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    tokinoura488

    @tokinoura488

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    こちらではゼルダの伝説ブレスオブザワイルドのリンク×ゼルダ(リンゼル)小説を書いております。
    便宜上裏垢を使用しているので表はこちらです。→https://twitter.com/kukukuroroooo

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    tokinoura488

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    ふわストの続きです!
    リンゼル作品。単品でも読める……かもしれない

    事の顛末を知るは 時間は巻き戻る。ハイラル王が何も無かったと報告を受けたその前に――。

     ポトリと解いた紐が床に落ちた。その音で、ゼルダは我に返った。一気に頭のなかで言葉が弾けては消えていく。

     これをリンクが?
     いつも気が利きます。
     でも、これをリンクが?
     素敵なワンピースです。でも、下着……は。
     どうして、私の好きなデザインを知っているのです……か?
     いいえ、知るはずないです! だって見たことないですよね?
     どこかで見られてました?
     そ、そんな……まさか。

     ゼルダはリンクが買ってきてくれた服と下着をぎゅっと抱きしめた。
    「どうしましょう……私、きっと見られてしまったのです」
     猫になってしまった時、ロイヤルブルーのドレスはそばになかった。だから、消えてしまったとばかり思っていたけれど、気が動転して気づかなかっただけだったとしたら。ゼルダの顔からみるみる血の気が引いた。
     手を洗いに行ったリンクが戻ってきたらどんな顔をすればいいのかわからない。
    「まずはこんなに恥ずかしいものを男性に買いに行かせてしまったことを謝らなければ」
    「怒っていたのも無理はありません……。勝手にリンクの服を着ただけじゃなく、女性物の下着を買いに行かせてしまった……リンクは誠実な騎士なのに」
     無理矢理作った笑顔を浮かべ、必死に感情を抑え込もうとしてた。ゼルダの脳裏に先ほどの様子が浮かんだ。リンクは目を逸らし、いつもならしない乱暴な態度を取った。耳にテーブルに叩き付けられた拳の音が蘇る。思わず肩が震えた。

     猫のままならよかったのかしら。

     気持ちが沈んでくる。ぎゅっと抱きしめた服の山から、ストッキングが滑り落ちた。片膝をついて、そっと拾い上げたそれはとても美しい仕上がりだった。揃いのガーターベルトとショーツはレースが緻密で技巧が素晴らしい逸品。城下でもなかなか手に入らない上品なそれはきっと高価なものだろう。リンクのお財布にまで負担をかけてしまったとゼルダは唇を噛んだ。
     リンクはまだ戻らない。手を洗うのにそんなに時間が掛かるだろうか。少し疑問に思ったけれど、答えの出ていないゼルダにとっては都合がよかった。
     沈んでいる場合ではない。猫になっている間、さんざんリンクにやさしく尽くしてもらったのだ。きちんとそのお礼と謝罪をすべきだ。猫であった時のことを思うと胸がキュッと痛む。

     彼は好きになってはいけない人。もう猫ではないのだから、主君らしい振る舞いをしなければ。

     気持ちを奮い立たせ、抱きしめたままだった服をテーブルに広げた。
     やさしい草木色のワンピースは、きっとこの村の女性の身を包んでいるもの。素朴だけど温かみがあっていかにも普段使いというデザインに対し、白い真珠光沢を放つ下着はいかにも贅沢品に見えてしまう。
     また落ち込みかけた気持ちを振り払い、ゼルダはショーツを手に取った。
    「お借りした服をまずは返さなければいけませんよね」
     リンクが自分のためにと、買いに行ってくれた服だ。謝罪するにはそれらをきちんと身につけて、心を込めたい。純白の滑らかな生地の間につま先を入れる。するりと入っていくはずがちょっときつい。片方の紐を解いて調節してみるけれど、圧倒的に布の面積が小さかった。自分のサイズが規格外であることに多少のショックを受けながらも、ゼルダはショーツを履き終えた。布が食い込む感じがあって気になる。リンクがいつも戻ってくるやも知れず、ゼルダはストッキングにも足を通した。こちらは無事に太股の上辺りまで上がった。
     体を動かす度に借りた英傑服からリンクの香りが鼻先を掠める。それだけでドキドキしていちいち手が止まってしまった。ようやくガーターベルトを着ける段になって気づく。
    「……ど、どうやって後ろを止めましょう」
     締めてくれる侍女はいない。調査服や巫女服では野外での着替えなども考慮して着けていなかった。紐を結んでみたけれど緩い気がする。一度解いてまた締め直す。苦心していると、扉を叩く音がした。リンクだ。
     飛び上がった。その拍子に服を掛けていた椅子が倒れ、ゼルダはもたもたしていた自分を呪った。間に合わない。ゼルダは仕方なく、まくり上げていた英傑服をぎゅっと膝下まで引っ張った。

