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    のあ(書庫)

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    のあ(書庫)

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    ちょぎ則♀?/後天性女体化/本丸、万屋特殊設定

    こぼれ話ふと吐いた小さい息さえも白く出てくる寒空の中、喫茶店に行く途中の万屋の商店街。刀剣男士や審神者、そして政府の職員が往来する中長義は思わず立ち止まった。
    キッチン用品を取り扱う店の前を通り何気なく向けた視線の先、店内入って直ぐの所に一文字則宗がいる。隔週金曜に見ているインバネスコートを着用した姿ではなく一文字揃いの赤と白の戦闘装束だが遠目でも分かる程に違う点がある。
    (女の則宗・・・)
    長義自身女性体を見るのは初めてでは無い。政府所属の時に見た文献でも演戦でもこの万屋街でも実際に何度かある。ただ一文字則宗という個体では初めてだ。
    太刀と言うわりには小柄でけれども体幹のしっかりした通常体よりも更に線が細く、菊の精だと言われれば信じてしまう人間が居そうな位に儚い。
    (付き添いが居ない?)
    2、3歩店先に近づき則宗の周囲を見ても彼女の主や同行している刀が見当たらない。帯刀無しのスマートフォンホルダーひとつだけの無防備な一振り。それが更に周囲の男共の好奇の視線を集めている。その内の一人が則宗の背後に近づいている事に気付く。
    確定報酬だが訳あって入手出来なかった審神者もいるだろう。現在入手不可のレアな個体で然も女性体。女体化のバグでの発生でも通常体と不便なく運営している本丸もある中で男性審神者が夜伽を強要する案件が後を絶たない。それは時の政府内でも同じで戦闘能力がないと勝手に判断され慰めものにされる可能性がある。
    「ちっ」
    万屋街帯刀するしないは個刃、審神者の自由だが基本抜刀は厳禁だ。長義も今は帯刀していないが本丸にある本体を一瞬で手元に呼び寄せる事は可能だ。勿論そこまでの騒ぎにするつもりはない。
    「こんにちは、則宗」
    則宗の右隣に男より早く則宗の視線に入る様に動き声を掛ければ
    「おぉ!山姥切の坊主」
    女性体の則宗が顔を上げ真珠色の瞳がこちらの姿を映しにこりと微笑んだ。愛嬌の良さはどの個体も然程変わらないがくるりと上がった睫毛に淡く色の付いた艶のある唇。何もしなくても刀は皆性差無く美しいがこの個体は薄く化粧している。女性体を謳歌し、恐らくは同じ本丸に同性の刀が数振り居るのだと推測出来た。
    長義の視界の隅の方で則宗に近づいていた男は気まずそうに離れて行った。
    「貴女、一振りなんですか?」
    「んにゃ、ツレと来てる」
    今はそちらの方に居るのかちらりと則宗は製菓コーナーと書かれた方をちらりと一瞥した。菓子作りをする男士と言えば小豆長光を連想するが彼(若しくは彼女)がこの則宗を一振りにするとは思えない。
    「不用心ですね、」
    長義が眉を顰めれば
    「なぁに大丈夫、直ぐ戻るだろ。それよりお前さん僕に似合うエプロンを見繕ってくれないか?」
    並べられたエプロンを前に則宗は首を傾げ見上げてきた。あざとい。普段からやっている仕草なのだろうか。
    「俺に訊きますか?」
    「ひとつの意見としてだ。ツレが好きなの選べって言うから」
    種類が多過ぎて選べないのかはたまた優柔不断なのか。加州清光は総じてお洒落好きなので同性でも異性であっても関係なく一緒に選びそうなのでツレはまた別な刀、或いは主なのだろう。
    「そうですね、貴女なら何でも似合うでしょうけど」
    華やかな顔だ。髪の色とは被らない方が良さそうだがシンプルな無地、柄物どちらでも似合いそうだ。
    「うんうん、お前さん優しいなぁ」
    「俺は誰にでも優しいけど?」
    喫茶店で会う則宗とは違った雰囲気というか何と言うか大分ふんわりしている。背後に花を飛ばし老獪だとか食えない老刃と言われるのには程遠い。寧ろ簡単に食われそうだとか庇護欲を駆り立てるのは女性体だからなのだろうか。
    どうしても比較が喫茶店で会う則宗になってしまう。
    然しツレとやらは何故このほわほわとした女性体の則宗放置しているのか一度注意してやらなくては。
    「あ、きた来た」
    「!?」
    先程則宗が示唆していた店の奥の方から現れたのは山姥切長義(同位体)だった。性差は関係なく同じく監査官を務めたからこの同位体が則宗の世話役をしているのか。それともたまたま則宗に連れ出されたのだろうか。
    「お前か則宗の世話役は」
    一瞬呆気に取られるが気を取り直しその同位体の天辺から足元までぐるりと見渡す。そんな事をしても練度がどれ位かは分からないが恐らくは自分と同じ上限だろう。
    「女性体のバグなんて珍しい、ましてや則宗はレア。何故一振りにさせているんだ?万屋街(此処)に来る人間が善人とは限らないんだよ」
    だからこうやって俺が見てやってさっきも不審な男が・・と言えば
    「はぁ?」
    と声を落とし睨んで来た。不審者はお前だと言わんばかりだが勿論怖くなどない。
    「まぁまぁ、僕の彼氏だ。何かあったら直ぐに飛んできてくれるさ」
    長義に肩をぶつけ、則宗がにこにこしながら言えば
    「「はぁっ!?」」
    と同士に合わせた様に声が出て周囲の視線が一斉に刺さる。さっき散らしたばかりなのにまた。否今そんな事はどうでもいい。
    (この則宗♀と同位体が恋仲??!)
    「流石同位体だな。驚き方が一緒だ」
    周囲の視線を気にせず
    「なぁどっちがいい?」
    こちらにも尋ねる様な言い方で則宗は持っていたエプロン2着を体に交互に当てた。
    「それ“元”に戻ってもちゃんと着るの?」
    「着るさ、僕は可愛いし♡」
    同位体も声を出しはしたが冗談などではない様でこちらでは理解出来ない親密な会話にくらりと眩暈を覚えた。それはどうみても家族(刀で言えば元主の縁や、同派に当て嵌まるだろう)や恋仲でないと許されない密接距離だ。然しこの二振り本丸でもこんな感じなのだろうか。
    「っ失礼する!」
    「お前二度と則宗を一振りにするなよ」
    一応これだけは言ってはおいた。
    (ああ、これから則宗に会うのにどんな顔をすればいいんだ!!)
    このもやもやをぶつける所もなく思わず足を強く踏み込みながら長義は二振りの元から立ち去った。



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