狂い咲く花は風を乱吹く6「…」
甘い花の匂いを追いながら、ヴリコーダラは古い今にも崩れそうな廃墟に入る。
「鬼ごっこはもういいのか?」
「……」
スヨーダナはまだこちらを振り向かない。
「…スヨーダナ、我が花嫁。探していた。お前を。」
ヴリコーダラは背後からその小さな背中を抱きしめた。
「会いたかった、「お前」に」ーーーーー「ああ、「俺」もだ」
ガチャリ
鎖の金属音が廃墟に響く
緋く赫い炎がヴリコーダラとスヨーダナを包み込んだ
愛から生まれた憎しみ、その憎しみから生まれた焔
「ハ、熱烈なお誘いじゃねぇか、スヨーダナ…!」
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「マスター、わし様がシャクニ叔父の相手をしてる間に今すぐにあの馬鹿(ビーマ)を呼び戻せ。この際、令呪を使ってもいい!」
「…スヨーダナよぉ」
「!!」
ドゥリーヨダナの体が強張った
「一応、俺もサーヴァントなんだぜ?宝具の一つや二つ使えるんだぞ…その意味?賢いお前なら解るよな?」
シャクニは再び骰子を振った
「Shattaan ka pass naacho(踊れ悪魔の骰子)」
骰子を掴むと、その目を見せドゥリーヨダナの霊基に異常が生じた。
「う“!!」
「ヨダナ!」
藤丸立香は礼装の能力を使ってドゥリーヨダナに掻かれた異常の類を浄化した。その流れにシャクニはヒュゥと口笛を吹いた。
「へぇ、スヨーダナ、お前のマスターちゃんは優しいな?愛しい甥っ子に優しい子は本来なら味方身内確定なんだが。あーあ、本当に残念だよ」
男は再び骰子を振る。
すると今度はマスターの方に向かって何かが放たれた。
「マスター!!」
「う…あ…っ!」
ドゥリーヨダナは反応するが、手遅れだった。
何かが藤丸立香の体を縛り、拘束していた。
「シャクニ叔父…!」
「おっと、スヨーダナ。動くなよ?叔父さんだって愛しい甥っ子の大切なお友達に害をなすのは気が引ける。な?」
指をピンと動かせば、マスターを拘束する力が入り、メキメキという音がする。
やむも得ずにドゥリーヨダナは戦闘体勢を解いた。
「解ってんじゃねぇか。うんうん、やっぱりここは平和的にいこーじゃねぇか。未家族なんだし、なぁ?」
シャクニは再び骰子をふると、ドゥリーヨダナの視界が暗転した。