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    ザブソグル松尾

    @SUKIYAgaUMAI

    まだ助かる……
    まだ助かる……
    マダガスカルソ〜レィッ‼️‼️‼️

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    ザブソグル松尾

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    女モブ視点
    女モブの流川に寄せる好意と敵意を接種するための小話。何言ってるんですかね〜
    流花がほとんど登場しない
    正気か?
    正気じゃないです

    #流花
    flowering

    無題 流川楓。口の中で呟いた、るかわかえで。流れる川に、楓。誕生日は1月1日。流川くんについて知ってることは色々ある。彼は私のことを知らないだろうけど。
     斜め前のボサッとした黒髪を見た。机に突っ伏して静かに寝ている。先生は気付いてるけど怒らない。このまま誰にも邪魔されずに眠り続けて、帰りのHRが終わったらムクリと起きるのだろう。このクラスの中で流川くんは一歩離れたところにいる。掴みどころのない性格と、どうしても目を惹く美貌。その他大勢に紛れた私は、その他大勢と同じく流川くんを好きになった。

    「水戸くんって意外と真面目だ」
    「一番言われたくないかも!」
     なんで?と首を傾げると水戸くんは苦笑いをした。
    「ダセェじゃん」
     ダサい?掃除をサボらずにやるのが?水戸くんと私以外は談笑に夢中で手を動かさない。それに腹が立ったわけじゃないけど、水戸くんの好感度が上がったってだけ。
    「そりゃ俺だってサボりたいけど、そしたら1人になるでしょ?」
    「一人になるって……、私のこと?気にしなくていいのに」
    「俺は気にすんの」
     水戸くんは意外と真面目で、そして優しいようだった。流川くんと出会わなければ、私は水戸くんみたいな人に恋したんじゃないかな。チラ、と横目で教室前の廊下を見る。流川くんはモップの柄を両手に持ち、壁に凭れて眠っていた。
    「好きだねぇ」
    「や、やめて……」
    「照れちゃって」
     ときどき、こうして私をからかっては微笑む。素敵な人だと思う。なんで水戸くんじゃないんだろう。どうして私は流川くんに心の大事な部分を捕えられているのかな。
    「今日も練習見に行くの?」
    「うん、そのつもり」
    「そっかぁ。今日は気付いてもらえるといいね」
    「気付かれなくていいよお」
    「えー?なんで?」
     なんで。ぎゅっとほうきを握る手に力が入った。気付かれたとて、何も無いし。そもそも流川くんとどうにかなりたいとか、そういうのも無いし。私と流川くんが一対一で、直接的なやり取りをする機会があったとしたら、きっとそのときは素っ気ない態度をとられるだけだ。
    「見てるだけで満足だから」
    「へぇ……。恋心って難しいね、みーんな同じようなこと言う」
     少しだけ悪意の滲んだ言葉に私は苦笑を浮かべた。





     少し遠いところから水戸くんに手を振られる。振りかえすと微笑んだ。そのあとすぐに彼の視線は違う方へ向く。私は流川くんを見るために体育館へ行き、水戸くんは友達の桜木くんを見るために体育館へ行く。桜木くん、赤髪の坊主頭で、それはそれは目立つ。学校内の有名人だ。最初は和光中から来た不良として有名だった。現在はバスケ部の問題児として有名だ。3年の宮城リョータ先輩も問題児と言われていたはずだけど、去年の夏からキャプテンになった。指導がとても厳しくて、よく怒鳴っている。宮城先輩と桜木くんの怒鳴り声は体育館中によく響く。桜木くんは流川くんによく怒鳴る。
    「ア゙ァ!?」
     また怒ってる。それを見た水戸くんは周りの友達と楽しそうにはしゃいだ。桜木くんと流川くんの間にはピリピリした空気が流れて、見てるだけの私まで緊張する。はしゃげるの、すごいな。私は殴り合いの喧嘩が始まってしまうんじゃないかってビクビクしてるのに。
    「お前今なんつった」
    「ヘ タ ク ソ」
     グルル……と唸り声のような音が聞こえて辺りを見渡した。一周ぐるりと見渡して気付いた。桜木くんが出してる唸り声だ。
    「褒めるということを知らんのかテメーは」
    「褒めるたって……、褒めるところがなきゃできねー」
    「ブン殴る!」
    「花道ィ!!喧嘩すんなっつっただろ!!」