     ガタンと何か落ちる音がして、リンクは扉を開けるのを躊躇った。
    「まだ早かっただろうか……、いや、でも遅すぎるのも変だろ」
     止まない自問自答と性急な血の巡りを深呼吸でなんとか鎮める。ノックをして思い切って扉を開けた。
    「ごめんなさいっ!」
    「えっ」
     入った途端、姫が深々と頭を下げた。突然の謝罪に驚いた。慌てたリンクの目に、白い鎖骨とそこからつながる柔らかな曲線の始まりが飛び込んで来た。呻き声を飲み込み、ぐっと薄目にして自分も「こちらこそ、申し訳ありません」と頭を下げた。リンクの英傑服は姫の膝上を辛うじて隠している。けれど裸足だった姫の足はストッキングに包まれているのに気づき、リンクは色んな意味でホッと安堵した。
    「リンク、服を届けてくださって感謝します。でもこんなに高いものなど必要なかったのです……あ、いえ……そうではなくて、ごめんなさい……うまく、あの言えないのですけれど」
     ゼルダが謝罪とも言い訳ともつかない言葉を必死に紡ぎ出している間、リンクは顔を上げられずにいた。視線を上げれば、大きく開いた襟ぐりから白い肌が見えてしまうからだ。

     あれ?

     その必死に下げた視線の先で、さっきまできれいに姫のふくらはぎを包んでいた布地がたるんでいく。膝下を過ぎると一気に足首まで落ちた。
    「あ……」
     リンクが指摘するのを迷う前に、さすがに姫が先に気づき、しゃがみ込んだ。顔を真っ赤にして俯いてしまう。
    「実は……後ろの紐がうまく結べないのです」
    「そ……そうですか」
     リンクはできるだけ平静を装った。姫の言う紐がどこに使われ、どんな機能を有しているかなど、青少年には未知の世界でしかない。ゼルダにはそのそっけない言葉が、ゼルダ自身への呆れに聞こえていることなど気づきもせず、リンクの心中は嵐だった。ちっぽけな理性が煩悩の荒波に小舟のように揺らされている。消しても消しても、頭はストッキングをつなぐ紐の幻想を描きだしてしまう。
    「そうですよね……」
     やっと出したようなゼルダの声色は震えていた。きっと寒いのだ。さっきまで湯浴みしていたことをリンクは思い出した。このままでは風邪を引かせてしまう。しかし自分は姫付きの護衛だ。猫から人の姿へと戻った玉体に触れることなどできない。剣ダコのできた指先では繊細な肌を傷つけるやも知れない。
    「こんなこと……あなたに頼むべきではないとわかっています。でも……」
    「無理です」
    「そ……う、ですよね。私、何を言っているんでしょう」
    「……う」
     リンクは呻き声を堪えることができなかった。
    「ごめんなさい。こんなに素晴らしい品まで準備してもらったのに。私、満足に着替えることもできない……のですね。浅慮でした。リンクの迷惑も考えず、身勝手なことを。私ひとりでなんとかしてみますから、どうぞひとりにしてもらえますか」
     申し訳なさと恥辱に耐えかねて震える細い肩。しゃがみ込んでぺたりと床に触れた肌はきっと冷たいことだろう。暖かい毛布に包んでソファにお連れすべきだと、護衛騎士としての規矩準縄が声高に叫ぶ。けれど、そんな忠誠心とはうらはらに口は違う言葉を吐いた。
    「俺でよければ」
     パッと顔をあげた姫の潤んだ瞳がキラキラと輝いた。
    「よいのですか?」
    「よ、い……というか、その」
     ゴニョゴニョと口のなかで自戒の念を呟いては飲み込む。困っている主君を助けるのもまた、姫付きたる者の勤め。リンクは一度口に出した言葉を翻すことはできないと心を決めた。
    「はい。姫様の良きように致します」
     できるだけ感情を乗せないよう心がけ、了解の意を伝える。
     ゴクンと喉が鳴る。聞こえなかっただろうか。
    「床に座られては冷えてしまいます。どうかこちらへ」
     ソファを進めて、まずは座ってもらった。寒くないようにと膝に毛布を掛ける。これで少しは視界に入る玉肌の量を減らせるだろう。
     姫様が小さくお願いしますと言う。リンクも静かにうなずいた。
     二度目の喉が鳴った。ソファに斜めに座り、毛布を抱きしめて視線を窓辺へと向ける背中。赤く染まった耳と緊張で震える体。その恥ずかしげな居住まいだけで、リンクの指は思うように動かなくなる。

