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    I__B_gno

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    某12/14の対談でわかったアレソレを昇華したかっただけのレラ未満の何か。1.8時間ぐらいでバーッと書いたのでおかしいとこころもあるかも。
    革命中・いろいろ捏造。

    不可解 例えば、そうだ。普段は僕の隣で所在なげにしているのに、いざ誰かが敵意を向けると剣呑な空気を惜しまないところ。その相手が去れば、途端に安心した顔で僕を見てくるところ。虫も殺せないような顔をしている割に、僕が止めない限り相手を攻撃し続けるようなところ。
     今回の作戦で、無事に僕を守って拠点まで戻ってきたレムナンを見て、僕はそんな納得ともつかないような感情を抱いた。主要ポートでの通信が政府に盗聴される可能性があるからといって、直接対面するのが一番セキュリティリスクの低い方法だ、なんて、まるで時代が逆行したかのようだ。わざわざ出向いてまで行った会合の成果は上々だったのが幸いだ。まだこの組織は小さい。だからこそ、着実な成果を積んでいかなくてはならない。さすがに僕でも、肩から強張りが解けていくのがわかる。しかし、目の前の男はそれよりも気が抜けているように見えた。
    「レムナン、いくらなんでも気を抜き過ぎだと思うけど? 別にここも安全が保障されているわけでもないンだからね」
     拠点だと政府にバレていない、というだけの小さな家屋の1つだ。もし僕等が国に対して企てを持っている、と知られれば、あっという間に僕達は消されるか、それよりもっと酷い目に遭うだろう。他の数少ないメンバーは市井に紛れて住んでいるから、ここを使うのは企ての張本人たる僕と、その僕に連れられてこの船に来たレムナンだけだ。
     僕の警告がわかっているのかいないのか、レムナンはあまり表情を変えなかった。指先でぽりぽりと少しこけた頬を掻いて、小さな椅子に座る。この部屋にはこの椅子が2脚と、これまた小さな机しかない。無駄な物があっても邪魔になるからだ。
    「え、ええ……わかってますけど、でも……やっぱり、無事に戻れてよかったなって、思って」
    「ふうん」
     隣り合った、もう1つの椅子に腰掛けながら曖昧に頷きを返す。まあきっと、僕以上に気を張っていたのだろう。彼は僕のことを優先して守ろうとしているから。別段頼んだわけでもなく、自然と。先程浮かんだ昔の映像が、ふたたび脳内に映し出された。
    「本当に君は」
    「え?」
     と、そう声に出してしまったのは無意識だった。これだから音声伝達というのはやっかいだ、思考とは別に体が動いてしまうのに依存しては、今のように余計な伝達が発生することもある。やはり気が抜けているのは否定できないようだ。
     僕の声を聞き咎めた薄紫の瞳が、何ですか、と言外に尋ねてくる。どう誤魔化そうか思案したが、それも一瞬のことだった。その記憶は秘匿するようなものでもないことに気づいたからだ。ただの僕の、いわゆる思い出と呼べるかもしれない何か、でしかない。別に機密事項が含まれるようなものでもない、矮小なものだ。
    「昔の、僕の知り合いに似ているんだ。低級市民の区画に遊びに行った時にたまたま会って、せがまれたから少し勉強を教えてあげただけだった。意欲的だったし、飲み込みは悪くなかったと思うけどね、本人曰く、先天性の異常があったらしい。この国の学習方式が徐々に脳に合わなくなって、最終的には身体にまで異常を引き起こして肉塊市民に落ちたんだとか。で、それ以降、頼んでもないのに僕の回りにまとわりついてきて、そのせいで白質市民の区画まで来てしまって、周りに睨まれて怯えていた。怖いなら帰ればいいと忠告したんだけど、結局一度もそうしなかったかな。そのくせ、僕を邪険にする相手に向かっていった。無駄なことはやめろというのにこれまた聞かなくてね。まあ大して困りはしなかったけど、いささか不可解だった。その不可解さ込みで、君はよく似ているなと思ったンだ」
     ああでも、見てくれはそうでもないかな、と締める。そう、せっかくあの船の行き先を軍基地から変えさせたというのに、レムナンは僕と一緒にこの国に来てしまった。途中の星で降りていれば、今ごろは安穏に暮らせていたかもしれない。それこそ、途中で停泊した惑星ナダのように研究が盛んな星であれば、機械や擬知体に強い彼なら食い扶持もあっただろう。たまたま会った僕についてきて、反政府運動に巻き込まれて命の危険と隣り合わせに生きる、なんてこともなかったはずだ。
    「……その人は」と、その物好きな男は押し殺したような質問を吐き出した。
    「今は、どうしてるんですか」
    「知らないよ。いや、実際に確認したわけじゃないというだけで、ほぼ確信しているけどね」
     もうこの世にはいないと思うよ、と僕は続けた。
    「急に、現れなくなったからね。この国で価値を示せなかった人間がどうなるかは、君にも説明しただろう?」
     価値がないと判断された人間に、この国が用意している行先はいくつかある。だが、どれも最終的な到達地点は似たようなものだろう。それに随分と昔の話だ、他の人間と一緒に売られていたとしても、どこか遠い星に弾頭として撃ち込まれていたとしても、この宇宙のどこかで生きている、なんて絵空事を考える気もしなかった。
     そうですか、と今度は短い返事があって、しばらく沈黙が落ちる。この区域は静かだから、僕達が動かなければ、ただ2人の人間の呼吸音ぐらいしか耳に入ってこない。沈黙は嫌いではない。レムナンは僕の座る椅子の脚先を見つめている。それを横目で見ながら、いつもそのぐらいの角度で君は床を見ているな、などと他愛のない思考が浮かんだ。少し疲れているのかもしれない。この間に今後の作戦について考えを纏めでもした方が有益なはずだが、頭の中までこの部屋の空気が侵入したのか、まっさらなまま何の思考も走りはしなかった。そういえば、かの人が僕の前から姿を消したとき、僕は何を思っただろうか。辿ろうとした記憶はすぐに途切れ、しかし指先がほんの少し冷えた気がした。
    「あの」
     その頭の中に、もうずいぶんと聞き慣れた声が響いた。顔をそちらにやると、まっすぐに視線がかち合う。珍しい、と思った。この男が正面から目線を合わせることなど、今までにどれほどあっただろうか。
    「僕、は、いなくなりません、から」
    「は?」
    「ラキオさんが、不可解に思っていても、帰れって言っても……僕はどこにも行きません」
     意味はわかるが意図が見えずに、まばたきをしながら見つめ返す。ぽかんと目を開いた自分の顔がレムナンの瞳の中にある。レムナンは、僕の瞳の中にある自分の顔を見てどう思っているのだろう。
    「……そういう無駄に強情で物好きなところも、似ている気がするよ」
     肉塊市民が白質市民の居住区に入るのも、革命活動をするのも、国の意向に背いているということに変わりはない。あえてそれに自分から手を染めるような理由が、思い出の中の人にも、目の前の彼にも、あるようには思えなかった。わからないところが、似ている。だからこそ、僕は革命に加担する彼を止められなかったのかもしれない。
     物好き、と僕の言葉を鸚鵡返しにして、レムナンの顔から力が抜けたのがわかった。
    「まあ、そうなのかも、しれません。相手はラキオさんですし」
    「あン?」
     聞き捨てならない。どうしてそこで僕が出てくるのか。軽口を睨みつければ、ふふ、と小さく笑われた。それだけで、僕の名前を出した理由を説明する気もないらしい。全く、と腕を組んでさらに強く睨みつけてやる。
    「その言い様だと、まるで君にいなくなって欲しくないと僕が思っている、とでも言いたげだね。むしろ逆なンだけど?」
    「……えっ」
     僕の言い放ったそれに、レムナンの笑みは一瞬で消え失せた。がたっ、と腰かけていた椅子に音を立てさせる。その顔が蒼白になっていくのがまざまざと観察できて、胸がすいたような気分になって、自然と口角が上がった。
    「あははっ、冗談だよ! そんな相手と一緒に国に喧嘩を売るなんて馬鹿なことはしないよ。まあ、今消えられたら惜しいとは思うかな、人手もないし」
    「あ、あ……はい」
     虚を突かれたような顔をして、おずおずと椅子に座り直したのが余計に面白い。さきほどのお返しとばかりに笑い声を聞かせてやれば、「笑いすぎです」なんて文句が飛んできた。お互い様なのに何を言っているのだか。
    「さて、休憩もこれぐらいにしようか。さっきの話から、次の手を考えないといけないからね」
     不可抗力とはいえ、君を巻き添えにしておいて無責任でいるのは性に合わない。すべてが終わって、この国が変わった後にでも、さっきの君の宣言の意味を聞いてあげようじゃないか。
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    I__B_gno