     結局殴り合いになって、宮城先輩が2人に拳骨を落とすまでそれは続いた。ハラハラしながらそれを見ているうちに雨が降り出した。ため息をつく。傘なんて持ってきてない。雨音がどんどん大きくなっていき、最終的には下校を促す放送が流れた。このままだと大雨警報が発令されてしまうらしい。
     このまま進めばずぶ濡れになる。雨がもっと酷くなる前に早く帰らなければいけないとは思うものの、一歩がなかなか踏み出せなかった。正面玄関に立って外をただ眺めている。そのとき背後から声を掛けられた。
    「おい」
     聞き覚えがある声だ。まさか私に声を掛けたわけじゃあるまい。おい、と再び声が掛かった。信じられないけれど、一応振り返ってみる。
    「傘、ねーの?」
     心臓が飛び跳ねた。流川くんだ。紛れもなく、流川くんだ。体育館の隅から見つめていた人が、今私の目の前にいる。私に話しかけてる。
    「え゙!?」
     可愛くない声が出て、口を手で抑えた。
    「ないんだろ、貸す。いつか返してくれればいー」
     流川くんは両手に傘を持っていて、その片方を私に差し出した。おずおずと口元から手を外してその傘を握る。そうした途端流川くんは踵を返して学校内へ戻っていった。流川くんが私に傘を貸してくれた。なぜか2本持ってた。ありがとうって、言えなかった。
    「嘘だ……」
     手元の傘を見る。学校指定の紺色の傘。
    「やばいやばい……」
     体が熱くて、溶けそうだ。

     王子様って、流川くんのための言葉だ。じゃあお姫様は私?きゃあ、と声が出た。布団の中でのたうち回る。いやいや、分かってるって。私はお姫様じゃない。流川くんが手をとる相手が私じゃないって分かってる。でも、でもですよ、今日の傘は私のためだったじゃん、そうじゃん!流川くんが私を特別扱いしてくれた……。私に対して特別優しくしてくれた……。ぎゃあ、と太い声が出た。一本骨が折れた傘、使えれば見た目は気にしていなさそうな流川くんらしい。





     傘を貸してもらい有頂天になった私が地獄の底まで突き落とされるまで、そう時間はかからなかった。三者面談期間に入ったため人が少なくなった廊下を歩いているときだった。日本史の先生に頼まれて社会科準備室に向かっていると、その途中にある空き教室で人影を見た。こんなところでなにしてるんだろう。ほんの少しの好奇心でドアの隙間からふと覗いてしまった。
     鮮明に映し出されるそれは目を背けたくなる光景だった。流川くんと桜木くんがキスしてる。赤い舌が見え隠れしていた。桜木くんは眉間に皺を寄せて、目を強く閉じている。流川くんはその様子をじっと見ながら桜木くんの舌を吸う。見たくないのに、舌を絡めるその口元を凝視してしまう。聞きたくないのに、微かに聞こえる水音に耳を澄ましてしまう。頭はフル回転してすべてを記憶しようとしてる。逃げ出したいのに足が動かない。呼吸が苦しくなった桜木くんが流川くんの胸を叩き、ようやく2人は離れた。2人の姿が見えなくなるまで私はその場を動けなかった。

     走って、走って、なにかにぶつかった。ごめんなさいと小さな声が出た。
    「いや、別に気にしてねーけど……、なんかあった?」
     ひでー顔。そう言われてはじめて相手の顔を見る。水戸くんだった。頬に血が滲んでいる。それを凝視していたら水戸くんは慌てて袖口で顔を擦った。
    「し、失恋して、今……」
    「失恋?あ、流川?」
     言いたいけど言えなくて口を噤む。いくら桜木くんと仲が良いとはいっても、桜木くんと流川くんの関係を知っているかは分からない。
    「そっか、見たのか」
    「知ってるんだ」
    「そりゃね、ダチだから」
     虚しくて腹が立つ。私は何も知らなかった。水戸くんは知ってるのに教えてくれなかった!私が流川くんを好きだって知ってたくせに、なんにも……。
    「校内では手出すなって注意しといたのにな。アイツら何してた?セックス?」
    「……キスしてた」
    「ふーん、それだけか」
    「水戸くん」
    「ん?」
    「ついてきて」
     水戸くんは私の2歩後ろを歩く。教室に入って自分のロッカーへ向かった。そこに置いてあるのは1本の傘。
    「これを流川くんに返してくれないかな」
    「流川に?」
     ずっと返せずにいた。私と流川くんをつなぐものはこれしかなかったから。この傘に縋る他なかった。
    「あれ……、これって花道のじゃん」
     水戸くんは教室内で傘を広げた。指差したのは折れた骨のところ。
    「……そうなんだ」
    「流川に借りたの?」
    「うん。でも花道くんのなら、花道くんに返しておいてほしい」
    「分かった」
     流川くんは私に傘を渡してまで、傘が1本しかない状況を作り出したかったんだ。沸騰しているかのように熱かった脳が冷えていく。相合い傘なんて、随分かわいらしいことをするんだな。
    「失望した?」
    「え?」
    「2人が付き合ってることを知った奴はみーんな失望したって怒り出すからさ」
     流川くんと桜木くんの関係が誰にも知られていないように見えるのは、水戸くんが口止めしているからだと理解した。
    「……失望したというよりは、」
    「うん」
    「きらいになった」
    「アハハ!」
     大声をあげて爽やかに笑った。水戸くんと会話したのはそれが最後。





