決して綺麗な手ではない、ゴツゴツした指が頬を触るたび、松山に背徳感が生まれる。
いいのか?この人とこんなことをして……。
無骨な鼻が鼻をかすめる。息と息が混じり合う距離。その時、賀茂の荒い鼻息が、松山の鼻筋にかかった。
「ぶはぁっ!」
「なっ…、笑うな!仕方ないだろうっ」
「すみません……っ、くっ……」
謝ってはみたものの、口元から小さな笑みが溢れて止まらない。
「ふっ……、ムードブチ壊しですね」
「そんなもん、俺に求めるな」
困り眉の賀茂がまいったな、と頭をかく。昼間の鬼監督の姿とは別人のような手際の悪さに、松山は胸を撫で下ろした。きっと、自分しか知らない、賀茂港。
その人の鎖骨にポン、と頭を寄せ、
「……安心する」
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