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    ゆうひ

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    ゆうひ

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    R-18にするつもりだったけど思いつかなかったんで 供養
    カフカ同行クエまえにかいたやつです
    ぴくしぶに上げた話とちょっとリンクしている
    勝手に列車に三両目を作りました

    #刃丹

    所有印刃が星穹列車に乗ったのは、今から半月ほど前からになる。
    もちろん一緒に冒険をしに来たわけではなく一時的な乗車だが、散々彼に追いかけられ逃げ続けた経験のある丹恒は当然渋い顔をした。
    そんな丹恒に向かってカフカはゆるく笑い「ちょっと強めに“言い聞かせた”から大丈夫よ。ほら、おとなしいでしょう?」と手に持った銃のグリップでコンコンと刃の頭を軽く叩いてみせる。小突かれた当の本人はゆるりとカフカに視線を向けるだけで、何を言うでもなく緩慢な動作でカフカの腕を軽く払った。
    それを見た開拓者が「へぇ~」とかいってバット片手に刃の脇腹をつつこうとしたのを必死に三月と丹恒で羽交い締めにし、引き剥がした。肝が冷えるとはこの事かと思ったのを覚えている。
    丹恒はその後も抗議をするが最終的になし崩しで刃の滞在が決定してしまう。
    どうなることかと憂鬱になっていたのだが……蓋を開けてみれば半月の間、刃はとてもおとなしかった。

    ラウンジの座席に座っていたり、窓の外を見ていたり。それらの行動の全てには「ぼーっと」という言葉が付属するが、正直なんのためにカフカがこの星穹列車に刃を置いていったのか全く理解できない。
    そんな刃の様子に他の乗員も慣れ、開拓者に至っては一緒にトランプをする事もあるらしい。
    あまり器用に指先を動かせないらしくもっぱらルールもカードの扱いも簡単なものばかりだが、丹恒としてはあの男が言われるがままにカードを引いたり絵柄を揃えたりするさまを想像し、微妙な気持ちになった。
    開拓者曰く「思ったよりも普通。麻酔の効いてる野生の虎とかグリズリー」とのことだが、麻酔の効いていると付いてはいても野生の猛獣に例えられている時点で普通ではない。
    かく言う丹恒は、刃がこの列車に乗ってから殆どの時間を資料室に篭ってやり過ごしている。
    パム以外の戦闘力を持った他の仲間がラウンジにいると確実にわかっている時しかラウンジに顔を出さないので、今ではむしろ丹恒のほうが刃よりも珍しい存在になっていた。……いや、資料室に篭っているのは普段から変わらないのだが。

    そんなある日、丹恒はヴ、と小さく震えた音で目を覚ます。
    眠い目を擦りながら音の出処であるスマホを見てみると、開拓者が現在停泊しているヤリーロⅥでクラーラやジェパードなどの現地の仲間とともに氷像を作って遊んでいる画像が送られてきていた。
    『たのC~~~~~』という気の抜けたメッセージとともに、プーマンの氷像をバックに撮った集合写真。ヤリーロⅥの該当地域では今は昼間のようだ。……ところでこの氷像は本当に氷像なのだろうか?ジェパードの戦闘スキルで作った中身のあるものではないか?
    少し不安になりながらものんきそうな様子にくすりと笑ってしまい、一応『風邪は引くな』とメッセージを送る。
    すぐさま了解の意を示すパムの絵文字が返ってきて、丹恒は一つ息を吐いて起き上がった。

    寝直すような気分でもなく、折角起きたのだから開拓者が大量に拾って押し付けてくる読み物をアーカイブにまとめる作業でもしようかと丹恒は思う。まだ少しだけ残る眠気に、コーヒーを淹れようとラウンジに足を踏み入れた瞬間。
    ラウンジの座席で腕を組み、座っている刃が視界に入ってきた。

    う、と思わず後退りして周りを見るが、刃の他には誰も居ない。パムすらもだ。
    丹恒が寝ていたので当然ではあるのだが、この時間は皆寝ている。
    姫子の淹れるものよりもだいぶ『一般的』なコーヒーを淹れるためのコーヒーサーバーは、入り口に佇む丹恒から見て刃を通り越した先にある。
    どうすべきか手に持ってきたマグカップとコーヒーサーバーを交互に見て、丹恒がどうしようか迷っていると、ふと気づいた。
    刃は目を閉じていて、微動だにしていない。寝ているのかもしれない。丹恒が恐る恐る、刃をなるべく迂回するルートで通り越し、コーヒーサーバーにマグカップをセットする。……が、刃は目を開けなかった。
    今すぐに襲いかかってくる様子はなくホッとしたが、コーヒーサーバーを押すと駆動音がしてしまうためその音で起こしてしまうのではと不安になる。……とりあえず本当に寝ているのか確認を、と刃へと1歩近づいた時だった。

