学パロ「…ちわ、」
『機嫌悪いん?珍しいな』
「お腹空いたってかまた水上隣?」
『ウケる呼んどるやろ』
「呼んでないよ…顔見飽きたし」
『うげぇ…前の子私より背低いし寝れないじゃん』
自分の腰ほどある髪の毛を指にくるくる絡めながら憎まれ口を叩いているのは俺の隣に座る朝比奈蒼依。私は目立ちたくないと言いながら容姿と人当たりのいい性格で周りにはいつも人がおってこうやって隣の席でない限りは仲良くなれへんやろな…と思いつつ不健康なくらい白い肌にくるんと上を向いてるまつげたまにしまい忘れてる八重歯に口もとのホクロ、作り物なんかと思うくらい整った横顔に今日も見惚れる。
彼女の言うとおり見飽きるくらい席は隣になっている。詳しく言うと隣になるように仕組んどるんやけどこの鈍感女はまた隣になったのか、と毎回疑うことを知らないらしい。
一目惚れではないが彼女が隣の席で俺の話で整った顔をくしゃっとして笑う姿や、小さな口で一生懸命言葉を紡ぎながらコロコロと表情を変える姿にいつの間にか惚れていた。
容姿は完璧やけどお世辞にも中身はいいとは言えないくらいめんどくさがり屋な彼女の姿が可愛いなんて思うくらいやし相当惚れとるんやななんて思いながら今日も何もないかのように隣に座る
生憎彼女は彼氏も好きな相手もいないらしく彼女の好きなオムライスを食べるのを口実によく放課後にデートには行くけど彼女にそのつもりがないから進展がなく外堀から埋めることにした
外堀を埋められてることも気付かない彼女はいつもみたいに笑いかけて来て
「水上〜コブハクチョウの求愛行動って見つめるらしい」
俺の気も知らんで突拍子もないことを言うのはいつものことで最近は動物の変な雑学にハマっとるからか嬉しそうにすぐ報告をして来る
『よくハクチョウハート型になっとるもんな』
「…」
『ちゃうん?』
「そなの?」
『知らないんかい』
「知らないよ」
んー…相変わらず彼女は何考えてるかわからんけどにこにこ話しかけてくる姿を見れるのは隣の席の特権でその顔が見たくてわざと話を続けるようにしてる
『話変わるけどあおいちゃん』
「はぁい?水上芯切らした1本くれんかなんか奢る」
これは好都合や…クラスメイトから聞いたゴールデンウイーク中の三門市の祭りに誘ってみる
『奢らんでええからゴールデンウイーク中遊ばん?』
「いつ?」
彼女はいつもインドア派で外に出たがらないのに食いつきがいいがいい
『2日か3日?』
「私も実は水上と行きたいというか付き合ってほしい場所あってさ」
『ええけど両方空いとるし2日とも行く二人で』
「水上空いてるんじゃなくてどこも行く気なかったでしょ」
『そうそう…ってあるわ失礼なやつやな』
「予定あるのに2日と3日休まなくて平気?」
自分もゴールデンウイーク中は友だちと出かけるって言っとったくせに人の心配をする彼女の方を向きながら彼女の性格上断ることはないしストレートに言ってみる
『2日三門市の祭りあるんやろ?三門にきて初めて行こうかと思うんやけど案内してくれん?』
「…水上連れてきたかったのがさ丁度お祭りなんだよね」
なんでかわからんけど彼女も祭りに誘ってくれようとしてたらしい
「水上こっち来てからお祭りとか訓練とかで行けてないし、高校生終わっちゃったら忙しくなるだろうしせっかくなら楽しいことしたいかなって」
好意がそこまでなくてもそんなことまで思ってあげられる彼女のお人好しさにはほんまに敵わんなって思うの同時に彼女の特別扱いは俺だけやないことに嫌気が差して少しからかった
『あおいちゃんは誰にでもそうやって特別扱いするん?』
ちょっと魔が差して彼女の反応が見たかっただけやった。まさかカウンターで返ってくると思ってなかった
彼女はいつもは不健康なくらい白いほっぺたが赤くなって
「…水上だけですけど、」
なんて眉毛を困ったように下がって菖蒲色でビー玉みたいな目がこっちをまっすぐ見てて、やっぱこいつには敵わん…