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    サイザーくんとはぴはろな落書き

    サイザーくんとはぴはろサイザーくんとはぴはろ
    「ハッピーハロウィン!お菓子くれなきゃいたずらするぞ」
     ホグワーツ城のいたるところでそんな言葉とお菓子が飛び交う。朝から城中が美味しそうな匂いであふれ、普段朝に弱いエデですら自然と目が覚めてしまったし、みんな浮き足立ったそぶりで食堂に吸い込まれていった。今日は待ちに待ったハロウィーンだ。
     新入生もホグワーツに慣れ始めた時期、食堂に並ぶハロウィーンらしい食事と装飾、しかも今日は土曜日ときた!
     そうとくれば、皆が仮装を着込んで城中を闊歩するのは当然の流れといってもよかった。かくいうエデも看護師さんの仮装を決めてお友達とお菓子を強奪して回っている。
     みんな思い思いのお菓子を用意していたり、していなかったり。たまにとんでもないお菓子だけ仕込んできている子もいて、酷い目にあうのもハロウィンの醍醐味かもしれない。(それはそれとしてゲーゲートローチは今じゃないと思う!)
     そんな風に時折悪戯も楽しみながらホグワーツ城を練り歩いていると、流石に足が疲れてきて、ちょっと休憩しようかなんて空気になった。中庭に移ってベンチに腰掛けチョコレートの封を切ろうとしたところで、見知った顔が目に入る。立ち上がって大きく伸び上がりながら手を振れば、向こうもこちらに気づいてくれたようだった。ハロウィンに浮かれた人の間を縫ってこちらにやってくるのが見える。
    「サイザーくん!ハッピーハロウィン!」
    「ハッピーハロウィン、エデ」
     頭一個分くらい上を見上げながらお決まりの言葉を交わせば、背後のエイミーとシャロンから、おお、と湧き立つ声が聞こえてくる。
    「噂の"サイザーくん"だ」
    「強い人だ!」
     噂の、とサイザーが首を傾げるので、「たまにサイザーくんのことお話しするよ」と補足する。自分より強い人が好き、とシャロンが常々言っていることもあり、決闘が強い人については話が尽きない。エイミーはあまり決闘が好きではないが、シャロンとエデは大概決闘オタクなので、正確にはサイザーの(決闘の)話をする、が正しいかもしれない。そんな時、2人は決闘の戦略について盛り上がり、エイミーはすっかりパン屋さんの雑誌に意識を向けてしまうのがお決まりだった。
    「そうか。エデの友達も、ハッピーハロウィン」
    「ハッピーハロウィン」
     エイミーとシャロンと挨拶するサイザーをうきうきしながら見上げる。サイザーは甘いものが好きだ。決闘を何連戦もしてきたのだろう様子で、城の片隅で甘いものを食べているのをたまに見かける。この間はチョコレートバーを食べていたし、その前はクッキーを食べていた気がする。脳の栄養補給に良い、と言うけど、どうやら素直に甘いものが好きらしい。可愛い。
     だからきっと、日ごろそういうものを持ち歩いているのだと思う。今日は何か持ってるのかな。そんなことを考えていれば、心得たように目があった。boo! と、顔の横に手を掲げ、
    「トリックオアトリート!」
    「…そうだな、悪戯は困る」
     うんと一つ頷き、すっとローブに差し込まれた手が取り出したのは、なにやら無骨なチョコバーではない。細長いちょっとした小箱だ。オレンジと黒のリボンがついている。差し出していた手にそれが乗せられると、透明な上蓋から中身を見ることができた。思わずわあと弾んだ声がもれる。
    「かわいい! 猫とかぼちゃと……これコウモリかな? とんがり帽子もある!」
     色とりどりのアイシングクッキーが飛び込んできて、サイザーくん、こんな可愛いのも食べるんだ……!
     そんな思いが一瞬頭をよぎりかけて、はっ、と、オレンジが目を引くかぼちゃに視線が止まる。そういえば今朝もかぼちゃプリンを食べて来た。いつもはないかぼちゃプリン、ハロウィンならではの……。
