維静① 維盛転生寿永三年、冬。
一ノ谷の戦いを離れた後、維盛は京へ、静の住処へと向かった。
物陰から中の様子を伺うと、静が一心に祈りをささげている様子が見えた。やがて、仲間から源氏の入京を告げられ、義経の無事を知らされると顔をほころばせ、頬を染めた。
(九郎、九郎と!)
機会を得ながらも九郎を討ち損じた無念に囚われながら、こうして今、静の九郎への思いを目の当たりにしている。
(私が落ちぶれた以外、何も変わらぬ)
菓子を与えようが目をかけようが、維盛が何をしたところで九郎以上に静を浮き立たせるものはなかった。
一ノ谷で九郎は維盛の手を逃れ、京の静はこちらを振り向きなどしない。
(私にはおまえ以外に、心を動かされる存在などないというのに)
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