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    ルージュ、エンヴィー、マイガール

    #お題箱
    themeBox
    #ドルあん
    dollarBill

    この習慣が始まったのはいつからだったっけ。


    その日は珍しくスタジオにいたのはアタシだけで、大きな鏡台を独り占めして流行りのメイクを試していた。

    (あら?メイクさんにもらった新作、なかなかいいかも……プチプラなのに結構やるわね……)

    思わぬ掘り出し物に段々心が浮き足立つのが分かる。自分を磨けば磨くほど、世界もどんどん輝き出す感覚がなんとも言えず好きだ。
    ふと、扉の向こうから聞こえるコツコツコツと規則的に響く足音に気付く。かと思うと少し間があいて、まるでステップを踏むように不規則なものに変わる。

    「どなたかご用かしら?泉ちゃんも王様も今はいないわよォ」

    躊躇いを見透かして、そう声をかけるとおずおずと顔を覗かせたのはあんずちゃん。

    「まぁあんずちゃんいらっしゃい!どうしたのォ?」
    「お願いがあって……実はね、校外のお仕事でちゃんとした会議に出ることが段々増えてきて、流石に少しお化粧した方がいいかな、と思って色々見てみたんだけどさっぱり分からなくて……お姉ちゃんなら相談に乗ってくれるかなって……」

    頼めない?と眉尻を下げて困ったように笑うのを見たら断れなくて、その時から月に1回、一緒にコスメを見に行くようになった。
    「お姉ちゃんが選んで……」と、慣れない様子が少し可笑かったけれど、最近ではたどたどしかったメイクの腕前も迷いがないものになってきた。
    自分がチョイスしたもので目の前の女の子がどんどん可愛くなっていくのはかなり心地よくて、誇らしいような、見せびらかしたいような、そんな気持ちになった。


    「あ、お姉ちゃん!」

    とびきりの笑顔であの子がこちらに寄ってくる。
    「あんずちゃん、こんなところで奇遇ね!今月はいつコスメ見に行く?デパコス、色々調べたわよぉ、ってあら?あんずちゃん、いつもとリップ違う?」
    「あ、やっぱりお姉ちゃんにはバレちゃった」

    えへへ、と頬をかいて笑う。分からないはずがない。彼女がアタシに聞かずにコスメを買うことなんて、今まで1度もなかった。それも成長の内かしら、と思いつつなんだかモヤモヤするのも確かで。

    「それ、どうしたの?」

    極めてクールを装ったつもりだったけど、少しわざとらしいセリフに我ながら驚く。

    「この前共演したアイドルが、『プロデューサーにはとてもお世話になったから』ってくれたの。どうかな、変じゃない?」

    その瞬間、自分の中で何かが音を立てて崩れた。
    あぁ、嫌だ。こんな気持ち。こんな醜い感情。抱きたくない。バカバカしい。でも抱かずにはいられない。
    ESで働き始めて初めてボーナスが出たから、自分へのご褒美にデパコスのアイシャドウを買ってみたい、と言っていた。誰よりも似合う、世界で1番綺麗な貴女になれる、そんなのを買って欲しいから。たくさんの資料をかき集めていた。けどそんなのもうどうだっていい。

    「あんずちゃん、直近のオフはいつ?」
    「え……今日この後はもう仕事ないけど……どうして?」

    声色にこもった仄かな炎を感じ取ったのか、戸惑いの色が浮かぶ瞳には気付かないふりをした。

    「そんなのよりもっと似合うリップ、アタシが買ってあげる。」

    余裕がないアタシなんてらしくないかしら。少しダサいかも。でも貴女の隣から離れたくなくて。

    「あんずちゃんを1番よく分かってるのはアタシよォ、あんずちゃんをとびきり可愛く出来るのもアタシだけ!」

    そう言ってウィンクを1つ飛ばした。
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    Leriz__

    DONEルージュ、エンヴィー、マイガールこの習慣が始まったのはいつからだったっけ。


    その日は珍しくスタジオにいたのはアタシだけで、大きな鏡台を独り占めして流行りのメイクを試していた。

    (あら?メイクさんにもらった新作、なかなかいいかも……プチプラなのに結構やるわね……)

    思わぬ掘り出し物に段々心が浮き足立つのが分かる。自分を磨けば磨くほど、世界もどんどん輝き出す感覚がなんとも言えず好きだ。
    ふと、扉の向こうから聞こえるコツコツコツと規則的に響く足音に気付く。かと思うと少し間があいて、まるでステップを踏むように不規則なものに変わる。

    「どなたかご用かしら?泉ちゃんも王様も今はいないわよォ」

    躊躇いを見透かして、そう声をかけるとおずおずと顔を覗かせたのはあんずちゃん。

    「まぁあんずちゃんいらっしゃい!どうしたのォ?」
    「お願いがあって……実はね、校外のお仕事でちゃんとした会議に出ることが段々増えてきて、流石に少しお化粧した方がいいかな、と思って色々見てみたんだけどさっぱり分からなくて……お姉ちゃんなら相談に乗ってくれるかなって……」

    頼めない?と眉尻を下げて困ったように笑うのを見たら断れなくて、その時から月に1 1434

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