スターチス 九龍が遺跡探索中に死亡したという報告がきたのは「今度の仕事は長くなる」と言って出ていった背を見送って、まだ四日目の朝の事だった。
九龍の友人だという目の前の男の胸にはロゼッタの紋章が縫いつけられており、しかも一度九龍に見せて貰った写真の中にいた顔で、自分をたぶらかす為に現れた偽者なのではないかといぶかしむ微かな希望すら削いでいく。
こちらが聞いてもないのに勝手に九龍の最期を話し出す男の口を塞いでしまいたかったが、身体がどこかに行ってしまったかのように現実感がない。
手渡された遺品を機械的に受け取る。
ボロボロになった服の切れ端。
いつもしていた指輪が1つ。
そして、探索中常に開きっぱなしだったうるさい機械。
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