくさんのお星さまがあったねってお話していた。ふんわりと笑う穂波ちゃんの動きに合わせて、柔らかい髪がふわりと揺れる。あたしとは違う髪色、やさしさでいっぱいの穂波ちゃんにとっても似合ってる。穂波ちゃんの言葉に、あたしは目をぱちくりさせた。

    「でもでも、今日はすっごくいい天気でぽかぽかーって日に空を見てもお星さまは見えないよ?」

    あの日とかこの日とか、この間のお休みの日にお散歩したときもお星さまは見えなかった。両手を使って指折り思い出しながら話すあたしを見て、穂波ちゃんはほっぺたに手を当てながら笑っていた。

    「お星さまよりも、空の方が明るいから見えないみたい。でもね、空の明るさに負けないくらい明るいお星さまはお昼でも見えるんだって」
    「だって、てことは。穂波ちゃんもまだ見たことがないんだね」
    「うん。毎日見えるものじゃないから、もし見れたら嬉しいよね。あ、そろそろ自分の席に着かなくちゃ。えむちゃん、またね」
    「うん!また休み時間にお話しようね!」

    ひらひらと手を振って穂波ちゃんの背中を眺めていると、周りにいた子達も穂波ちゃんと同じようにぱたぱたと自分の席に戻っていくのが見えた。
    今日は先生が来てからチャイムが鳴るかな、それともチャイムが鳴ってから遅れてごめんって謝りながら先生が教室に入ってくるかな。いつもは授業が始まる前まで机に肘をついて両手に顔を置きながらぽけーっと時計を眺めているけど、今日はそうしない。穂波ちゃんとのお話をふわりふわりと思い出しながら、先生が来るまでのちょっとの時間だけ窓の外を眺めた。ぽかぽかして気持ちがいい、澄み渡る空ってこんな空のことをいうのかもしれない。お昼のお星さま・・・・・・あたしの目には見えないけど、お星さまも授業受けてるのかな。お星さまの授業かぁ。どんな内容なんだろう。

    「鳳さん、窓の外に何かあるの?」
    「あ、ううん!なんでもない!」

    窓の外を眺めながら笑ってたみたいで、隣の席の子に不思議そうに声を掛けられた。うう、やっちゃったー。



    綺麗な淡い水色の空は、お家に帰っていく。代わりにオレンジ色の空がおはようーってあくびをしながら顔を出してきた。あたし達のステージがじわじわと空の色に染まっていく。夕暮れになると楽しい時間が終わっちゃう。だから、この時間は嫌だなあって思ってた。でも、今は違う。楽しい時間は終わらないことを今のあたしは知っている。夕暮れは終わりの合図じゃない。くるくる回り続けるメリーゴーランドみたいに、夕暮れの時間だってショーの一部だ。園内で流れてるメロディーが風に乗って運んでいるのは、ばいばいの音じゃない。新しいショーの始まりを告げる音だった。ねえ、おじいちゃん。おじいちゃんは知ってたかな。朝も昼も・・・・・・夕暮れも夜も、いつだってショーは始まりの合図しか出さないんだってこと。皆がいたから、あたしは知ることができたんだ。

    「えむ?空がどうかしたの?」
    「えーとね、お星さまが綺麗だなあって思って見てたんだ」

    類くんお手製の舞台装置をそっと鞄に詰めながら、寧々ちゃんはあたしと目を合わせた。穂波ちゃんの目と違う、だけど安心できる目だ。星?て小さく呟きながら、ふいっと空に目を向ける寧々ちゃんに合わせるように、あたしもまた空を見上げた。まだ見えないけど、確かにそこにあるお星さま。フェニックスワンダーランドをいつも見守っていてくれて、時にはきらきらと輝いてショーを作り上げる仲間になってくれた。

    「星が見えるにはまだちょっと早いんじゃないか?オレには見えんぞ。類は見えるか?」
    「残念ながら。僕より司くんの方が視力は良さそうだし、キミが見えないなら僕にも見えないかな。ネネロボなら」
    「あーっ!ごめんなさい!違うの!違くないけど、違くて!えーと、えーと」

    おでこに手を翳して、むむーって目を細めながら空を見上げる司くんと類くんの会話を聞いて、あたしは慌てて謝った。まだ見えないお星さまを一緒に見ながら寧々ちゃんに説明すればいいかなーって思っていたのに、話がとんとんって進んでいってることにあわあわした。

