対話「のぅ、少し聞きたいんじゃが」
ゲゲ郎と名付けられた男は、眠る男の周りに立つ者たちに声をかけた。
影でしかないそれらは、ゆらりと揺れると一つの影を残してすぅっと消える。
怒りでも悲しみでもない感情が、影から漂う。
「なに、何か企もうというわけではない。ただ、知りたいんじゃよ、そこで自らの夢に苦しむ男の事を」
一つの影はゆらゆらとゲゲ郎の前に立つと、朧げに姿を現した。
酷く怪我を負った若い男の姿は、声こそ聞こえないもののゲゲ郎に何かを伝える。
「ふむ、お主らはこの水木という男の仲間だったのか。汽車で会うた時も悪意は無いから不思議じゃったが、合点がいった」
手を顎に置いたゲゲ郎は、ふと思案する。
「そやつに生きていてほしいと、自分たちが死んでなおそう思うのか…人間とは不思議じゃのう」
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