Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    aman0itohaki

    TLに放流しにくいやつとか

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 36

    aman0itohaki

    ☆quiet follow

    人魚のカルナさんと、人魚を研究対象にしている言語実験に参加する大学生で海洋学を専攻しているアルジュナくんのジュナカルです。倫理観に自信のない人間が書いています。作者は文系なので科学に詳しくありません。

    リンガフランカ・マリンノート 朝一番の海洋研究施設はしんとして、塩水の濁った臭いが立ち込めている。人魚の言語能力計測という雲を掴むような実験に、半ば雑用係のような形で参加することになった。大学で海洋学のフィールドワークの単位が必要にも関わらず家の事情で遠くへ行けなくなったアルジュナに、教授が代替案として提示したのがこの研究への参加で。研究所の一番奥、彼は巨大水槽の向こうで悠々と泳ぐ人魚の真っ白い上半身の皮膚に、墨のような黒い鱗を持つ男の人魚に目を奪われた。彼は水槽の底で群れる同族たちとは離れていて、自然と気高く見えた。暗い底の方でちらつくカラフルな鱗は熱帯魚じみて、なるほど近代以前観賞用としての需要が高かったことをうかがわせる。といっても最近は保護団体の活動が盛んで、この研究の許可をとるのも大変な苦労があったらしいのだが。
    「カルナが気になるのかな」
     研究者のひとりはフランクに声をかけ、アルジュナが曖昧にええとかはいとか言うと、「彼みたいなのはなかなかいないからね」とさらりと頷く。これから人魚たちの体温測定と採血に行くのだろうに、機器を抱えて立ち止まった。
    「被験者の中では一番活動的な人魚だよ。最初に研究へ同意してくれたらしい」
     へぇ、そうなんですね。できるだけ不愛想にならないよう相槌を打つと、彼も暇ではないので立ち去ってくれた。ほっと密かに息を吐いて水槽を見上げる。きらきらと水面から光が差して、その中を泳ぐカルナという人魚は美しかった。
     人魚は歌う。その発声器官が人間の物と酷似しているあたりからしてアルジュナにとっては不気味だが、進化の妙と言う他ない。人間の言語はある程度理解可能。この辺りが実際に人魚とコミュケーションを取りながら漁をしていた地域で、漁師などは人魚との意思疎通で使用する特別な言語があると主張しているらしい。最も単純な名詞、動詞、形容詞があるのみで、とても言語とは呼べないというのが言語学者の見解だが。詳しくは知らない。そもそもこの研究への同意を、共通語彙を通じて取ったというのも。半ば強制的なものだっただろうことは水底の人魚たちの様子から察せられた。
    「いや」
     感傷? 首を横に振って雑念を振り払い、実験初日はほとんど見学状態だ。不甲斐なさをじんわり感じながら、事前に指示された通りに折り畳み式の机とパイプ椅子を組み立てる。まだ触らせてもらえない精密機器を後目に水槽の上へと繋がる階段へ向かった。一段と水のにおいが強くなる。
     今日の仕事は人魚への食事提供と、データをエクセルに打ち込む、スピーカーやマイクの整備などの雑用。船に揺られながら水質や生体をチェックする同級生たちに比べれば楽なのだろうが、アルジュナとしてはそちらの方がよかった。だって、なかなか旅なんてできないし。かつかつと階段を昇って水槽の上に行くと、カルナという人魚の影が透明な光に透けてちかちか光っていた。鱗のひとつひとつが瞬いているのが水越しにも見て取れて、それからざぱっといたずらに顔を上げた彼と目が合う。思わず硬直したアルジュナをカルナはじっと見つめ、それからまた水に潜った。ほっとしたのも束の間、彼は水槽の淵に手をつけて静かに淵へと上がる。思わず硬直するアルジュナに構わず、彼はじろじろとアルジュナを見上げた。ぽたぽたと鋭い輪郭に水滴が伝い、青い瞳をしているとばかりアルジュナは思った。不思議な虹彩だ。
    「カルナ」
     教授の声で彼はそちらの方を向き、何か一言二言声を交わしてまた水へと潜っていった。人魚との共通語彙がまだ耳慣れないアルジュナが意味を理解する前に教授は頷き、長靴のゴム底で確かめるように床をつま先で叩く。
    「君はカルナに気に入られたらしい」
    「ええ?」
     胡乱な声を上げるアルジュナに、彼は「よかったじゃないか」と笑う。
    「研究対象に気に入られるに越したことはない。きっとスムーズにいくはずだし、今日のカルナの健康チェック。やってみなさい」
     はぁ、と相槌を打つも思わず頬が引きつった。健康チェックとはつまり体温測定と採血で、彼の直腸に体温計を突っ込むということ。人間に近い彼らのデリケートな部分に触れるのをためらうアルジュナに「慣れだよ、慣れ」とおざなりに声をかけて彼は立ち去っていった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🇱🇴🇻🇪💕💕
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    aman0itohaki

    DONEかわいい下着を着けているのが☀さんにバレる⚡くんの現パロです
    秘密は服の下「それは何だ?」
     シャツ姿のアルジュナにカルナが尋ね、アルジュナの脳裏に「終わった」の四文字が浮かぶ。ベストを外した姿をカルナに見られた。それだけで終わる理由は単純。下にフリルのついたブラジャーとキャミソールを着けていて、それが透けているからだ。職場の換気扇の音がからからと虚しく、じっとりと粘ついた汗が首筋を通り過ぎていく。暑いから、人がいないから、これまで大丈夫だったから。そんな理由で服を脱いだ自分が、愚かで情けなくて恨めしい。心臓がどくどくと音を立てている。頬がかっと熱くなる。
     昔からかわいいものが好きだった。同時にそうと認識されるのが嫌だった。隙を見せてはいけないアルジュナは、かわいいランジェリーを身に着けることでそれを解決した。フリルのついた男物のピンクのブラジャー。揃いのショーツ。キャミソール。レースのついたそれを身に着ければ否応なく気分が上向く。誰にもバレてはいけないという危機感はあったが、そんなことよりかわいいものが優先だった。その結果、こうしてカルナに秘密がバレたのだが。なぜか高鳴る胸を押さえ、ぐう、と奥歯を噛み締める。
    1219

    recommended works