    「何をそんなに慌てているのかわからんが、とりあえず落ち着け、えむ!吸ってー、吐いてー。すうーっ、はぁーっ」
    「すうーっ!!はあああぁっ!!げほっ、ごほっ」
    「いや、全力で深呼吸してどうするの。ほら、えむ。大丈夫だから」
    「ん、んっ」
    「ダイジョウブデスカ、エム」
    「だ、だいじょうぶー」

    息を吐き出しすぎて噎せちゃったあたしの背中を寧々ちゃんがやさしくさすってくれた。息が落ち着いてきた頃に、穂波ちゃんとお話したお昼に見えるお星さまの話をした。目には見えないけど、お昼にもお星さまはあること。空の明るさよりも、もっと明るいお星さまは見えること。お話の途中で司くん以外の皆が司くんを見始めて、ん?てなった。どうしたんだろう。

    「未来のスターとかいつも言ってるからかな。今の話を聞いて何故か司のことが浮かんじゃった。司がもし星だったら昼でもすごく輝きを放ってそうだよね。とか、思っちゃった。昼だけじゃなく夜も眩しそうっていうか」
    「おや。奇遇だね、寧々。僕も同じことを思っていたよ」
    「む?オレがもし星だったらの話か。ああ、もちろん!朝も!昼も!夜も!24時間休みなく輝きを放ち続けてやるぞ!!」
    「司くんが、お星さま?」

    司くんがもしお星さまだったら。
    目が覚めた時に窓を覆ってるカーテンをすり抜けて、部屋の中にあったかい光を届けてくれそう。
    玄関を出た時に、いってきますって言ったらきらきらの光をもっと強くしていってらっしゃいって言ってくれそう。きらきら眩しいのにあったかくて、安心できる。そんなお星さまになりそうだなあ。

    「司くんがお星さまだったらお昼にも見えるし、時間的には夜なのにお昼だと勘違いしちゃいそうだよね」
    「ねえ、待って。えむの中の司、どんだけ輝いてるの。夜なのに眩しそうとは言ったけど」
    「えーと、ビカビカー!てして、チュドーン!!って感じ!!」
    「おやおや。それは星というより、もはや轟のようだね」
    「轟いてどうするの!て、司?黙っちゃってどうしたの」

    寧々ちゃんの声に気が付いて、司くんを見つめた。さっきまで元気にお話していたのに、司くんは何かを考え込むように顎に指をちょんっと添えて斜め下を見ていた。時々、「星、ほし・・・・・・」とぽつりぽつりと呟いて、うーんともやもやした声を出していた。

    「司くん、何か星について気になることでもあるのかい?」
    「星について気になる、というより。なんだったか」
    「司くん?」

    あたしの声に体が自然に反応したのか、顔を上げた司くんの目とあたしの目がぱちりと合わさった。司くんの頭の上に電球マークがぴこん!て見えた気がした。お目目をおっきく見開いて、いつもの司くんらしいおっきな声であたしの名前を呼んだ。元々そんなに距離は離れていなかったけど、なあにー?と言いながらパタパタと司くんの前に走っていく。

    「思い出したぞ。えむ。お前、確か前に星の世界のショーをしてみたいと言っていただろう」
    「ほえ?言ったっけ?」

    次にやるショーは何にしようか、ってみんなで意見を出し合った時にもしかしたら言ったかもしれない。いつ言ったかは覚えてないけど。あたしの横で類くんと寧々ちゃん、ネネロボちゃん達はあたしがいつ星の世界のショーをしてみたいって言ってたかを話してるみたいだった。その声に司くんは、ああすまんって謝る。司くんが言うには、類くん達がいない時に出た話だったみたい。

    「まあ、そういうのって言った本人より言われた側の方が覚えてるものだしね。星の世界のショー、か。わたしもやってみたいかも」
    「ネネニドウイシマス」

    寧々ちゃんとネネロボちゃんもやってみたいって思ってくれるの?星の世界のショーって聞いて、あたしはやってみたいって思った。あたしから言い出したことみたいだから、そう思うのも当たり前かもしれないけど。寧々ちゃんとネネロボちゃんも同じ気持ちなことに、ほわほわーって嬉しくなった。

    「せっかくなら昼と夜の両方で公演をしてみたいね。昼は僕達、ワンダーランズ×ショウタイムがショーをして、夜はフェニックスワンダーランド全体を使ってショーをするんだ」

    類くんの中ではもう、どんな演出にするか考えてるみたいだった。一分経つか経たないうちに、類くんの頭の中ではシュバババー!って映像が流れているみたいだった。ぴょんぴょんって弾んでる声からもわかる。類くんも、同じ気持ちだ。ほわほわーって嬉しくなる。

