呉は肖の長い髪が好きだ。決して手入れの行き届いているとはいえないゴワついた髪質なのだが、一本一本が細いからだろうか、指を通すとスウッと皮膚を撫でる、肖の髪が好きだった。
「俺も伸ばそうかな」
腿の上に頭を乗せてくつろぐ肖の前髪をくすぐりながら呟く。手首をとられ、掌を唇から舌でひと舐めされる。くすぐったいけど気持ちが良く、呉は優しく微笑んだ。
「髪が垂れるとくすぐったいから……お前は短いままでいろよ」
「垂れる?」
「のっかってる時」
そうするのが、そうであるのを当たり前のように口にする肖の、子供みたいな真っ直ぐな目ほど説得力のあるものを呉は知らない。
「……そうだな」
愛おしい人の申し出を受け入れると、上から覗き込むようにその額にキスを落とした。