プラテネス指の先も折れ曲がった縮緬を、働き者の白魚だとあの人はとても真っ直ぐな笑顔で笑うので、閣下は本当に趣味が悪うございますと最後の最後まで言うことができなかった。
鯉登音之進という男は、見た目も頭も剣の腕もいい。性格はすこし癇癪持ちで激情型ではあったものの、上には息子の様に可愛がられ、下には兄の様に慕われていた。
そんなお人だから神様はきっと一つ瑕疵を与えたくなったのだろう。彼は年嵩の醜男を好んで食う悪食だった。
それも偏食で、鼻の低い坊主頭の顎髭しか食わない。当初はすぐに飽きると思っていたがいくつになっても変わらぬ偏食に、月島はいよいよ腹を括った。
表立っては言われなかったが、鯉登の内君が月島であることを周囲の人間は気づいていたのだろう。鯉登に何かのお願いをしたい時、人は決まって月島の元を訪ねた。
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