    DOODLEいちゃついたレムラキが見たかったので書いたレムラキ ノマエン革命後 ざっくり書いただけなので後で手を入れるかも
    観察結果を発表します レムナンが目を開けると、自分が起床した瞬間に見るものとしては珍しい表情がそこにあった。相手はまだ寝ているようで、体をこちらに向け、長い睫毛は伏せられたまま、すうすうと寝息を立てている。ブラインドの隙間から入る光の角度を見るに、おそらく朝というにはやや遅い時刻、だろう。グリーゼの人工太陽はいつでも同じように周期を重ねている。
     昨日は何があったのだったか、とレムナンはまだ半分寝ている頭で記憶をたどる。どうも最近進めている研究が佳境らしく、きっと作業の手を止められなかった、のだろう。いつもは自分よりもかなり早く床についているのに、昨日は自分が寝室に赴くタイミングでやっと部屋から出てきて。うつらうつらと眼をこすりながらシャワー室に向かい、半分目を閉じた状態で寝室に入ってきて、まだ湯の温かさの残る体でベッドマットと毛布の隙間、自分のすぐ横に滑り込んで、完全に瞼を下ろした。「おやすみ」ぐらいは交したが、あの様子だとそれも覚えているだろうか。普段の生活リズムを守らないとパフォーマンスが落ちる、とは本人がよく言っているが、定刻になっても起きないのを見るとそれも納得できる話だった。きっと全裸で寝なかっただけマシなのだろう。こちらも、何もまとっていない状態の恋人の隣で寝るのは流石に気を使う。もっとも、疲れているところにあれこれするような趣味は自分にはない。ので、短い言葉のやりとりの後、そのまま自分も寝入って、今に至る。
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