仕事帰りの車の中で、サングラスを外した流れで顔を窓に向けると、開いた視界が一瞬にして、眩しい光に奪われてしまった。真っ白になって、だんだん茜色の水彩絵の具がじんわりと染まっていく。滲んだ所から様々な模様の輪郭が見えてきて、それらが過ぎ去る街並みのものだと分かる。光は元々の世界をボクに返してくれた。
いつの間にか日が長くなり、こんな時間に夕暮れなんて見れたんだと思う。
泣きたくなるようなあったかい色。
陸の髪色を思い出して、それから両親の顔が思い浮かぶ前に、姉鷺さんに明日のスケジュールの確認を意味もなくする。今週のスケジュールは全て頭に入っているのに、無駄なことに時間をかけてしまってはダメだと思う。
思うけれど、今の自分に陸を思い出すことが、どれだけ心を乱すことかと思えば、優先するべきことは変わってくる。
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