愛 ふわりと風に乗って甘い香りが漂う。
今日は何処かでお祝いをしているのだろうかと我愛羅は考えた。
普段ならばまだ大量の書類と向き合っている時間帯だが、今日は不思議と仕事が片付いていきまだ暗くなっていない時間に帰路につけたのだ。
どうせならいつもこのくらいやる気に満ち溢れていたらいいと思うものの、たまたま任務が少なかったからだろうと理解している。
真っ直ぐ自宅へ帰り鍵をかけた筈の扉が開いている事に気付き「しまった」と思った次の瞬間、耳元で爆発音がして体を翻す。
「……カンクロウ?」
「だから先に連絡した方がいいって言ったんだよ」
砂をざわつかせながら視線を動かした先にいた兄と姉の姿を見て思わず我愛羅が固まった。「悪ィ」と短くカンクロウが口にしながら頭を掻く。
「折角だから家族水入らずでって思ったんだってよ」
ケラケラと楽しそうに笑うテマリと、未だ申し訳なさそうな表情を浮かべるカンクロウに手を引かれ室内へ足を進める。
最低限の家具家電しかない部屋は見事に装飾され机の上には両親の写真もあった。
「たまにはこういうのもいいじゃん」
「そう、だな」
呟いた我愛羅に本日の主役と書かれたたすきをテマリがかけてソファへ座らせる。
折角だからとワンプレートに飾られた料理をテマリが机へ並べていく。
一度間違ってしまったものをもう崩さないようにと、笑うテマリとカンクロウの瞳に確かな愛情を感じて同じ様に微笑んでから両手を合わせた。