皆既月食を見上げて「すげぇな、本当に欠けてる」
部活終わりに2人並んで歩く。
これはいつものこと。
今日は皆既月食とやらで疎らにだがすれ違う人は皆、夜空を見上げている。
いつもは天体に無関心な岩ちゃんですら、夢中になっている。
なんか悔しい。
「もう、学校出てからずーっと見てるじゃん。あんまり上向いてばっかりだと危ないよ?」
「おー…」
返事も適当。
悔しいより寂しいという感情が顔を覗かせる。
いつもは注意される側だが、なるほどいつも岩ちゃんはこんな気持ちなのだろうか。
だが、これはかえってチャンスなのかもしれない。
恋人になれたとはいえ、まだ友達の延長状態。
だったらこの状況を利用してやる。
「ほら、ここから道幅狭くなるから気をつけて?」
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