年の瀬も間近に迫った頃、今年はきちんと休みを取るから、とふしどで妻から告げられたとき、一体全体何が彼女に起こったのか、とナムリスは唖然として、「はァ?」と思わず素っ頓狂な声を上げた。
その夫の反応が意外だったのか、女は少々困ったように眉間に皺を寄せると、視線を曖昧に散らした。
「……私が休まないと皆が休めない、と部下に言われてな」
耳の痛い話だ、と女は冬用の厚手の掛けものを目元の辺りまで引っ張り上げて、気まずそうな表情を浮かべたその顔を半分覆い隠した。
あまりにも彼女らしいその理由に、声を立てて笑いそうになるのを男がどうにか堪えていると、「何だ。嬉しくないのか」と女がぼやくような声で言った。
「お前、私と一緒に居たいとかいつも言うではないか」
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