星光る 富永研太は泣きながら家を飛び出した。夜10時、小学生ならそろそろ寝る時間だった。
きっかけは通っている学習塾の総合テストの結果だった。極めて悪い成績、というわけではなかったが、苦手だった項目が前回と同じように点数が取れないままでいたのだ。ようやく病院から戻ってきた父親はそれを見て叱った。小学生とはいえ富永研太は年齢に似合わず聡い子供だったので「まあおやじが叱るのも当然だよな」と思っていたのだが、元より厳しい父親にあれこれと言われ、それで「そんなことじゃ医者になるなんて到底無理だぞ」と言われたときに少年の感情は激しく表出した。
「何だよ! なんだよ、医者になるのが無理なんて!」
「当然だ! これから中学に上がって高校、大学とずっと勉強が」
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