Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    _uni_tabeyo_

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 3

    _uni_tabeyo_

    ☆quiet follow

    勢いで書いたので誤字脱字変なところたくさんあると思います

    ⚠️大捏造
    ⚠️晶くんが帰った後の話
    ⚠️晶くん出てこない
    ⚠️新賢者が出てくる
    ⚠️スポ/カド/キャラエピのネタバレ

    #ブラ晶♂

    晶くんを思い出せないブラ晶♂ 髪の色や柔らかさ、目の大きさ、瞳の色、まつ毛の長さ、鼻の高さ、唇の厚さ、首の細さ、手の大きさ、指の長さ、鎖骨の溝、へその窪み、肌の色、撫でると鳥肌が立つ皮膚……。
    「クソ。ダメだなー」
    胡座を組み頬杖をついたブラッドリーは、ペンで地面を叩いて不規則なリズムを刻みながら独りごちた。目線の先にある日に焼けた羊皮紙には、かろうじてヒトだと分かるような絵が描かれている。しばらくそれを見つめた彼は、再び
    「ダメだなー」
    と呟き、ため息をついた。パーツごとにやれば惜しいところぐらいまではいけるかもしんねえと思ったんだがな。

    身体中にある無数の傷跡とは、もう数百年の付き合いだ。ブラッドリーはそれらを勲章と呼んではいるものの、常に気にかけているわけではない。しかし、上裸になったときに新入りの牢番が目を剥いたり、恩赦狙いの社会貢献中や賢者の魔法使いとしての任務中にしくじって新たな傷をこさえたときなど、ときどき意識が向くことはある。そのとき、決まって思い出す会話があるのだ。
    「脱いだらすげえぜ。見るか?」
    「そんなに傷跡が残るなんて、ちゃんと治療したんですか!?」
    声色は忘れたし、細かい言い回しまでは覚えてない。口調も違う気がする。しかしたしかに、このようなどこかズレた会話をいつかの賢者としたはずだった。

    またかよと若干うんざりしながら、それでも己が秘めているらしいその人物への執着に身を委ね、どんなだったっけかなーと退屈な牢獄生活の暇つぶしにぼんやりと輪郭を辿っては、思い出せないの結論に至るのが常だった。でも今回はふと、奴の額の丸みが脳を過ぎったのだ。目頭、鼻筋、小鼻……
    「おっ……?おお、おお」
    思わず感嘆を漏らしながら、不審がる門番を指先で手招き、「紙、紙」と描くものを用意させる。ひとつひとつの細かい部位ごとなら思い出せるような気がして、かすかな期待にブラッドリーの胸は高鳴った。

    その結果が冒頭の有り様である。完成したのは、人間というより魔獣と呼んだ方が相応しいような代物だ。
    「絵は上手い方なんだがなあ」
    と、ヒトモドキの横にフライドチキンを描きながら空に愚痴をこぼす。「これじゃ福笑いだな」そう思ってから、ますますやるせなくなる。
    「こういうことは覚えてんだもんなあ」
    福笑いは、その賢者から教わった遊びだった。

    何年か前に〈大いなる厄災〉と死闘を繰り広げたあと魔法舎での共同生活は幕を閉じ、幸い誰ひとり欠けることなく済んだ賢者の魔法使いたちは、今はそれぞれ暮らしている。ブラッドリーは牢獄での服役生活に戻った。今年は厄災の影響も最小限に留まったようで、賢者の魔法使いとしての任務も少ない。これからまた何十年、何百年もカビやらネズミやらとよろしくしなければならないと思うと、少しくらい〈大いなる厄災〉に暴れてほしくなる。双子が気まぐれに「差し入れじゃ!」と持ってくるネロのフライドチキンだけが救いだ。これにあいつの呑気な歌声があれば、もっと……
    「ブラッドリー!」
    「ブラッドリーや!」
    「今何か思い出せそうだったのに」
    「ブラッドリーもついにじじいかのう?」
    「耄碌かのう?」
    「だまれ。で、何だよ」
    檻に囲まれた沈黙をぶち破った双子が運んできたのは、珍しいことに賢者の魔法使いとしての任務だった。ブラッドリーは、久方ぶりに魔法舎を訪ねることとなった。

    魔法舎は、多少壁を這うツタが増えたもののほとんど変わりなかった。今代の賢者はここで生活しているし、おそらくよく訪れる魔法使いもたまに顔を出す魔法使いもそれなりにいるのだろう。人が住む建物特有の息吹を感じる。
    「こんにちは」
    ブラッドリーが脚にまとわりつく双子を蹴散らしながらエントランスに入るとすぐに声がかけられた。賢者だ。今代の賢者は利発そうなつり目と日焼けした肌が特徴的な女性だった。
    「二日間よろしくお願いします」
    律儀な挨拶に対し「おう」と眉を持ち上げただけのブラッドリーの雑な返答を意にも介さず、賢者は話を続けた。
    「ブラッドリーは叙任式で顔を合わせて以来ですよね」
    「だな」
    「ずっと会いたかったんです」
    ほぼ初対面の人物からあまり言われ慣れないセリフが飛び出し、一瞬返答に詰まる。
    「なんで」
    「ここで立ち話も何ですから、こちらにどうぞ」
    そう言う彼女に少し警戒しつつ着いていくと、たどり着いた先は賢者の部屋だった。