    唐突に、その紅い、独特の金混じりの虹彩を持つ瞳が開いた。
    丹恒は思わず息を飲んで硬直するが、刃は丹恒の姿を認め「なんだ」と気だるそうに問うただけだった。
    「……いや、用はない。寝ていたなら、起こして悪かった」
    起きてしまったのなら今更か、と踵を返してコーヒーサーバーのスイッチを押そうとした……が、ふと思う。
    「ここでいつも寝ているのか?お前に割り当てられた客室があったはずだ」
    ベッドと机、あとはシンプルな調度品という必要最低限の部屋だったが、たしかパムが一番最初に案内したはずだ。
    この列車は開拓者がなんやかやで人を連れてくるから頻度が高い者の部屋は固定で中身をそのままにしているが、刃に割り当てられた部屋は3両目の手前から……いくつ目だったかと思案して、思い当たる。
    「まさか、どこの部屋か忘れたのか?」
    「……」
    押し黙るところを見るに図星のようだ。
    忘れてからずっとここで眠っているのか?自分のように姫子がコーヒーを淹れに来たりパムが掃除していたり、こんな場所ではゆっくり寝られないだろうにと思う。
    ……別に、丹恒も鬼ではない。一刻も早くこの場を離れたいのは山々だが、いくら相手が刃であろうとこのまま放置してコーヒーを淹れてさようなら、ではあまりにも冷たい。

    「……ついてくるといい。部屋の場所を、もう一度案内する」



    案内した部屋のベッドは使われた形跡がまるでなく、初日からすでにラウンジで寝ていたことが発覚した。
    「パムに聞けば良かっただろう。一緒に遊べるほど打ち解けたのなら開拓者でもいい」
    丹恒が思わず小言のような事を零せば、刃は悪びれもせず返してくる。
    「不便を感じなかった」
    その言いぐさに更に言葉を重ねようと丹恒は口を開いたが、資料室に布団を持ち込んでそこで就寝している自分を思い出し、結局何も言わないまま口を閉じる。正直分が悪い。
    そのままじとりと刃を見るが、武人の男として恵まれた肉体だと丹恒は思う。
    充分な上背、薄い素材ではないだろうにその衣服は筋肉を浮かび上がらせ、その身体から繰り出される力強い一撃は相手を軽々と弾き飛ばす。実際に食らった丹恒からすれば受け身を取れず転がってしまうのを防ぐのは至難の業だ。
    断片的に飲月……丹楓の記憶を鱗淵境で垣間見た程度のものではあるが、この男は雲上の五騎士に数えられ活躍していた。その頃この男の髪は銀色で、もっと優しげに微笑む男だった。口数は今よりもずっと多く、その手のひらは優しく丹楓の頬を擽り、撫で、髪を梳きーー。
    余計な記憶に丹恒はあわてて脳内で蓋を締め、考えないようにする。

    ……ふと丹恒が視線を上げると、思っていたよりもずっと近くに刃の端正な顔があり、びくりと肩を震わせた。
    こうして見上げてみると、なるほど野生の猛獣かと思う。身の危険を感じて、本当に猛獣を目の前にしたときのように少しずつ後ろに下がれば、扉に背中が付いた。右手で開閉のスイッチを探るが、刃がその手のひらを重ねてくる。
    包帯が幾重にも巻かれた手で丹恒の右手を撫で、掴み、まじまじと目の前に持ってきて観察しているその様に、振り払うべきか迷ってしまった。
    その迷いがあったのを知ってか知らずか、刃が更にぐっと丹恒との距離を狭めてくる。
    丹恒の背中には閉じたままの扉があって逃げられず、刃と丹恒の隙間はわずか3cmといったところだろうか。
    流石に看過出来ない距離感に、丹恒が声を上げた。
    「っ……それ以上断りなく俺に何かするようなら、」
    「では請おう」
    丹恒の言葉の上から刃が低い声を重ねてくる。
    かつて恐ろしいと思った瞳でまっすぐに丹恒を見つめ、口を開く。
    「お前に触れたい」
    殺したい、ではなく。
    触れたいと請うその男に、丹恒は言葉を失ってしまった。
    殺すことしか知らなかった野生の獣が、慈しみを覚えようとしているかのような。
    丹恒がこれを断りこの部屋からすぐにでも逃げ出せば、事は簡単なのだろう。
    ……けれど、何故か丹恒はこくりと頷いてしまった。無意識とも言える。あるいは、何も興味がないと胡乱げに世界を見ていたその紅い瞳が、欲を持って此方を舐めるのに気づいたからかもしれない。
    この男に囚われた時、自分はどうなってしまうのだろうとゾクリとした感覚が丹恒の背筋を伝う。
    承諾した丹恒を見、刃は目をゆるく細める。口の端がつり上がり、吐息の混じるそれはおそらく笑みなのであろうが、その男は確かに猛獣のように、薄く開いたその口の中で赤い舌をひらめかせた。