     素早く結んで終わらせる。

     心のなかで呟く声で沸き上がる煩悩をかき消し、リンクは服の裾を掴んだ。布地が引っ張られる感覚にびくりと細い腰が跳ねる。躊躇すれば意識していることを悟られてしまう。一気に捲り上げた。
     思わずウッと唸るところだった。露わになった白い背中は艶かしく、視線を下げれば布地に収まりきっていない果実が丸く弾けていた。まさしく凶器。リンクは下腹を抉られるような気持ちで一点だけに集中した。
     姫様の横腹の左右にリンクが買い求めた白いレースの端があった。両端をたぐり寄せ、姫の腰に合うように一本一本結んでいく。リンクの指が掠める度に、腰は恥ずかしげにビクつく。目の毒にもほどがある。指腹を滑る心地の良い柔肌の感触と混じりあえば、即死の猛毒だった。

     一点、一点だけ見ろ!

     模範足れの言葉で頭をいっぱいにして、絹で作られた紐を結んでいく。
    「少し締まります」
    「は……い」
     結び目の一点だけを見ながら、リンクはようやく最後の紐に取りかかった。ぐいと両端を強く引く。加減がわからない。姫様の唇から苦しげな吐息が漏れた。そのかすかに甘さの混じった声に皮膚が粟立つ。
    「すみません!」
    「いいのです、いつもこのくらいですから」
     そう言われても上手く力の調整ができない。最後の一本だというのに時間ばかりが掛かる。心配してか、姫様がわずかに後ろを向いた。腰のくびれが体の向きに合わせて陰影を作る。英傑服と体の隙間が大きくなった。
    「どうか前を」
     そう言った時、リンクの目に美しい器のような曲線が映った。何者にも隠されていない優美なそれは、リンクの手を止めさせた。頭のなかに忘れようと努めたはずの一糸まとわぬ姫様の姿が浮き上がった。
     慌てて目を閉じる。もたついてしまった自分を叱咤しながら、リンクは手探りで紐を結んだ。英傑服を引き下ろす。下ろした先にはまるい熟れた果実があった。裾から抜けた空気が姫様の甘い肌と汗の香りを鼻腔をくすぐる。
    「っ!」
     リンクは飛び上がった。
    「ごめんなさい……リンク」
    「いえ!」
     振り向いただろう主君と視線も合わさず一礼して、騎士は踵を返した。
    「身支度が整いましたらお声掛け下さい」
     宣言して扉を出る。閉じた扉に、リンクはずるずると背を預けたまま崩れ落ちた。あと少しでも一緒にいれば自分は何をしていたかわからない。騎士であることを忘れて獲物に飛びつく獣になるところだった。
     顔を両手で押さえ、ふらふらと水場に行った。頭を冷やす必要がある。迎えは明日。まだ苦行は続くのだ。

