青の都のサプライズ 港に着いてすぐ、レノは恋人であるグール=ヴールの手を引いて仲間たちからこっそり離れた。こっそりとはいえ、いつも通り彼らには気付かれていることだろう。
「ほう、アリーチェたちが言ってた通りだな」
レノは街を仰ぎ見て満足そうに言った。陽が照っているのに素肌に触れる春の空気はひんやりとしていて心地よい。
建物も、道も、階段も。視界に入るものはなんでも青に染まっている。屋根の青は空の蒼さよりもずっと澄んで見え、たまに空と屋根の境目を見つけるのが難しいほどだった。ご丁寧に屋根や窓枠、扉までも青く塗装されており、自分まで青色に染まった気分にさせる。青の都。その名のとおりだ、とレノは思った。
この街は、最近新しくなったリゾート地だった。もともとの観光地を賢者の塔が技術提供した魔法で発展させたようだ。街中は魔法や魔道具で溢れている。街全体の青も、魔法によるものだろう。
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