翌朝、ライオネルが少し遅れて厨房へ行くと、空気が少し変わった。
ライオネルはそれに構わず、いつも通り席に着くと静かに食事をした。
ニコレッは事前に聞いていたのだろう。ライオネルの顔の傷については何も言わなかった。
ライオネルは逆にそれが辛い。壊れ物を扱うように皆に見守られている、それがひしひしと感じられる。
自分の居場所がなくなっていくのをライオネルは感じた。
もうここを出て行くべきかもしれない。
しかし、誰も自分のことを知らない国へ行ったとして、またいずれ化けの皮が剥がれ、皆に軽蔑の目を向けられることになるだろう。
それならばいっそのこと、素の自分をさらけ出して堕ちていくほうがよいのかもしれない。
スープに匙をつけたままぼーっとしていたライオネルは、エレナが自分を呼んでいるのにしばらく気づかなかった。何度目かに「ライオネルさん」と呼ばれ、はっとしてエレナを見る。
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