    「リンク?」
     ゼルダは扉の外にいるだろう自分の騎士に声をかけた。
    「入ってもよろしいですか」
    「もちろんです……ここはリンクの家ですよ」
     英傑服を腕にかけ、リンクが用意した服と靴を来て、ゼルダは身を縮めて立っていた。扉が開くとすぐに頭を下げた。
    「顔を上げて下さい!」
     リンクの声が慌てている。でもどうしても謝らなければならなかった。
    「ごめんなさい……私、自分でできたんですっ!」
    「え?」
     何のことを言われているのか分からないという声がして、ゼルダは唇を噛む。ようやく発した言葉は弱々しかった。
    「自分で……結べたんです」
     返答がない。折り曲げた体を起こし、英傑服をリンクに押しつけた。
    「気持ちが動転してしまって、リンクの手を借りなくとも自分で……その、ふ、服を着られたはずなんです。あんな……あんなこと――」
    「姫様!」
     リンクの声がゼルダの声を制した。
    「それ以上、おっしゃらないで下さい。必要な時に必要なことをした。それだけです」
    「でも――」
     ゼルダの押しつけた英傑服越しに、リンクの赤く染まった耳が見えた。
    「食事の用意をします。座っていて下さい」
     話題も変えられ、この話はもうすべきではないのだと悟った。

     彼を辱めてしまった……。

     自分はどこか常識から外れているかも知れない。そんな不安はいつもあった。城では常に世話係の手を借り、修行に出ても身の回りの世話はリンクやお付きの侍女がしてくれる。だから、騎士であるリンクに本来頼むべきではないことまでお願いしてしまった。
     一人で歩きたい、いろんなことを学びたい――そんなことよりもまず、自分一人で生きていける力を得なければならない。
     猫になって、ゼルダはその想いをより強くした。

     リンクの言葉に従って、食事が運ばれてくるのを待った。彼の作ってくれた食事はいつも美味しかった。
     食べ終わると、温かいハーブティーを煎れてもらって、ソファでくつろぐ。その間、リンクは少し離れた床に座っていた。まるでふたりの心の距離のようで、ゼルダは切なくなった。
    「リンクもソファに座って下さい」
     首は横に振られた。

     猫でいた方がよかった……のかもしれません。

     胸に浮かんだ気持ちにゼルダは一層、寂しさを抱いた。明日には城から姫としてのゼルダを迎えに来る。ここで過ごした時はとても大切で同時に、切ない記憶なりそうだ。
     猫だったからこそ近くにいられた。胸に抱かれて眠った夜の温かさ。一人で寝ることに慣れてしまっていたゼルダには、胸の高鳴りといっしょに訪れた幸せな時間だった。もう終わりなのだと思うと口数は自然と少なくなった。ゼルダが喋らなければ、リンクも不必要なことは話さない。シンと静まった部屋のなかで、カップの中で回すスプーンだけがお喋りみたいだ。
     やさしく抱き上げてくれた両手、髭についたミルクを拭ってくれた指先、木漏れ日みたいにやわらかな髪の匂い、肉球で触れた頬の感触。全部、胸に刻んで、夢の時間から旅立つ。
     こくんと最後のハーブティーを飲んだ。ゼルダが休まねば、リンクも就寝しない。今まで通りの主従関係がこれからも続いていく。ふっと閉じた瞼の裏に、ベッドで気持ちよさそうに眠るリンクの顔が浮かんだ。

