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    jacquard_100m

    @jacquard_100m

    アークナイツと東方(10年前の記憶)。ツイッターに上げた絵置き場。久しく描いていなかったため現在リハビリ中。
    pixiv→https://www.pixiv.net/users/73298354

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    jacquard_100m

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    エーベンホルツ君とクライデ君のはぁとふる日常ストーリー
    エーベンホルツ君が自らの過去を思い出した後、コンサートに向けて二人で頑張っている頃のお話。続くかもしれないし続かないかもしれない。

    #アークナイツ
    arkKnights
    #明日方舟
    Arknights
    #Arknights
    #クラエベ
    #エーベンホルツ
    ebenholz
    #クライデ
    clyde
    #黑键
    blackKeys
    #白垩
    chalk
    #垩键
    #二次創作
    secondaryCreation
    #短編
    short

    【クラエベ】誰かを愛するということについて(仮)とある日の昼下がり クライデの家

    「なあ、クライデ。」
    「なんですか?」
    「人を愛するとは、一体どういうことだと思う?」
    「急にどうしたんですか?」
    クライデはチェロの手入れをしていた手を止めてこちらを見る。
    「……いや、特段深い意味があるというわけではないのだが……。ツェルニーも言っていただろう。『世辞を言われ慣れている。』と。たしかに私には誰かから愛されたという記憶がないんだ。両親は私を愛してくれたかもしれないが、まだ幼かった私はそれを覚えていない。……分からないんだ、それがどういうものなのか。今の私には、理解できない。」
    「…………。」
    クライデは私の隣に腰を下ろすと、私の手を取り言った。
    「そうですね……、あなたの問いに答えるのはとても難しいです。ですが僕はこう思います。人を愛することとは、その人の全てを受け入れ、心を満たすことだと。」
    「心を満たす……」
    「はい。エーベンホルツ。今、僕の手は温かいと感じますか?」
    「あ、ああ。」
    「それなら大丈夫です。あなたは人の温もりを感じることができる。あなたはただやり方を知らないだけで、ちゃんと誰かを愛することができる人です。今まで誰かを愛したことがないのなら、これから覚えていけばいいんです。」
    クライデはそう言って微笑むと、私の肩に腕を回し、そのまま私を抱き締めた。
    「クライデ……!?」
    「ほら、こうしていると、僕の鼓動が伝わるでしょう?」
    私も恐る恐る彼の背に腕を回した。しばらくそうしていると、温かい、彼の鼓動が伝わってきた。私は幾許かの安らぎを覚え、心が満たされる感じがした。それは初めて知る感覚だった。嗚呼、これが愛されるということなのか。
    「ツェルニーさん、ハイビスカスさん、それにアフターグロー区の人々、皆があなたのことを大切に思っています。そしてもちろん僕も。エーベンホルツ。あなたはもう孤独ではありません。あなたは、皆から愛されているんですよ。」
    不意に、涙がひと筋、頬を伝い落ちた。それはひと筋、またひと筋と頬を滑り落ち、いつしか彼の肩を濡らした。
    「エーベンホルツ……?僕、何か変なことを……っ」
    「あ、いや……すまない。涙が……勝手に……、止まらないんだ……。」
    「それなら僕の肩を貸します。泣いてもいいんです。安心してください、僕はずっとあなたの傍にいますから。」
    「…………すまない……」
    張り詰めていた感情が堰を切ったように溢れ出し、私は声を押し殺して泣き続けた。クライデはそんな私を抱き寄せ、何も言わずにただ寄り添っていてくれた。


     私は自分の人生のほとんどを他人に利用され続けてきた。
     他人の善意を知らない私のような者にも、誰かを愛するなどということができるのだろうか。


    「……落ち着きましたか?」
    「ああ。……すまなかったな。君にあんな姿を見せてしまって。」
    「いえ、気にしないでください。あなたはきっと、今まで誰かに弱みを悟られることすら許されなかったのでしょう?でも少なくとも今、せめてアフターグロー区にいる間は、もっと誰かを頼ってもいいんですよ。(もっともあなたはきっと、他人に弱みを見せることを良しとしないでしょうが……。)」
    「そうだな、善処しよう。」


     もし本当にゲルトルーデの計画通りに事が運べば、コンサートが終われば、私は自由を手に入れ、ウルティカの高塔に閉じ込められることも、「塵界の音」に苦しめられることもなくなるという。しかし彼は―――クライデはどうなる?彼はコンサートで私の代わりに……。否、そんなことは断じて許されない。たとえ彼の身体が病魔に冒され、残された時間が僅かであったとしても、彼が私の代わりに死ぬなどということは、絶対にあってはならない。彼は彼自身が選んだ生を全うすべきだ。


    「クライデ、ありがとう。君のおかげでぼんやりとだが分かった気がするよ。君に触れたとき、何かとても……心に温かいものを感じたんだ。」
    「それならよかったです。僕はいつだって、あなたの力になりたいと思っています。だから……」
    「クライデ……?」
    「僕はあなたのことを、もっと知りたいんです。もっと深く、あなたの全てを……。」
    彼はまっすぐに私の瞳を見つめている。いつもの微笑みを湛えて。しかしその微笑みはどこか蠱惑的で、私は思わずどきりとした。
    「…………ぁ」
    彼の指先が私の頬に触れる。涙の跡はすでに乾いていたが、彼はそれをなぞるように頬を撫でた。
    「……綺麗。」
    「くっクライデ……いけない、それ以上は……っ!」
    「どうしてですか?」
    「っ……ぁ……」
    私は言葉に詰まった。
    どうして?
    どうして……。
    彼が私に向けている感情の正体が分からないから?
    それとも、このまま友人としての一線を踏み越えて、彼との関係が壊れてしまうことを恐れているから?
    私は一体、何を恐れている?
    知らない感情と向き合うことを、恐れているのか?
    だがそれは彼を拒む理由にはならない。
    私は彼に尋ねる。

    「……クライデ。君は、どうしたい?」
    「僕は―――」

    「僕は、あなたを愛しています。エーベンホルツ。
     僕はあなたの全てを受け入れたい。
     そして、あなたにも僕のことを知ってほしいんです。僕の全てを―――」




     ああ、なんて我儘な願いなのだろう。
     彼に僕の全てを受け入れてほしいなんて。
     それを口にしてしまったら、もう二度と、後戻りなどできないのに。
     分かっていたはずなのに、僕は―――。
     でも、これ以上、この気持ちに嘘をつくことはできないんです。
     ごめんなさい、エーベンホルツ。
     僕はもう、あなたの「友人」ではなくなってしまうかもしれません。
     あなたを「愛してしまった」僕を、どうか 赦して―――
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