誕生日 いつもなら誰か一人はいる執務室周辺に人の気配はなく、周囲へ意識を向けてみても気配を感じない。何故だと考えたが、特に思い当たることはなかく疑念だけが大きくなっていく。もしかするとこれから暗殺でもされるのだろうか、なんて在りし日の記憶が蘇ってくる。
「がーあら」
「……ナルト?」
名前を呼ばれたかと思えば、砂漠の方角から光が降ってきて、思わず窓の近くへと移動した。
何故気付けなかったのだろうかと思う程の人と、野外にも関わらず華やかに装飾された砂漠へ光が灯っていく光景はなんとも幻想的だ。
ドンッと大きな音がして、執務室にナルトが入ってくる。
ニカッといつものように笑うナルトを見ていると、無意識のうちにオレの口角も緩む気がして。
「みんな我愛羅を待ってるってばよ」
早く行こうと言われて首を傾げると、今日は誕生日だろうと言われる。
「誕生日……?」
おめでたいと思ったことがない日だった。
だからこそ、オレが忘れていたその日をナルトは、里のみんなは大切にしてくれたらしい。
「おめでとう」
ナルトの言葉に思わず目を丸くして、出来る限り自然に微笑むと太陽のような笑顔が返ってきた。