Under the moon light【献花台】
事故や事件で死者の出た現場に置かれ、その死を悼む人々が花や供物を備えるための台。
降谷はある現場の献花台の前で、ぼんやりと供えられている品々を見た。色鮮やかな花束、同じ銘柄の煙草、いつも飲んでいた缶コーヒー、ウイスキーボトルはバーボン。
「なぁ……お前、本当に……今度こそ本当に死んだのか……?」
港湾沿いの倉庫街。もうじき陽が落ちようとしているそこに人気はなく、降谷の呟きはぽつりと宙に浮いたまま、誰に拾われることもない。ポケットから煙草を一箱取り出すと、置くところもないくらいにたくさんの供物が乗った献花台の端にこつんとそれを置いた。風に吹かれたら落ちてしまいそうだ、と少し奥へやってから、口許をシニカルに引き上げる。
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