    「サイザーくん、あの、これ、すごい」
     もしかして用意してくれたとか、と言外に問うと、特に表情を変えるでもなく、ああ、と。
    「エデなら来ると思ったからな」
     ……優しさが服を着て立ってるのかもしれない。
     あまりにも優しい言葉にエデが打ち震えている横で、シャロンが密かにわぉ…と声を漏らしたのが聞こえてくる。エデはこうしてサイザーを前にした時、表情から読み取れる感情こそ控えめで、何を考えているかわからない場面があったとして、それでもこんな、じんわりした優しさが身に染み入ってくる感じをよく知っている。
    「よく4人くらいでいるだろう。それでと思ったが、一つ多くなってしまった。仲良く食べてくれ」
    「そうする、みんなでわけるね! ありがとう!」
     じゃあサイザーくんも!どうぞ!と胸を張る。なにせ腕にかけたカゴには我ながら自信いっぱいのきらきらのトリートが入っているのだ。
    「パウンドケーキを焼いたの、ドライフルーツとクルミがいっぱい入ってるやつだよ」
    「そうか、美味しそうだ」
    「そう、自信作なの! あのね、ホグズミードに美味しいドライフルーツが売っててね、それをたっぷり使ったからすごく美味しいと思う! それにエイミーちゃんがね、パン作るのがとっても得意だから教えてもらって……」
     サイザーからのたまの相槌を挟みながらずっとおしゃべりが止まらないエデに、シャロンとエイミーが顔を見合わせる。エデ、エイミーがパン作りとお菓子作りは別、って言ったの忘れてる。
    「エデ、トリックオアトリートしてもらわなきゃ」
    「そうだった!」
     サイザーを見上げ、ふたたびどうぞと胸を張る。自信いっぱいに見上げてくる目を前に、サイザーはそうだな、と溢してからゆっくり口を開いた。
    「じゃあお言葉に甘えようか、……トリックオアトリート」
    「はい、どうぞ!」
    「エイミーからも」
    「うどんドーナツもどうぞ!」
     途端にわやわやと掲げられるかごに瞠目したのか、数度瞬きをしてから、「ありがとう」「いただこう」と丁寧に一つずつトリートを手に取っていった。パウンドケーキとパンとドーナツ(うどん?)、トリートの域を出ている気もするが、今のところ誰も言及してきていないので、紛れもなくトリートである。…エデの友達は胸焼けした顔をしていたけれど。
    「大事に食べさせてもらう」
    「わたしも!」
     えへへと浮き足立った声をもらすエデに、サイザーが僅かに眉を動かした。
     
    「……あまり食べすぎないようにな」
     
     明日きちんと胸焼けするエデを前に、流石の慧眼のサイザーだった。



    ―――――――――――――――
     
     自分で描いたハロウィン絵と解釈違いを起こした産物。イラストはサイザーくんの普段食べてそうなお菓子ほしいな…で描いたけど、やっぱり用意してくれそう感ある。

     サイザーくん優しくて善性の人で好き。彼の優しさはサイザーくんだからな…で享受できる下心なしの善意100パーセントでよ。クラールくんからだったら恐れ慄いちゃう贈り物もサイザーくんだったらサイザーくんだからな…………で納得できちゃう気がする。そして無自覚。罪深。
     「来るだろうな」と思った子みんなに用意してくれてるしみんなに優しさを振り撒いてくれてるし、みんな相手がサイザーくんだからなんの疑りも詮索もなしにそれを享受できるんだろうな。

     あとサイザーくんと一緒に書くエデはハムスターだと思っていて、ちいこい生き物がちょろちょろしてると思って書いてる。ちいこい生き物それ以上でもそれ以下でもないように気をつけるんだけどたまに熱が入って来てしまってeは爆散して死ぬ
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