     もう……一緒には眠れないんですよね。

     飲んだお茶で体は温まっているのに、心はとても寒い。ゼルダは両手を擦り合わせた。
    「あの……」
    「姫様」
     同時に口を開いていた。仕草でリンクがお先にと伝えてくる。
    「リンクはどこで寝るのですか?」
    「ソファで寝ます」
    「私、ソファで寝ます。どうか、リンクはベッドを使って下さい。長い間、私が占領してしまっていましたから」
     ゼルダの言葉に嘘はない。ほんのちょっとだけ寂しさが伝わって欲しいとの期待を込めた。
    「できません」
     想像通りの言葉にゼルダは微笑んで見せた。返答はわかっていた。素直に引き下がることが、傷つけてしまったリンクの騎士の矜持へのお詫びになるだろうか。
    「そうですよね。ごめ――」
    「一緒に寝ます」
     遮られた言葉の先に、ゼルダが予想もしていなかった言葉が聞こえた。
    「えっ」
     思わずカップを取り落とす。柔らかな無垢板の上に落ちた陶器は、縁が小さく欠けた。素早く、リンクが破片を片付けていく。ゼルダはソファから立ち上がったままだった。整理できない頭のなかでリンクの言葉が駆け巡っている。
     カチャカチャと台所から響く音。ふっと音が消えると、ゼルダの上にリンクの影がかかった。それが合図のようにストンとゼルダはソファに腰を落とした。スプリングがわずかに弾む。燭台を背にしたリンクの黒い輪郭。小麦色の髪だけが燭台の灯りに色を変える。
    「今夜が最後ですから」
     ゼルダはああ……と胸の中で呟いた。リンクのなかにも同じ想いがあったのだという嬉しさに、目尻がジンと熱くなる。涙が溢れてきそうでさり気なく二階へと続く階段を見上げた。
    「きゃっ」
     リンクの気配が近づいたかと思うとふわりと抱き上げられていた。いけません、どうしても、言えないままリンクはゼルダを二階へと運んでいく。寝るにはまだ早い時間。
     床板が軋む音。言葉はない。ゼルダは勇気を振り絞って、リンクの胸元に頭を預けた。寄り添えば伝わってくる彼の体温。聞こえてくるのは心臓の音。その速い鼓動に胸はまた熱くなって、涙が目頭にたまっていく。
     ぐっとリンクの腕に力が入った。大きな犬がすり寄るようにゼルダの頭にリンクの頬が触れた。
    「今夜だけはお許し下さい」
     弱々しい許しを請う声。涙が睫毛の堰を越えて溢れていく。
    「わたしっ」
    「何も言わないで下さい」
     言葉で再び制され、ゆっくりとベッドに横たえられた。
    「何も言わずに……ただ、許していただければ」
     階下のテーブルに置いた燭台のわずかな灯りに照らされたリンクの顔は、少し赤い気がした。彼はじっとゼルダの返事を待っていた。胸がドキドキする。なにかが始まる予感。
     ゼルダは一度期待を飲み込んで、それからゆっくりとうなずいた。
    「っ!」
     ぐっとリンクの拳が握り締められ、一歩距離が縮まった。ベッドが軋んで、二人分の重みを受け止めていく。ゼルダは慌てて窓側に移動する。体温とリンクの匂いがすぐそばに感じられる。
    「リンク……」
    「姫様……」
     狭いベッドに二人寝転んで、目を合わせた。じりじりと少しずつ距離は失われていき、ぴったりと寄り添って熱い吐息を零す。リンクの肩に額を触れ合わせると、手が伸びてきてゼルダの頬に添えられた。
    「おやすみなさい……姫様」
     わずかに顔は引き上げられ、それから額に温かいキスが落ちた。思わず出てしまった声にリンクが申し訳なさそうに眉を下げる。それがとてもかわいくて、ゼルダはその頬に口づけていた。
     ゆるゆると交わされるささやかなキス。輪郭までもが溶けていく夢のような時間のなかで、ゼルダはまだ夜着に着替えていなかったことをふっと思い出した。
     リンクが見立て、リンクが着せてくれた服を着て、いっしょのベッドに横になる。挨拶の範疇を出るか出ないかわからないキスをする。夜はまだ始まったばかり。
     リンクが大きくて熱い息を吐く。その息がゼルダの睫毛をやさしく揺らした。


     姫と騎士。
     事の顛末を知るはただふたり――。








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