思い出の紙片 午後の柔らかな日差しの下。波は穏やかで、遠くでカモメが狩りをしている声が聞こえる。魔物の気配もなく、いつも以上に快適な船上。船の背中を押す風は弱いかもしれないが、それすらも心地よく感じる。
シーターは甲板にいることが多かった。予言が降りてきたときにすぐ仲間へ伝えられるよう、舵の近くに椅子を置いて座るのが常であった。何より、仲間たちの語らいが聞こえるこの場所が好きなのだ。この眼に映らずとも、広い世界を感じることができる、シーターにとってそれが何より重要なことだった。
階段が重みのある鳴き方をした。足音から誰が来たのかを察して、そういえばしばらく振りだと思った。心がほんわりと温かくなったのは、彼のこの行動が健気にみえて仕方がないからだろう。
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