御伽噺 ディオンがテランスを庇い倒れてから一週間が経った。
その間、テランスはディオンの側を片時も離れず日々泣き暮らしながらディオンの傷を癒やし、自ら咀嚼した肉や粥を口移しで与え、夜に体温が下がれば自ら肌を露わにしディオンの体を温めた。
彼がここまで献身的にディオンを支えるのは、幼なじみである、従者である以上の感情を抱いているからであるが、この気持ちは生涯胸の奥に仕舞い込み続けていく決心でいた。
騎士団の兵長が声をかける。
「テランス。そろそろ医者が到着する。そうすればお前も少し休めるだろう」
「兵長…。いいえ…。私はディオン様のお側にいることが生きる目的…。この身を差し出してでもディオン様を治してみせます」
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