     連日報道されているのは、流川選手と桜木選手の結婚。夫にもそれを話題にされて顔が引き攣った。会見の様子がテレビで流れている。今すぐリモコンを手に取って電源を切りたかった。
    「高校で出会ったんだって!」
    「そうなんだ」
    「なんていう高校だったかな……。ショ、ショウ……「湘北」
     傘を差し出されて、震える手で受け取ったことをおぼえている。忘れられるはずがなかった。流川くんに恋していた日々はこれまでの人生の中でも五本指に入るくらい印象的だ。後ろから見る流川くんの姿に心を揺さぶられた。大体は突っ伏して寝ていたけど、それを見るだけでも胸が高鳴った。見てるだけで満足なんて水戸くんはそう言ったけれど、心の奥では流川くんとどうにかなりたかったんだと思う。じゃなきゃ今こんな憎悪と執着を抱えてテレビの画面を睨みつけたりはしない。
     どうしようもない。生まれ直すしかない。男の子に生まれたらいい?バスケをはじめたらいい?流川くんに振り向いてもらえるようなバスケができたらいい?思わずスリッパの裏を床に擦り付けた。そんなの桜木花道そのものに生まれ変わるしかないじゃないか。仮にそれができたとして、桜木くんの中身が私だったら意味ない。中身も彼じゃなきゃ。身長は流川くんより少し高くて、体力も流川くんより少しある。バスケの経験や技術は流川くんに負けていて、だけれど途轍もない闘争心を燃やしていた。ただがむしゃらに、勝とうとしていた。
     テレビカメラが2人の手にピントを合わせる。画面に映る銀色のリングがひどく魅力的に見えた。私の左手にも似たようなものがあるのに、桜木くんが付けているものが欲しい。流川くんの特別は桜木くんで、私は何にもなれない。どうしても、なれない。流川くんは王子様じゃないし、桜木くんもお姫様じゃない。
    「あーあ」
     神様は流川くんと桜木くんを一緒に作ったのだ。一つ一つの工程で、2人を見比べながら作ったのだ。だからすべてが噛み合う。大きい体に大きい手、よく絡むようにつくられてる。互いに馴染むようにつくられてる。それがとてもとてもうらやましくて、とてもとてもきもちがわるい。
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    ザブソグル松尾

    DOODLE桜木へ、誕生日おめでとう、めで鯛、愛でたい、蝶のように花のようにかわいがりたい。4月なのでマダガスカルです。当日に完成させたかった〜

    全然流花してない2人と、2人の周りにいる湘北バスケ部の皆さんの話。
    無題、ジェダイ ガードレールの裏側へ立てかけるようにして置かれたロードバイクをぼんやりと見ていた。流川はその横に立ち、ひどく退屈そうにしている。俺が口を開けない間、時折眠たそうに目を擦って、ただただ俺の返事を待っている。流川はわざわざ自宅から離れた俺の住む団地へ自転車を走らせてきた。日が暮れてしまう前にさっさと話を終わらせて、この眠たそうな男を帰宅させたほうがいい。そんなこと分かってはいるけど、この複雑な感情をどう言えばいいかが思い付かない。

     流川がアメリカへ行く。年が明けたら、すぐ。

     安西先生はどうして流川の渡米を許したのだろう。流川が日本一を目指してひたすらに努力してたのは知ってる。それは日本一になることが安西先生が定めた大前提だったからだ。インターハイでは全国優勝できず、次にある冬の選抜こそは優勝した上でMVPになると意気込んでいたはずだった。冬の選抜は始まってすらいない。
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