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    pandatunamogu

    降新文をポイポイします

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    pandatunamogu

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    猫しんちゃんのツンデレ期のお話です。ツンデレですが、相変わらずれーさん大好きです。

    ##降新

    思春期だってウチのコ(猫)がイチバンかわいい3.思春期だってウチのコ(猫)がイチバンかわいい


     俺の名前は降谷零。二十五歳。
     十年前、当時住んでいたアパートの敷地内に捨てられていた黒い仔猫を拾ったのだが、その黒猫はまさかの獣人だった。
     普通の猫であれば、十年経てば大体人間の年齢に換算すると五十六ぐらいだが、獣人である新一は人の年齢と同じスピードで年を取る。
     現在人間でも難しいお年頃である十三歳。思春期まっただ中だ。
     『れしゃん』『れしゃ、らいちゅき』と家にいるあいだじゅう俺の傍から離れず、学校などで家を出なければならない時に寂しさのあまりグズグズ泣いてばかりいる新一のために作ってやった、俺をデフォルメしたようなぬいぐるみをいつも大切そうに胸に抱えていた、あの天使のような可愛い仔猫は、今や随分と流暢に言葉を話し、三度の飯より本と謎解きが好きなクールビューティーボーイに成長していた。
     この十年、俺は大学を出てから警察学校を経て、数年前に警察庁の警備局警備企画課に配属された。歴とした公安警察官になった。
     公安に配属になる直前まで住んでいたアパートを引き払い、今ではペットOKでセキュリティも万全のマンションに引っ越し、新一には書斎と部屋を与えた。それでも去年まではずっとそうしてきたように、同じ布団で寝たいと俺のベッドに潜り込んできていたのだが、さすがに思春期となるとそんな可愛いこともしてくれなくなってしまった。
     もう随分と昔から新一に対して良からぬ感情を抱いてしまっている俺としては、同じベッドでくっつかれて眠るのはなかなかに苦行だったのだが──所謂“生殺し”と言うやつだ──、それでもやっぱり、この十年間、ずっとひっついてひとつの布団で寝起きを共にしてきた心地よい習慣がある日突然失われた夜は、寂しすぎて何度も新一の部屋に忍び込んで寝顔を確認してしまった。
     一週間それを続けたらさすがに怒られ一週間の出禁に処されてしまい、それ以来、たまにしか寝顔は覗きに行っていない。

     十三歳になった新一は、あまり猫の姿になることは無くなり、たまになら猫耳としっぽを完全に隠すことも出来るようになってきた。まあ、大体三分すれば集中力が途切れてポンッと猫耳としっぽが出てきてしまうのだが。またそれが可愛くてたまらないのだが、あからさまに脂下がっていると、馬鹿にされたと勘違いされてご機嫌が斜めになってしまうので、その点もなかなかに取扱いが難しい。
     昨日一日雑務に追われて帰宅出来なかったこともあり、今日は定時きっかりに帰宅させてもらえることになり、文字どおり飛んで帰った。もう、前のように玄関先まで飛んできて「おかえにゃ、れしゃん」とぎゅうぎゅう抱きついて出迎えてくれることは無くなってしまったが、それでもクールなりに帰宅すると嬉しそうにしてくれるのが、これがまたとてつもなく可愛いのだ。
     今日も当然、いつものようにクールに、お気に入りのリビングに置かれたロングソファで寛ぎながら読書をし、チラリとこちらを一瞥してすぐに活字に視線を戻して「おかえり」とクールに迎えてくれるのだろうと予想しながらドアを開けた俺は────驚いてその場で固まった。
     何故なら思春期を迎えてから一度も出迎えてくれなかった新一が────

    「…………お、かえり」
    「た、だいま」

     玄関先で出迎えてくれたのだ。しかも! もう疾うに無くしてしまったと思っていた俺お手製のぬいぐるみを胸に抱いて!!

    「ど、どうかした? 君が出迎えてくれるなんて……っ」
    「べっ、別にそんなんじゃねぇーしっ」

     あまりの感動で思わずそう問い掛けてしまった俺に、すぐにぷいっと背を向けてスタスタと家の中に引っ込んでしまった。その背中を追うように家の中に入ると、ソファには今は懐かしいあの毛布が置かれ、よくよく見れば新一が着ているのは俺のセーターだ。さらに言えばご自慢の長いしっぽがピィンと立って喜びを表している。

    ────昨日一日帰れなかったから……寂しかったのか? それでエントランスを潜って俺がロック解除したのを察知して、玄関まで飛んで出て来てくれたのか……? ひとりきりのときにずっと抱きしめていたぬいぐるみ抱えたまま……。

     容易く想像できたその光景に、胸が破裂する勢いでときめくと共に、切なくなってしまった。抱きしめたら引っ掻かれて逃げてしまうだろうか。それでも我慢できずにソファに座ろうとしている新一を背後からふんわりと抱きしめ、「昨日帰れなくてごめん。寂しい思いさせちゃったかな」と囁くと、反応は予想外に────素直で可愛いものだったために、ウッカリ死ぬところだった。俺の腕に自分の手をそっと添えると、ポショ、と「……さびしかった……」と吐露したのだ。

    ────何ッッッッだこの可愛い生き物はっ!!

