愛想の無い顔、平坦な声。
骨ばった手で城の住民を丁重に棚へと移す。
素材の良いぬいぐるみたちや大ぶりなリボン。愛を注がれるための愚鈍そうな綿。
魂に似合わずともそこに違和感のない存在でなくてはならない。
お客様の信頼のため。
社訓もマニュアルも完璧に叩き込み、今日も城の一部となる。
何を思って自分をここへ配属したのか。いや、人員人材 それ以上の意味なんてないのだろう。
思考は度々そこを巡るが、別にどうだって良い。不満はないし、自分に出来ることも此処にたんまりとある。そうしたらそれを成すまでだ。
お客様の小さな手にそっとぬいぐるみが乗る。真剣に吟味される一体。手に取った。置いた。
また手に取った。また置いた。
形や縫製の仕上がりが良いもの、というだけではないのか。しばらく見つめて分析しているが、どうにか違いは判れどクリア規準が未だわからない。
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