    数年前の賢者様と同じ国の出身なんです、と青い賢者の書を手にした彼女は言った。
    「今までの賢者様の持ち物があまりにも溜まっていたから片付けてて。そしたらこれが出てきたんです」
    ポケットから取り出されたのは、細いピンのようなものだった。
    「たぶん、ネクタイピン」
    ブラッドリーが受け取ると、持っていた賢者の書を開き、ここ、と、あるページを指し示した。
    「ここに、『ブラッドリーから星海珠を貰いました。とても高価なものだそうです。耳飾りでも指輪でも好きにしろと言ってくれたけれど、似合うか分からないし、迷ってしまいます。でもとても嬉しいです』って書いてあります。そして」
    ページをぱらぱらと捲り、再度ここ、と指を差す。
    「『ブラッドリーから貰った星海珠をどうするかずっと迷っていましたが、決めました!ネクタイピンにしようと思います。クロエも素敵だと言ってくれました。加工も手伝ってくれるそうです。耳飾りでも指輪でもなくてごめんなさい。でもきっと素敵なネクタイピンになります』って書いてある。だから、これを見つけたときにすぐ誰の何なのか分かったんです」
    賢者の書を閉じると、少し困ったように笑いながら彼女はこう言った。
    「この賢者様に渡すことはできないけれど、タンスの肥やしにするのは何となく嫌だし……。だから贈り主に返しちゃおうと思いまして」
    それじゃ、と賢者は部屋を出て行き一人残されたブラッドリーは、ベッドに腰掛けネクタイピンを眺めた。なんとなく、賢者はこうなるのを分かっていて星海珠をネクタイピンに加工したような気がした。

    翌日、双子とブラッドリーは時の洞窟にいた。なんでも、星屑糖に味を占めた魔獣が、それを集めていた人間から奪おうとそいつを襲ったところ、今度は人間に味を占めたとかなんとかで、とにかくここいらに現れる魔獣を倒すのが今回の任務だ。光る雪を眺めながら、前にもこんなことあったな、とブラッドリーは記憶を掘り返していた。たしか、賢者を囮にして魔法使いを捕らえたのだった。任務が終わったあとザルを抱えて星屑糖を集める賢者に、盗賊団の手下の面影を見た気がする。あの賢者は、どの賢者だったか。
    ふと、場が揺らぐ。魔法使いは長銃を顕現させモッズコートを翻した。北の国の魔獣らしく分厚い体毛で覆われた巨体に対峙し、不敵に笑う。
    「久しぶりにマナエリアに来れたってのに、瞑想どころか、おちおち思い出にも浸れねえ。いいぜ、せめて暴れさせてくれよ」
    静寂を切り裂き、銃声が木霊した。

    ブラッドリーの願いも虚しく、戦いは物足りないほどに呆気なく終わった。散らばったマナ石をくすねる気にもならない。ここ二日の感傷を振り払うことすらできず、鬱憤は溜まる一方だ。洞窟の壁に背を預け、行政とやり取りをしているスノウとホワイトを尻目に、ポケットからネクタイピンを取り出す。
    「てめえは誰なんだよ、まったくよ。ヒトモドキも、呑気な歌も、星屑糖も、どうせ全部てめえなんだろ」
    答えは返ってこない。磨かれた星海珠がきらめくだけだ。
    「ブラッドリー」
    「ブラッドリーや」
    「もう少しだけ洞窟にいてもよいぞ」
    「ご褒美じゃ」
    「そうじゃ。ご褒美じゃ」
    珍しく思い詰めた顔つきのブラッドリーを案じたのか否か、口々に優しい言葉を紡ぐ上目遣いのそっくりな顔を、ブラッドリーはゲテモノを見るかのように一瞥し、歩き去る。「感じ悪ーい!」のユニゾンを背に、洞窟の奥へと進んでいく。もっとも、約束さえなければ、あまりの薄気味悪さに今すぐとんずらしたい気分だったが。

    しばらく歩くと、奥まった場所に出た。糸のように降り注ぐ地上の光は大した明かりにはならず、寒くてしっとりとした薄暗闇が広がっており、ところどころで緑の点が瞬いている。イェストゥルムの住処なのだろう。目を閉じると、頭が冴えていくのがわかる。思い出がありすぎるのが欠点だが、マナエリアはマナエリアだ。
    コウモリが騒ぐと面倒なので、もっと離れたところで少し瞑想して戻ろうと、暗闇に背を向けた。その瞬間、イェストゥルムの羽音に混じって、かすかに声が聞こえてきた。

