とっておきの気持ちを込めて「よかったのか、これで」
ノリノリで連れてきておいてなんだが、実際のところずっと落ち着かない。
「僕、ほんとうにお嫁さんになっちゃうんっすね」
「お前、えらく機嫌いいな」
故郷に帰ってきた日、父親に直接報告した。もともと事前に伝えていたので否はなく、はれてニキとの婚約が了承された。
「だって今までは、周りに認めてもらえないからって拒んでたところがあったけど、そういうのがなくなったらなんの壁もないっていうか、だからもう嬉しくて」
こちの衣装を身にまとい、ウキウキした感情を隠さないところがかわいいと思ってしまう。
「じゃあ、ちょっと話があるからここで待ってろ。お茶うけは好きに食べていいから」
「え、こんなにいっぱい僕一人で食べちゃっていいんっすか」
「いいぜ、ここは俺んちだし、お前んちにもなるから遠慮はいらない」
「僕んち、ここってそんなにフレンドリーなところなの」
だよなぁ、普通疑問に思うよな、なんたって弟があんな調子で追いかけてくるくらいだから。
「何があっても守ってやるから安心しろって」
「なんか燐音君かっこいい」
「んじゃ、行ってくる」
そう言って立ち上がろうとした瞬間、唇に当たる柔らかな感覚。
「つっ」
「行ってらっしゃいのキスっすよ。うちの両親はいつもしてたっす」
だからといって不意打ちは反則だろうが。
「後で覚えてろ」
「んぃー楽しみに待ってるっす」