     堪らなくなった俺はそのまま腕の力を強めて目いっぱい抱きしめ、グリグリとその頬や肩口に顔を擦り付けてしまったため、ハッと我に返った新一に逃げられてしまった。勢いよく自分の部屋へと逃げ込んだ新一は、そろっと扉を再び少しだけ開けると、顔だけ覗かせて「……腹減った」とだけ告げてバタン! とドアを閉めてしまった。

    「〜〜〜っはぁぁぁぁ……ほんと……なにあの可愛いコ」

     今に本気で死んでしまう気がすると思いながらルームウェアに着替えてキッチンに立った。
     春キャベツを使ったロールキャベツができあがり、じゃがいものポタージュを添えて食卓に並べると、こちらが呼ぶ前に部屋から新一が出てきた。

    「ちょうど良かった。今呼ぼうと思ってたんだ」
    「ん」

     何だか気恥しげに自分の席に着いた新一は、何かを気にするようにチラチラとこちらを上目に窺ってくるのが可愛くて可愛くて、思わず額で食卓をかち割りそうになる衝動を鎮めるのがひと苦労だった。

    「新一? どうかした?」
    「べっ、別に……。今日はメシだけ食ってまた庁舎に戻るわけじゃねぇんだなって思っただけ! いっ、イタダキマス!」

     それだけ早口で言うとパクパクとロールキャベツを食べ始めた新一に、ギュゥンと胸の奥あたりが鳴ったような気がした。俺がスーツのままではなく、ルームウェアを着ているのを何度も確認していたのだろう。思わず破顔して俺も手を合わせつつ、口を開いた。

    「今日からまた定時に帰れることになったんだ。寂しい思いさせてごめんな?」
    「んぐっ! べ、別に俺は……っ」
    「うん、言葉を間違えたな。俺が寂しかったんだ」
    「っ!」
    「君に出来たてじゃない、作り置きのおかずを独りで食べさせてしまったことも、君が起きている時間帯に中々帰れなかったことも全部、俺が何より寂しかった」
    「〜〜っ。………………そう思うんなら、あんま社畜になんなよ。………………この家、前の家と違って広すぎて……寒いから」
    「!! ああ、そうするよ」

    ────かわいいかよ!!! ツンツン猫の突然の畳み掛けるデレは俺の心臓が保たないから勘弁してくれ……っ! いや、嬉しいけども!

     そうしてその夜。更なる心臓破裂の危機が俺を襲うことになろうとは、この時暢気にロールキャベツを食べていた俺は知る由もない。

     夕飯を食べ終え、風呂に入って何となくリビングのソファで寛いでいると、冷凍庫に新一のために常備してある高級カップアイスを両手に抱えてやってきた彼は、少しだけ間をあけてソファに座り、ずいぶんとごきげんそうにアイスのフタを開けた。可愛いなぁと横目に観察しつつ、何とはなしにつけたテレビでニュースをチェックしている封を装っていると、少しアイスがやわらかくなってきた頃合いにアイス用の猫の肉球型スプーンでサクッとアイスを掬うと、何故かこちらをチラ、チラと気にしてくる。いつもならばこちらのことなど気にもせずにパクパクと食べるクセに珍しいこともあるもんだな、と思いながら相変わらず考案お得意横目技術を駆使して様子を窺っていると、おもむろにヌ、と掬ったアイスを俺の口の前に差し出して来たではないか。こんなことはあの可愛い新一の天使の仔猫時代以来だ。

    「え……」
    「ん。ダッツ。く、食えば? 買ってきたのアンタだけど」
    「良いのか? これ、新一の好物だろう?」
    「べっ、別に要らねぇんなら──」
    「いやっ! 要る! 食べる! ありがとう!」

     気が変わってしまう前にスプーンを新一の手ごと強奪してアイスを口に入れると、カァッ、と赤面した顔を隠すように外方を向いてから俺の手を払い、スプーンをズボッと口から引き抜くと俺に背を向けアイスを食べ始めた。

    ────あ……。間接キス……。いや俺は乙女か。

     今しがた俺が食べたスプーンで頬を赤らめながらパクパクと好物のバニラアイスをパクついている新一の口許を凝視してしまい、あらぬ場所が元気になりそうで、非常に困った。

     歯を磨いて寝支度を整え、俺よりもひと足先に自室に引っ込もうとしていた新一の背に「おやすみ」と声を掛けると、何故かピタリと足を止め、意味ありげにチラリと振り返って視線を向けてきたが、その視線の意味がわからず内心首を傾げていると、ボソッと小さく「……おやすみ」と返して部屋の中に入ってしまった。いったいあの意味深な間は何だったのか疑問が残ったものの、俺も寝室に入ることにした。
     思春期に入るまで一緒に寝起きしていた名残りで、俺のベッドはダブルロングだ。いつかまた二人で眠れる日が来ればいいな、とボンヤリ考えながら布団に入ると、少しばかりして控え目に寝室のドアが開いて思わず身を起こすと、そこには自分の枕を抱えた新一が、モジモジとしながら立っていた。

    「え……ど、どうしたんだ新一……?」
    「…………」
    「……?? 新一?」
    「〜〜〜っ!」

     結局何度か口をパクパクと開閉させた後、なにも言葉にできずに勢いよくズボッと俺の隣に潜り込んできた新一は、グイグイと俺を左側に寄せてスペースを空けると、そこに持ってきた枕を置いてバフッと布団を頭まで被ると「っおやすみ!」と言って俺に背を向けて寝てしまった。

    ────……………………ああああ〜〜〜〜…………ダメだ。可愛すぎて情緒爆発しそう……。

     当然、その夜は俺のありとあらゆる部分が覚醒してしまって一睡もできなかった。



    3.思春期だってウチのコ(猫)がイチバンかわいい・完

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