⚠暗い⚠ 花→(無意識)洋 玄関を開けると奥から微かなカチカチという音がして、頭痛がした。皺が寄った眉間を抑えながら靴を脱ぎ、カバンを置いてふすまを開ける。
「ただいま」
「……あっ」
「買ってきたんかコレ」
取り上げたカッターの刃が汚れていた。足元でくずおれている彼女の細腕には幾つもの傷と跡がある。痛いだろうに。何度言ってもやめないからハサミもカッターも捨てて、包丁を仕舞っている棚にはダイヤルキーを付けた。その番号が記念日でも誕生日でもないと知った彼女は荒れた。なんと言って宥めたらいいのか分からなくて、その時はただ蹴られるのに耐えた。痛みは大したものじゃないし満足するまで蹴らせたらそのうち泣き崩れるから抱きしめてやれば可哀想なほど謝るからどうにも出来ない。
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