    「昼にいつも星が見えるわけではない、だが見える日もある。逆に夜は満点の星空、というのを表現するわけだな」
    「そういうこと、っと。この調子だと夜まで話し込んでしまいそうだね。話の続きはまた今度にしようか」
    「え。類から話をやめるなんて珍しい」
    「帰って早速、準備しないと」
    「新しい装置を作る前に先にやることが色々あると思うんだけど」
    「善は急げというからな」
    「座長もこう言っているからねえ」

    もし類くんが言ってたことが本当に叶うとしても、次の公演は無理かもしれない。ワンダーステージだけじゃない。フェニックスワンダーランド全体を巻き込んだショーになるから。でも、前とは違う。時間がいくらあってもできないって諦める言葉は浮かんでこない。お兄ちゃんも、お父さんも、櫻子ちゃんも、フェニックスワンダーランドが大好きなみんなの気持ちがひとつになっている今なら、ちょっと時間は掛かるかも知れないけどできちゃうかもって思うんだ。わたしも大好きだよーってお姉ちゃんの顔がぽんって浮かんでふへへって笑いが出た。

    「話を進めてしまったが、良かったか?」
    「うん、大丈夫。あ、大丈夫じゃなくて、ありがとうの気持ちが大きいかも」

    あたしより大きな司くんの手を両方ぎゅっと握って、もう一回、ありがとうって伝えた。あたしが覚えていないあたしの言葉を、頭の端っこの方で記憶しててそれをこうして思い出してくれた。どうしてかな。それがとっても嬉しくて、ほわほわーってするのに、寧々ちゃん達には感じなかったものが胸の辺りでぐるぐるしてる。どきどきって音が、聞こえてくる。あたしの心臓の音、どうしてこんなにおっきく聞こえるんだろう。それに、司くん大好きって言葉が頭の中でかけっこしてる。司くん大好きっていつも思ってるけど、いつもと違う感覚がする。わかんない、わかんない。でも、言いたい。伝えたい。口に、したい。好きって、言いたい。

    「えむ?どうした?」

    大好きな司くんのやさしい声に、もうダメだって思った。口から、出ちゃ、う。

    「うわーん!司くん大好きって気持ちがぶわわわあって溢れて止まらないよー!!司くん、好きー!!大好きー!!」
    「(待って待って待って!!さっきから、わたし達は何を見せられているの!えむのあれって告白だよね、そうだよね?)」
    「(ふふっ。夕焼けをバックに告白なんて、青春そのものじゃないか。さあ、寧々、ネネロボ。僕達は帰ろうか)」
    「(ごめん、腰抜けた。連れて行って)」
    「(ネネ・・・・・・)」

    いつの間にか類くん達がいなくなっていたことに気が付かないまま、あたしは司くんにどっかーん!て溢れる気持ちをぶつけていた。

    「えむ、落ち着け!!!!」
    「落ち着いてるもん!でもでも、司くんいっぱいすきー!て気持ちがね、口からぶわわわああって溢れて止まらないだけだもん!!!!」
    「どわああああ!!!???」

    司くんはあたしがぽんぽん口から出る言葉を聞く度に、機関車がしゅぽーっ!!て煙を吐くみたいにボンッ、ボンッ!と音を立てながらお顔が真っ赤になっていった。あ、違う。そんな音が聞こえると思っちゃうほどお顔を真っ赤にしてるんだ。ほえ~、司くんて器用さんだ。

    「ほあ~、うん。満足した~!!司くん、明日もよろしくね!」
    「何をよろしくされるんだ?!?」
    「ふえ?えっとね」
    「やっぱり言わんでいい!!!!」
    「ええ~、なんでぇ~」

    あれ、なんだろう。あたしの中に、たくさんのお星さまがふわふわ広がっていく感覚がした。あったかくてほわほわして、それになんだかちょっと・・・・・・あれ、なんでだろう。ほっぺたがぽわぽわ熱くなってきちゃった。う~ん?



    学校に行って穂波ちゃんにこの間あったことをお話したら、あたしの手をぎゅうっと握ってにこにこ笑顔で「恋って素敵だね、えむちゃん!」って言われた。恋? 星の世界のショーと司くんにたくさん大好きって言ったお話をしただけなのにな。よくわからないけど、穂波ちゃんがほわほわしあわせ~なお顔をしているからあたしも嬉しい!だからあたしは心の思うまま、にっこにこの笑顔を穂波ちゃんに向けた。今日も一日、わんだほいな日になりそう!!


    おしまい
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