晩夜、微かな雨は海棠の花に問う ◇
海棠の花に風が吹き抜けたあの年 貴方の眼差しは
太陽のように光輝いていて 私は静かに呼び覚まされる
春の光を携えたこの少年は
この世に永遠などなく 変わり続けていくことを知らない
空一面に雪が舞い降りたあの年 貴方の掌は
私の心まで温めてくれた 春が訪れたようだった
前世今生 どうして忘れられよう
「愛」という言葉がこんなにも表し難いとは知らなかった
愛する人はこの世を去って それ以来私たちは離れ離れになった
離れたまま戻ることはなく 秘めた想いは過去に置き去りにされてしまう
独りよがりな願いは儚く散って 戻らない過去に縋りながら月を仰ぎ見た
今はただ夢のような過去に思いを馳せるばかり
愛も恨みも消えては募っていく それでも歩みを止め振り返れば いつも貴方がいた
この想いが消えることはなく いつかこの命が尽きようとも 貴方を忘れることはない
この先が桃源だろうと奈落だろうと 私は貴方と共に行く
貴方が一人で遠くへ行ってしまったら 他に私を受け入れてくれる人などいないから
三千の石階は余りにも冷たく 這うように登った彼は
独りで生き 独りで死ぬのは寂しいだろうと
離れ離れになれば 縁も散り散りになるのではないかと
そんなことを考えては焦りが募り 愛する気持ちを心の奥底へ秘めてしまう
「愛」という言葉がどれほど馬鹿馬鹿しいものなのか考えたくはなかった
貴方の美しさはまるで海棠の花のようで その花が散ることはなく ただ私に深い愛を寄せた
もし貴方の魂をこの胸にしまい込めてしまえたら
そうすれば途方もない歳月も寂しくはなくなるのに
この月明かりのように輝いていた貴方の姿を心に刻んだ
天地は青く照らされる 花があれば影ができてしまうのに
愛も恨みも消えては募っていく それでも歩みを止め振り返れば いつも貴方がいた
この想いが消えることはなく いつかこの命が尽きようとも 貴方を忘れることはない
この先が桃源だろうと奈落だろうと 私は貴方と共に行く
貴方が一人で遠くへ行ってしまったら 他に私を受け入れてくれる人などいないから
愛も恨みも消えては募っていく それでも歩みを止め振り返れば いつも貴方がいた
この想いが消えることはなく いつかこの命が尽きようとも 貴方を忘れることはない
晩夜と微雨は海棠の花に問う この天地は永遠かと
貴方と肩を並べ ただ吹き抜けていく風を感じる