    首筋を、舌が這っている。
    この行為自体よりも、男が吐息を洩らす度にひくりと怯えたように自分の肩が震える方が丹恒にとって酷く屈辱的だった。
    「あっ……ま、まて、そんなことまでは許してない……っ」
    明確に脱がそうとする意図を持って丹恒の服をまさぐり始めた大きな手のひらを、慌てて引きはがす。
    すると刃はさほど興味もなさそうに「そうか」と言うと、丹恒の顎を掴み、上から覆いかぶさるようなキスを仕掛けてきた。
    乱暴な手付きとその強引さから想像すらできないほどに口づけは優しく、刃の大きなぬるい舌は伺うように丹恒の口内へとゆっくり入り込んでくる。それは丹恒の舌を探り当てたかと思うと、絡みついてちゅくちゅくと水音を立てた。
    ……刃は元々、仙舟では殊俗の民と呼ばれる存在だ。
    本来であれば100年程しか生きられぬとされる仙舟の外の人間は、短命である代わりに非常に濃い密度で生き、双方の合意があれば生殖のために、もしくは愛のために唇を重ね、身体を重ねるという。
    持明族は不朽の龍の末裔であり、その絶対数が決まっている。
    生殖によって数を増やさない故に、このような行為への欲求は基本的には無いに等しい。
    男性型の持明族のそれは排泄器官としての意味以上を持たない。
    だから、今丹恒の股間に布越しに押し付けられている、反り返り硬くなった刃のその器官は完全なる未知だった。
    ……少なくとも、今の『丹恒』には。

    すぐそこに寝台があるのに、運ぶ手間すら惜しいとばかりに刃は部屋の入口で獣のように丹恒を貪り始める。
    その獣は燻る熱を隠しもせずギラついた視線で丹恒を射抜いたまま、濃厚な口づけを繰り返す。
    「んぅ、んっ……ん……」
    ぐ、ぐっと腰を突き上げてくる刃に揺さぶられる。不思議な事に、それを快楽であると理解する身体が甘く痺れていく。
    あまり良い種類ではない悦楽に溺れ始めているのが自分でもわかっているのに、何故か抗えない。
    抵抗するべきなのだろうが、徐々に霞んでくる頭はそれを拒み、口内を蹂躙する舌を愛おしく感じ始めていた。

    気づけば、はっ、はっ、と荒い息継ぎをしながらお互い夢中になって舌を吸っていた。
    じゅ、と一際大きく丹恒の舌を舐めしゃぶった刃がゆるりと身体を離すまで、刃の逞しい首筋に縋り自ら迎え入れるような姿勢をしていたのに気がつかなかった丹恒が頬を赤く染める。
    刃の手が再度丹恒の背中を撫で、背中から這わせた手のひらで臀部をさぐり、腰をつたう。その不埒な手が服の裾から中へと侵入し、肌を直にねっとりと撫で回しても、丹恒は制止しなかった。


    刃の手が、丹恒の服を取り払っていく。
    部屋の入口から点々と落ちている脱ぎ捨てられた靴や装備、上着。
    脚衣に至っては下着と一緒に一気に脱がされ、ついに一糸纏わぬ姿になった丹恒は少々乱暴に寝台へと放られる。
    間髪入れずずしりと刃がのしかかり、はぁ、と熱い吐息を耳に吹き込んできた。

    自分ばかりが脱がされていると気づくと、丹恒は刃の服の合わせを軽く引いた。その動作だけで何が言いたいのかわかったのだろう、刃がフッ、と吐息だけで笑う。
    「かなり見苦しいぞ」
    「……いい。見せろ」
    憮然とした態度で言うと、刃がしゅるりと服の合わせを解く。
    上着を脱ぎ去った肉体は、思った通り羨ましいほどの筋肉が張り、そして、……酷く傷だらけだった。

    仙舟人は、『在るべき状態』を基準としてある程度の怪我であれば傷痕すら残さず自動的に治って行く。
    けれど、そのルーツを仙舟に持たない殊俗の民である刃は。
    「…………」
    あちらこちらに巻かれている包帯を一つ一つ撫で、丹恒が最後に刃の心臓にあたるそこに巻かれた包帯に手を這わす。
    言葉を失っている丹恒に向かって、刃がぽつりと呟いた。
    「……お前のものだ」
    刃のその言葉に、弾かれたように丹恒が顔を上げる。
    「これは、お前のものだ」
    そう言いながら刃はゆっくりと顔を近づけ、甘えるように丹恒の肩口へと額を押し付けた。
    まるで懇願するようなその姿勢に、思わず抱きしめるよう背に手を回す。

    「お前のもの」とは、どちらなのだろう、と思う。

    ここを穿った傷は、お前だという恨み言か。
    ……それとも、この心の臓は、お前のものだ、という愛の告白か。


    どちらにしても、今の丹恒には『重すぎる』と思う。






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