    「……リーが、そう上手くい……と、いじわるを言……れは、賭けてみ……」

    ブラッドリーは弾かれたように顔をあげ見返り、闇に目を凝らした。一歩、また一歩と近付く。それに比例するように羽音が増え、大きくなり、声も明瞭になっていく。

    「……ドリーが、そう上手くいくかと、いじわるを言……ど、俺は賭けてみます」
    「……年に……貴重な花を見にブラッドリーに連れてきてもらいました!綺麗でし……」
    「この前なんか、俺がつまみ食いの犯……ネロは俺だから……も怖かったです!ブラッドリー許しません!」
    「ブラ……賊のキャプテンになる夢を……好良かった……」
    「ピストレアージは……くて、ブラッドリーの圧勝に見え……れが出し抜きました!」
    「野菜を食べ……のに、子供みたいに拗ね……」

    幾重にも同じ声が重なり反響し聞き取りづらいが、何度もブラッドリーの名が呼ばれていることや、時折、くすくすという含み笑いが挟まるのが分かる。それに、

    「おい、俺様がいつ虐めたよ」
    「花摘んで帰るつもりだったのに、時の洞窟くんだりまで」
    「またそれかよ。野菜教が」

    間違えるはずがない。かすかにブラッドリー自身の声が聞こえる。まるで若い男に反応するかのように。これは、ブラッドリーと賢者のやりとりだ。ヒトモドキの声だ。

    「あ、これも話しておこう!ブラッドリーがつくった歌です。この世で揚げると一番〜」

    呑気な歌だ。そういえば俺だった。

    「星屑糖こんなに集まりました!ネロに何作ってもらおうかな」

    フード被せてやらなきゃ風邪ひいてたな。

    「ブラッドリーのソファベッド、広いのは良いけれど夏は大変なんです!革張りだから汗を吸い取ってくれなくて、朝にはビチョビチョなんです!」

    思わず笑ってしまう。顔も髪色も背格好も名前も思い出せない。声色だって、実際に聞いた今も「そうだ、こんな声だった」とはならない。でも、寝ぼけ眼でかきあげてやった、汗で張り付いた前髪と濡れた額の感覚だけが、指先によみがえる。
    「てめえだったのか」
    呆れたように笑いながら、ブラッドリーは満足そうに呟いた。

    「ブラッドリー」

    イェストゥルムの羽音が徐々におさまっていく。

    「もし俺がネクタイピン持って帰れなかったら、ブラッドリーが付けてください」

    緑色の瞬きも、羽音も止み、薄暗闇は再び静寂に包まれた。

    「あ!ブラッドリーちゃん」
    「逃げずに偉いのう!ブラッドリーちゃん」
    「その気色わりい呼び方やめろ」
    悠然と歩きながら洞窟を出てきたブラッドリーを、スノウとホワイトが迎える。
    「よし!気分転換も済んだし」
    「報告も済んでるし」
    「牢獄へ直帰じゃ!」
    「服役じゃ!」
    ブラッドリーは鼻で笑った。怒らせて遊ぼうという魂胆だろうが、あいにくそんな気分じゃない。
    「いいぜ。とっとと帰って臭い飯たらふく食わせろ」
    箒に跨り飛び上がるブラッドリーの胸元に、光るものを見つけて双子が慌てて追いかける。
    「ちょっとブラッドリーちゃん!」
    「それ来るときは付いてなかったじゃろ!」
    「盗んだのじゃな!」
    「悪い子じゃ!」
    しかしブラッドリーはどこ吹く風である。
    「ちげえよ。贈られたんだ。最上級の貢ぎ物さ」
    さらに空高く舞い上がる彼の胸には、星海珠が光っていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭🙏😭❤❤🙏😭😭🙏💖💘💘💘💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    _uni_tabeyo_

    DONE勢いで書いたので誤字脱字変なところたくさんあると思います

    ⚠️大捏造
    ⚠️晶くんが帰った後の話
    ⚠️晶くん出てこない
    ⚠️新賢者が出てくる
    ⚠️スポ/カド/キャラエピのネタバレ
    晶くんを思い出せないブラ晶♂ 髪の色や柔らかさ、目の大きさ、瞳の色、まつ毛の長さ、鼻の高さ、唇の厚さ、首の細さ、手の大きさ、指の長さ、鎖骨の溝、へその窪み、肌の色、撫でると鳥肌が立つ皮膚……。
    「クソ。ダメだなー」
    胡座を組み頬杖をついたブラッドリーは、ペンで地面を叩いて不規則なリズムを刻みながら独りごちた。目線の先にある日に焼けた羊皮紙には、かろうじてヒトだと分かるような絵が描かれている。しばらくそれを見つめた彼は、再び
    「ダメだなー」
    と呟き、ため息をついた。パーツごとにやれば惜しいところぐらいまではいけるかもしんねえと思ったんだがな。

    身体中にある無数の傷跡とは、もう数百年の付き合いだ。ブラッドリーはそれらを勲章と呼んではいるものの、常に気にかけているわけではない。しかし、上裸になったときに新入りの牢番が目を剥いたり、恩赦狙いの社会貢献中や賢者の魔法使いとしての任務中にしくじって新たな傷をこさえたときなど、ときどき意識が向くことはある。そのとき、決まって思い出す会話があるのだ。
    4868

    related works