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    gorogoro_ohuton

    @gorogoro_ohuton

    オタクのたわごと

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    本アカからの再掲
    【狂聡】非通知なんて、ロクなもんじゃない

    【狂聡】非通知なんて、ロクなもんじゃない『聡実くんの紅、めっちゃよかったわぁ…喉、大丈夫? ガラガラやん。もうあんな高い声でぇへんやろ? しばらく無理したらアカンよ? でもなぁ、嬉しぃなぁ…もう二度と聡実くんのボーイソプラノきけへんやん? 最後の最後でオレのために歌ってくれて、生きててよかったなぁ思うたわ。ありがとうな、聡実くん。もういつ死んでも悔いないわぁ』
    おちゃらけてそう言った狂児の笑顔でいつもハッと目が覚め、そして、下着の中の違和感に朝からゲンナリする。無精はコントロールできないものとわかっていても、この世の終わりとしか思えない。
    早生まれには何の徳もない。子供の一年という時間はとても成長に差が出る。それこそ、幼稚園や小学校低学年くらいまではその差は歴然としていた。背の順で並べば1番前だし、1年分成長が遅いのだから運動も苦手。取っ組み合いの喧嘩をすれば、いつも怪我をするのは聡実だった。
    緩やかな坂を登るような成長は中3まで続き、それから一気に大人の階段を登っていった。聡実の身近の大人といえば、両親や学校の先生だった。そこの成田狂児という異分子が入り込んできた。十中八九、真っ当に生きてればヤクザなんて知り合いになることもないだろう。しかし、あの大雨の合唱コンクール日から、聡実の人生の歯車は狂い出した。
    狂児は、聡実が生きてきた人生の中で、知らない種類の〝大人〟だった。父が冠婚葬祭の時に着るスーツ以上に高そうなスーツをきて、いつもピカピカに磨かれた革靴を履き、なんか高そうな車に乗って、タバコ臭いのに、香水のいい匂いがした。中学生に歌を教えてなんて頭のおかしいことを言うしいつもヘラヘラしているのに、学校の先生とは違う知性を感じた。
    あんな〝大人〟を、聡実は知らない。ヤクザは怖い。でも、知りたい。成田狂児には、言葉に言い表せない魅力があった。若い頃は女性のヒモをしていたというだけあって、人を惹きつける何かがあった。それが何かなのか、聡実にはわからない。
    ヤクザがどんな仕事をしているかは知らないが、ニュースで報道されるような危ないことをしているのだろう。風俗店のバックにはヤクザがついてるとか、土建屋と癒着しているとか。いつか狂児や組員が逮捕されましたなんてニュースで報道されるかもしれない。聡実が知っている狂児は、大の甘党で、歌がちょっとだけ上手くて、癪に障るがかっこいいということ、そして、ヤクザということ。それ以外、狂児がどいうい人間かを聡実は知らない。知りたくもないのに、知りたいと思ってしまう。
    だから、困っているのだ。いつものように家の近くまで狂児に送り届けられ、頭を撫でながら狂児はしみじみと、聡実が歌った紅がどれだけよかったかを語った。嬉しくて、むず痒くて、恥ずかしくて、狂児の顔をまともみ見ることもできず、じゃかしぃ! なんて言って手を払い、挨拶もまともにせずに車を降りた。きっと、女もそんな感じで口説いているのだろう。ムカムカしながら家に帰り、いつもなら、おやすみとメッセージが届くのに、届かないことにも気づいていなかった。
    その日の夜、そんな狂児の夢をながら夢精していた。聡実くん、ありがとうと笑った狂児の慈愛に満ちた目が焼き付いてはなれない。精通を迎えた原因の一端が狂児にあるなんて考えたくもないが、夢精した日は決まっていつも狂児の夢を見た。
    カラオケ大会の日を堺に狂児からの連絡は途絶えたのに、何度も狂児の夢を見る。幻だったのかと思う程狂児の気配を感じなくなったのに、ふとした瞬間、メッセージが届いていないか見てしまう。ピコンとメッセージを受信した音に、期待してしまう自分に嫌気がさした。
    成田狂児という男が幻だったらどれだけ救われただろうに、ボロボロになった名刺が、成田狂児という人間が、この世にどこかに存在しているという事実を聡実につきつける。祭林組がどれだけ大きな組織かはわからないが、構成員が何か事件を起こしたり、事故に巻き込まれたりしたら報道されるだろう。まだ、狂児が死んだとか、逮捕されたというニュースはきかないので、この世のどこかで飄々と生きているかもしれない。
    聡実はどうにかベッドから起き上がり、着替えを済ます。汚れた下着はスーツケースの中の奥底に押し込んだ。気が進まないが、東京の家で洗えばいい。
    ふと、スマホがブーブーと着信を知らせる。基本的に友人との連絡手段はメッセージアプリで、滅多に電話なんてかかってこない、あってもフリーダイヤルの迷惑電話か間違い電話だし、基本的に知らない番号には出ないようにしている。あとでその番号をネットで調べると、大概は勧誘目的の電話番号として掲載されていた。
    画面を見ると、非通知と表示されている。非通知でかかってくる電話なんてロクなものではない。放っておいても問題はないだろうとスマホをデスクに置き、もう一度手に取る。なんだか、嫌な予感がした。この電話にでないと後悔するような気がする。
    恐る恐る、通話ボタンを押す。もしもしとも応答せず、スマホを耳に押し付けた。
    『あ、聡実くん、久しぶり。元気しとる?』
    ーーーー非通知なんて、ロクなもんじゃない。
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    gorogoro_ohuton

    MOURNINGモブ目線※捏造
    【狂聡】紳士服売り場の多部田くん
    【狂聡】紳士服売り場の多部田くんお客様のお出迎えために駐車場で待機して早10分。僕はソワソワと遅々として進まない腕時計を眺めていた。僕と一緒にお客様をお出迎えするのは、外商部チーフの茂田さんだ。茂田さんはここ阪京百貨店勤続20年のベテランで、物腰柔らかなな50間際の男性だ。すらっとした痩せ型の体でスーツをビシッと着こなし、営業トークもとても上手い。外商部で1番の売り上げを誇っている稼ぎ頭だ。
    不景気ということもあり、全国の百貨店に共通していえることだが、外商部はどちらかといえば縮小傾向にある。一昔前はお客様のご自宅にカタログや商品をお持ちした時代もあったときいているが、それは僕が生まれるよりも昔の話だ。もちろん、長年のお客様の中にはご自宅にお伺いし、商談を進めることもあるらしいが、そのようなお客様もほんの一握りだ。近年は、カタログをお送りしてからご自宅にお電話をし、こちらにお越しいただくことが多い。僕が働くスーツ売り場でも、茂田さんや外商部の方たちがお連れしたお客様を対応することがある。そのほとんどが僕のような新卒2年目のペーペーではなく、ベテランの先輩たちが対応していた。
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